第28話 4人目

ケムとファングは「戦場漁り」に来ていた。


戦場やダンジョンで武器やアイテムを拾ったら自分の物に出来る。


そのルールから案外行う者は多い。


まして相手が魔族であれば殺した相手の装備や武具がまるまる、捨て置きされる事もある。


凄く美味しいのだ。


通常なら、怖くて戦場には出れない。


しかし、魔物使いなら自分の従魔に見張りをさせて安全な所で戦が終わるのを待てばよい。


だからこそ恰好の金儲け手段でもある。


「流石に、聖なる武器はないな」


「だけど、ミスリルの剣があるぞ..まぁ折れているがミスリルだそこそこのお金になる」


「こっちは金貨だ..相手が魔族だから拾い放題だな」



「なんだ、この仮面の女は..」


「案外美人なのかもしれないな..見て見るか?」



「これは、うぇ..混ざり物だな」


「ああっ混ざり物だ、しかしどんな混ざり物ならこんな顔になるのか..とても醜いな」



「これはセイルのお土産に良いんじゃないか?」


「そうだな、拾った混ざり物は拾い主の物..セイルにやろう..最近世話になっているからな」



「ああ、此奴にとってもこんな顔じゃ行先も無いだろう、怪物王子の傍が一番幸せだ」



「騒がれても面倒だ、このまま寝かしておいて奴隷商で引き渡してやれば良いんじゃないか?」


「眠り草も捨てるほど捨ててある..それで良いんじゃないか」



「しかし、流石は魔族..死体は惨たらしいな」


「だがこのお宝が手に入るんだ辞められないな」


「戦場漁り」はいかに早く漁るかだ。


他の者に先を越されたら良い物は手に入らない。


更に遺体が腐敗してきたら疫病のの元になる。


そういう意味で彼らは慣れていた。



沢山のリュックに戦利品を詰めて従魔に運ばせ、ケムとファングは2週間掛けアルマンに帰ってきた。



拾ってきた女と戦利品をギルドに見せる。


そのまま、戦利品はギルドで1か月預ける。


これは絶対では無いがギルドに預ければ、遺族等が買い取り依頼をしてきた場合高く売れる可能性がある。


また、ゆくゆく自分の物にした後の所有権のありかがしっかりと証明できる。


「はい、こちらが預かり目録です..あと、その女性は..混ざり物ですから、連れてきてしまった以上は責任が発生します..奴隷にするにしても、しないにしても保護して貰う事になりますよ」


「そそ..そうですか」



(おい、もしセイルが引き取ってくれないと..まずいぞ)


(すぐに、セイル呼んでくる)





「混じり物が手に入ったぞ、セイル」



「本当ですか? 皆ちょっと行ってくる」


「ちょっとセイル待ちなさい」



「ごめん、お説教なら後で聞くから...ごめんね!」



「セイル殿..」


「セイルスワニーはお土産が欲しいわ」



「解った..」




俺はケムさんの後に付いていった。


冒険者ギルドに行くとファングが居た。


近くには奴隷商らしき男と顔に面をつけた女の子がいた。


「この子が..混ざり物ですか?」


「よかったな、ようやく約束が果たせそうだ、ただもう見つかる事は無いかも知れないな」


「ありがとう、ファング」


「良いんだ、俺たちには全く価値が無いものだからな..ただ、最初に言っておくがかなり酷いぞ..お前の所の仲間と比べても更に数段酷い」



そこまでの美人なのか..



仮面をずらして見た瞬間、体がぞくりとした。


凍てつくような美人と言うのか..最早人間ではない、幻想の世界の女神のようだ。


スワニーが人間的な女神なら..これは神世界の玉座に座る様な女神だ..神秘的そうとしか言えない。


この世界にこれ以上の美人は居ない..そう言われても信じてしまう。



「本当に良いのか?」


「買って貰えないと俺が困るんだ」


「直ぐに、ファングに金貨1枚払った」


「おい、約束は銀貨5枚だぞ、こんなには貰えない」


「良いんだ、余分な分はケムさんと酒でも飲んでくれ」



「お前、本当に醜い女が好きなんだな..お前位の美貌があれば綺麗な女だって離れていかないぞ」


「ファング..もし、僕が醜くなったら..五体満足で無くなったらどうだ..そういう女は傍にいてくれるか?」


「そりゃ解らないな」


「だろう?」


「この寂しんぼめ..まぁお前がどうなろうと俺やケム..エドガーさんだって友達のつもりだぜ」


「ありがとう」



「さぁ..とっと奴隷登録しちまいな」


「お願いします」


「奴隷紋に銀貨1枚..此処まで醜いと首輪が必要だから銀貨3枚、合計銀貨4枚になりますが宜しいですか?」


「はい、銀貨5枚払います..1枚はチップです」


「おおっ来たかいがありました..有難うございます」


店に居れば商品が売れるかも知れないのに出張してくれたんだこの位のチップは弾むべきだ。


ケムやファングだって彼女を連れ帰らなければ戦場漁りでリュック2つ多く持ち帰れた筈だ。


本当ならあんな物じゃ足りない筈だ..友情価格、そう言った所だろう。



奴隷紋が刻まれ、首輪が装着された


勿論、変な事はしないが、こんなに綺麗な子が自分の物になったかと思うと凄く嬉しい。


「ありがとうファングにケムさん..このお礼は何時か返すよ」


「気にするな、金貨1枚も貰ったんだ...貸し借り無しだ」


「こっちもな...それでまだ混じり物は探すのかい?」


「流石に5人パーティーになったから充分だよ..結構バランスも良いしね..二人も世話して貰って申し訳ない」


「良いんだぜ..しかし、本当に魔物使いになっちまったな」


「どういう事だ?」


「いや、混ざり物二人に、その醜い女二人..正にそうだろう..なぁケム」


「そうだな、俺のパーティー以上に凄い絵面だな」



(僕にはハーレムパーティーだ..とは言えないな)



「そうか? 俺には大切な仲間だ」



「そういう所が、魔物使いなんだ、俺の連れているウルフ系は渋いが、ケム何てオークやゴブリンだぜ」


「おい、ファング幾らお前でも許さんぞ」


「冗談だよケム、だけどほら、ケムにとっては従魔だからオークでもゴブリンでも大切なんだ..お前があの醜い奴らが大切なようにな」



「そうだな」


「そうだ、お前は魔物使いのジョブこそないが立派な魔物使いだ..俺が保証してやるよ」


「何だか、仲間みたいな気がして嬉しいな」


「そうか良かったな」



(魔物使いの仲間になれて嬉しいなんて奴はお前しか居ないけどな..大切そうに抱きやがってよ、ミスリルの装備一組捨てたかいがあったぜ)


(お前にとっては俺の従魔と一緒、そういうこったな)



「ありがとう」



こうして、僕に4人目の仲間が加わった。


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