第27話 【閑話】勇者達 旅の終わり

1万の魔王軍に包囲された勇者ルディウス達の状況は悲惨その物だった。




剣聖率いる騎士小隊30人には不死の軍団長スカルが率いる不死身の軍団総勢3000人余りが対峙した。


剣聖であれば通常の魔族の100人位はどうとでも成る。


だが、数は3000..幾ら優秀な騎士を抱えていても1人の英雄が居てもどうする事も出来ない。


「剣聖様..助けて、助けて..助けて下さい!」


「メルダ様、助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて」



「ふあっはははははは..剣聖と言えど、不死身の軍団の前では他愛も無い..ただのゴミの様だ」


剣聖は死に物狂いで剣を振るった。


「竜巻切り」


近くのスケルトンが10体吹き飛んだが..すぐに再生してしまう。



相性が悪すぎた..物理攻撃が主体の剣聖に不死身の軍団。


数が150位ならそれでも勝利を納められたかも知れない..相性が悪い上に、多勢に無勢..しかも地の利は無効にある。


「どうしろって言うんだよ..」


無数のスケルトンに組み付かれ、剣聖は錆びた剣で串刺しにされ..首を切り落とされた。


首を槍に刺し、高々とスカル達の雄たけびがこだました。






宮廷魔術師率いるヒーラー部隊30人は更に悲惨極みなかった。


剣聖達の守りが無くなった為に、そのまま軍団が押し寄せてきた。


聖なる呪文を駆使する彼女達は本来なら天敵の筈だった。


ただ、多勢に無勢..数で蹂躙されていった。


ただ、皮肉にも、剣聖たちが200も倒せなかった不死身の軍団相手に彼らは善戦した。


その結果、不死身の軍団は1500迄数を減らしていた。



「もはや、此処までの様ですね..せめて、一人でも多くの魔族を道連れに死ぬ事にしましょう..私が道は切り開きますから逃げれる者は逃げて下さい」


「魔術師長様..嫌です、我々も逃げたくありません」


「ならば、共にいきましょう..光臨.」


自己犠牲呪文..彼等はそれを使い..500の魔族を道連れに死んでいった。



「自己犠牲呪文、光臨ですか..私の不死身の軍団を相手に此処まで戦うとは....なかなかの者達ですね..死体は回収してアンテッド材料にしましょうか」







「最早、これまででしょう..勇者ルディウス、私達が切り開きますから、逃げて下さい」


「賢者ルビナス...」


「貴方が倒れたら..大変な事になりますよ! お辛いでしょうが..お逃げ下さい」


「解った..すまない」







「これでは俺たちが出る幕が無いじゃないな?」



「そうでもないぞ、あそこから勇者が逃げ出そうとしている」




「それでどちらが行く?」


「どうせ、マモン殿が行きたいのでしょう? 譲るとしよう」


「ほう、良い心がけだな」



戦闘狂が、譲らなければ気が済まないくせに..



しかし、よくやるよ、一対一で強者を葬るのが正しい等と..



そうだ、儂は余興でも楽しむとしよう。





「スカル、遊びをしないか?」


「ちょうど飽きてきた、聞こうじゃないか」




「おい、人間の賢者よ..」



「魔族が私になんの用があるんですか」




「あそこで勇者がマモンと戦う、もし勇者がマモンに勝つことが出来れば、お前たちの命を助けるとしよう」



「何か裏があるのだろう?」



「もしマモンが勝ったら、お前を貰う」



「慰み者にでもする気ですか」



「凌辱などはせん、お前は我らから見たら薄汚いメスにしか見えん...ただそこのスカルは改造が好きでな..お前を改造させろ..それだけだ」



「勇者は一対一なら誰にも負けません、その勝負、載りました」



「良し、成立だ...賢者とその仲間を囲んでおけ」


「約束は守るのでしょうね」



「ああ、魔族は約束はたがえぬ..安心するが良い」




「勇者よ..そういう事だ」


「約束は守ってもらうぞ」



「ああ、守るとも..俺に勝てたならな」



「二言は無いな」


「無い」




勇者ルディウスは疾風のように走り剣を振るった。


狙いはマモンの首だ。


ぶつかった瞬間激しい音がした..


ルディウスは、その衝撃に負け聖剣を落としてしまう。



「そんな物で儂は斬れぬ..ほらもう一度やってみろ」


マモンは聖剣を投げ返した。



「その余裕がお前の命取りだ..これが奥義、光の翼だ..」



凄まじい光が聖剣を輝かせる..龍種すら斬り裂く勇者の奥義がさく裂する..


だが、ガキッ..



「うわああああああああああああああっ」


聖剣はマモンを切り裂かなかった..聖剣は折れなかったが、その反動でルディウスの腕が折れた。


「悪いな、俺の体はミスリルよりも固い..切り裂いた者等はおらん..さぁ今度はこっちから行くぞ」


此処からは一方的だった。


ルディウスが腕で庇おうがお構いなしにマモンは殴りつける。


庇った方の腕が半分以上千切れ掛かった...かろうじて繋がっているだけ..もう手は動かないだろう。


「うがっっ」


「流石は勇者、遊びがいはある...だが両手が使えないなら次は何をするんだ? 勇者!」


「貴様...俺は勇者だ..」


「両手がないその状態でどう戦う?」


「もう無理だ..助けてくれ..二度とは戦わない..だから、だから辞めてくれ」


「それで、仲間はどうする」


それに答えず、ルディウスは後ろを向いて走り出した。



「お前は勇者にあらず」


そう言うと、マモンは走り出し、勇者の足を掴んだ、力任せに叩きつけられた勇者の体は叩き付けられるたびに肉片が飛び散った。



「賢者の女よ..勇者は負けて逃げだそうとした、我々の勝ちだ」



「一体、何をしようと言うのです」


「楽しい、改造の時間だ..」


「ふっ、そんな事される前に私は自害を選びます」



「そういうと思って、お前の仲間を残しておいたのだ..お前が自害を選ぶならこの5人も殺すとしよう」



「「「ふっふうううううー」」」


猿轡をされた魔導士が5人転がっていた。



「わかったわ..私がその改造を受け入れれば、5人は助けてくれるの..約束したわ」


「解れば良い」



スカルは、賢者ルビナスをこれでもかという程いじくりまわした。


「うぐっうぐぐっ..あああああっ」



「何を恨めしそうな顔をしておる、醜いお前の姿を魔族の様に美しい姿に変えてやろうというのだ有難く思え」



「おい、これは不味いだろう」


「此処は魔族でも無い..顔が崩れているぞ」


「いや大丈夫だ..これで」



「お前、これは..昔いた、北の大陸の魔女の顔を再現しようとしているのか?」



「そうだ、見た物は、その恐怖で心臓が凍り付き死んだというあれだ」



「出来るのか..魔王ですら、心臓が氷つき死ぬというあの容姿...再現など出来ぬであろうな」




「うううっうぐう」(何を言っているの?)



「勿論、出来ない..だがどれだけ近づけるか再現してみたかったのだ..流石にむやみやたらにはこの改造は出来ないからな」


「確かに、もし完成したら存在その物が恐怖だ」


「だろうが、此奴なら人間社会に送り込めば済むが..やはり再現は無理だな」


「ここまでしても..無理なのか..」




スカルはルビナスに仮面をつけて離した。


「おい、そこの5人..」


「「「「「はい」」」」」



「お前らは、証人として生かして置いた、そこの勇者の死体とこの賢者を持ち帰るが良い..そして逆らうとこうなると伝えるのだ」



「わわわ解りました」






魔族達が去り賢者1人と5人のヒーラーが残された。


賢者は改造の為かピクリとも動かない。



5人のヒーラーは考えた、国に戻っても、何だかの責任を取らされるに違いない。


だが、此処には、高級な装備が沢山落ちている。


それらを拾っていき、お金にすれば一財産稼げる


話し合いの末彼らは..賢者を放り出し、武器や装備を拾い集め逃亡する事に決めた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る