第26話 【閑話】今ここにある危機

勇者ルディウスが率いる100人の部隊は快進撃をしていた。


だが、未だに四天王には遭遇しておらず、強い魔族には当たっていない。


勢いづく勇者達、仮初の勝利は彼らの警戒心を解いていた。


その為、考えれば解る事に誰1人気が付かない。


何故、昔の勇者は1人だったのか?


人数が増えても4人だったのか?


その理由を考える者が一人も居なかった。




快進撃の触書はここアルマンにも来ていた。



「これは不味い事になるな..」


「セイル殿、どう見ても快進撃の事しか書いて無いが」


「まぁいいさ、僕たちには関係ない事だ、気にしても仕方ない」



「もう勇者は関係ないからね、行きましょうセイル」


「スワニーは美味しい物が食べれればどうでもいいわ」



そう、僕たちには関係ない、勇者が負けようがここアルマンまで魔王軍が来る可能性は低い。


実際に魔王を倒しても、魔族は生きているし、過去には何度も勇者が負けた事もあったが人間は滅んでいない。


精々が境界線が大きく動く、それだけだ。


勇者が倒されても、直ぐに新しい勇者が決まる。


ただ、その期間が絶望に染まるだけだ。


だが、これは僕たちや冒険者には関係ない。


農家や領主は「その土地から逃げられない」


だが、僕らは何処にでも行ける、魔族達が進行してきたら捨てて逃げれば良いだけだ。


今の僕は勇者じゃない..戦う理由などないのだから。


尤も、アルマンには来ない可能性が高い。


王都から離れているし、魔族領からの進行とは逆の地にある。


魔族が敵にしているのはこの国だけでは無い。


態々、王都を滅ぼした後に此処まで襲う意味は無い。


そんな事している時間があれば、他の国に向うだろう。



あくまで、僕の勘だが。



「さてと、今日はエルザもいる事だし、ミノタウルスを狩ってみようと思う」


「ミノ..スワニーも狩る、美味しそうだわ」


「私は、ヒールを覚えたから、早速使ってみるわ、魔力の底上げもしたいからね」


「ミノタウルスか腕がなるな、だがセイル殿? ゴブリン、オークといったら次はオーガが定番なのに外すんだ?」


「まぁオーガは集団戦闘があるから..ミノタウルスは多くても4匹位しか群れをつくらないからね」


本当は違う、ゴブリンやオークはオスのみ..だがオーガはメスもいる。


僕の目からは ゴブリン(ショタ) オーク(ぽっちゃりボーイ) オーガ(筋肉男) オーガメス(筋肉お姉さん)


に見える...筋肉お姉さんは殺すに忍びない。


だから逃げた。


ちなみにミノタウルスのメスは..胸の大きいお姉さんに見える可能性もあるが、余りメスは見かけないのでこっちにした。


そのうち、耐性をつけないと不味いのかも知れない。







その頃魔族は..


馬鹿な人間が来る..人数が解っていて、進行方向が解れば恐れるに足らず..


敵が100人で来るなら1000..いや1万の軍勢を率いれば良い。


「四天王、剛腕のマモン」


「御意」


「四天王 魔将軍ゾルバ」


「はっ」


「四天王 不死の軍団長スカル」


「はっ」



「三人には1万の軍勢を率いて勇者討伐を命じる」



勇者達は..いや国や世界が勘違いしていた。


勇者達の強みは「どこから来るか解らない」その事が強みだった。


どこから来るか解れば、幾らでも手を打つ方法はあるのだ。


100人での行軍等、中途半端な事はするべきでは無かった。


やるなら、軍を編成するべきだった...その甘い考えのつけは..命で支払う事になる。


その事にまだ誰1人気が付いていなかった。



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