第21話 見せしめのエルザ④ 購入と勘違い
今迄で最高のスピードで走った。
恐らくは前世で魔王と戦った時以上のスピードが出たと思う。
大通りの大きな奴隷商にやっと着いた。
「すみません..ハァハァぜぃぜぃ」
「どうされました、お客様?」
「エルザ、エルザは居ますか?」
「エルザ..おりますよ」
(馬鹿な奴がまた来たな..16歳処女の奴隷が銅貨2枚、その情報だけを友人に伝えて、笑いものにする..その手の被害者ですかね)
「だったら、すぐに見せて欲しい」
「最近は彼女を見世物感覚で見に来る人も多いです、だから銅貨2枚預からせて貰って良いですか?」
「それはどういう意味ですか?」
「これは彼女、もしくは他の奴隷を購入されるならお返しします..購入されない場合は見物料金です」
「解りました」
(どうせ見たって買わないんだ小遣い位稼いでも良いだろう)
「それではご案内いたします」
前に行った奴隷商と同じで高価な奴隷の前をわざと通っていく。
僕から見たら、まさにお化け屋敷、前世の魔王城の方がまだましだ。
こんな化け物に金貨8000万枚なんて払うのは..可笑しく...無いのか?
俺にとってここまでの化け物..絶世の美人なのだろう。
(いいなぁ..彼凄くカッコ良い)
(買ってくれないかな..買ってくれたら何でもする..いやしてあげたい)
(だけど、無理..お金なさそう..なんで私奴隷なの)
スワニーと違い部屋は真面だった。
ただ、一番奥でカーテンで仕切られていた。
これは見せない為だ..恐らく此処をお客に見せない為に手前側4つの檻も空けているのだろう。
「入ったらカーテンを閉めてくださいね」
「来ないんですか?」
「すみません、私は見たくないのです..今でも夢でうなされます」
「解りました」
さて、お客が来たのか。
今日のお客は何秒持つのかな..5秒か10秒か..
どうせ買わないだろうし、話もしないだろう..
「貴方がエルザさんですか?」
(嘘でしょう..なんでこのタイミングなの、可愛くてカッコよい、もっと前に会いたかった..騎士だった時に)
「私がエルザだ」
凄い、僕の目にはクルセイダーか戦天使、戦乙女にしか見えない。
しかも、胸が大きく、スワニーやユリアと違ってエロイ、ビキニアーマーとか着ていたら目が釘付けになる。
胸が大きく、お尻も大きい、それなのに下品さもない、その筈なのに下品でもある、そしてエロイ。
自分が何を考えているのか全く解らなくなる..正直、スワニーみたいに布団に入って来たら拒む自信がない。
(逃げ出さないが固まったか..終わりだな)
「エルザさんって元騎士だったりする」
「えっ、まぁジョブは姫騎士だが..」
「仕えるのは貴族じゃ無くて平民でも大丈夫かな」
「こんな私だ相手は選ばない」
(嘘だろう、普通に話してくれているぞ..しかもまるで仕官の面接みたいだ)
「それは僕でも大丈夫」
「充分だ」
(充分すぎる..いいのか..私は化け物だぞ)
「それで、もし僕がビキニアーマーを着て欲しいって言ったら着てくれる?」
「ビビ..ビキニアーマー..見たいのか? 昔ならいざ知らず、今の私は..ああっ見たいなら着てもいいぞ」
(冷やかしだな..戦力としてならともかく、今の私にそんな需要がある訳が無い)
「そう、いいなそれ」
「おい、冷やかしなんだろう..今の私は化け物だ、だが話してくれて嬉しかったよ..普通に話すなんて久しぶりなんだ..ありがとうな」
「決めた買うよ..その代わり、ちゃんと仕えてくれよ、あとビキニアーマーも宜しくな」
「えっ..えっ..」
「主人、エルザを貰う事にしたよ、銅貨2枚で良いんだよな?」
「あの、本当に買って頂けるのですか?」
「ああ、買うよ」
「なら、銅貨も要りませんよ..その代わり返す場合は引取り賃は金貨30枚です、それでも良いですか? 実質絶対に引き取らないそういう意味ですよ?」
「それは良いが、なんでそんな契約になるんだ」
簡単に言うとこうだった。
奴隷にも人権があり殺す事や捨てる事も出来ない。
まして自分は奴隷商、違反を犯せば免許を取り上げられる。
だれも買わない商品なのに、食事に糞尿の世話をしなければならない..
そして何より彼女が檻を一つ占有しているから、奴隷の展示できる枠が一つ減る。
しかも隔離する為に手前の檻も4つ空けていたから5つの損失。
そういう事だった。
「そういう事でございます」
「奴隷が無料なのは解ったが、他に費用は掛かるんだろう?」
「全部無料で結構、奴隷紋もです...その代わり返す場合は金貨30枚頂きます、しかも彼女は悪名が知れ渡っていますかうち以外は引き取りません」
「エルザは悪い事をしたのか?」
「いいえ、奴隷商の噂で最悪の商品と呼ばれているだけでございます」
「なら良い..決めた買う..じゃなくて頂きます..それで銀貨1枚払うから彼女にシャワーを使わせて貰えないか?奴隷服も欲しい」
「解りました、言い値の銀貨1枚で融通しましょう」
「ありがとう、さっきの銅貨2枚もチップとして置いていく」
「ありがとうございます」
奴隷紋を刻み込んで貰い、店を後にした。
流石は騎士、僕と並んでも背は同じ位ある。
顔を見つめると恥ずかしそうに眼を反らす。
その仕草が凄く可愛い..
さっきはビキニアーマーって言っていたが、買えなくも無いが思ったより高価だ。
とはいえ、彼女は装備が無いと戦えないので、中古の皮鎧と鉄の剣を買った。
お店の人が何か言いたげな顔で見ていた。
「ビキニアーマーは良かったのか?」
「見たいけど、また今度にするよ..お金に余裕が余りないから」
「そそそそうか..うん残念だ..」
「悪いな、そんな装備で」
「私はセイル殿の奴隷だ、気にする必要は無い」
まだ、お祭り騒ぎは終わって居ない。
飲食店も無料だ。
野良猫庵に立ち寄った。
スワニーとユリアが肉を食べていた。
この街なら二人が出歩いても問題無い。
本当に良い街だ。
「セイル、もうミノは売り切れだわ..所で誰?」
「セイル、もしかして仲間?」
「うん、エルザって言うんだ、元騎士だから前衛に丁度良いだろう?」
「そうね..はい」
「それ何?」
「あの、セイル、私は貴方が好きよ..だから何をしても文句言わない、だけど常識を考えなさい」
「それ、マスクだよね」
そうだ、僕にこんだけ綺麗に見えるんだ、だったら彼女は..
「ごめんユリア失念していた」
「解れば良いのよ? だけど、あんたよく我慢していたわね」
「いや、セイル殿に醜い私を連れまわしたい、そういう性癖があるのかと思ってな」
「そう、セイルはノーマルよね?」
「そうだよ..うん」
「いや、違うぞ、セイル殿は私にビキニアーマーを着せたいらしい..さっきは金子の問題で買わなかったが..惜しんでいられた」
「セイル、偶には幼馴染どうしでお話しようか?」
こうして僕に3人目の仲間が見つかった。
そして、その日の夜は眠らせて貰えなかった。
羨ましい? 違うよ..ユリアに説教されていたんだ朝まで。
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