第15話 取り返した??? 幼馴染 【グロ注意】

アルマンに着いた。



セイルは冒険者ギルドに所属している筈だ、だからギルドで聞けば解る筈だ。


だが、可笑しい普通は俺たちが来ると歓迎ムードだが、此処は何かが違う。


ギルドの受付で尋ねた。


「勇者様と聖女様ですか? どういったご用件でしょうか?」


「セイルという冒険者に逢いたい」


「セイルさんに? それはご依頼ですか?」


「いや違う」


「なら、もう良いじゃないですか? 放って置いてあげてくれませんか?」



「何だ、その口の利き方は」



「俺が代わるよ」



「何だお前は」





「俺はファング、セイルの友達だ、なぁ勇者さん、俺が話を聞くよ、だが皆んなが怒っているんだ、その聖女さんによ..理由位は聴きたいよな? こっちも言いたい事がある!」



ファングは勇者達の言い分を聞いた。




「まぁあんた達が根っからの悪人じゃない、それは解った、それじゃ今度はこっちの話を聞いてくれ!」



俺は説明してやった。


聖女に振られてセイルが人間を信じられなくなった事。


1人ボッチになったセイルが混ざり物を買って一緒に暮らして居る事。


そして怪物王子と呼ばれている事。



「丁度これから彼奴に会う約束をしている、だが、悪いが声を掛けずにそこから隠れて見てくれ..話はその後だ」



「解った」


「解ったわ」


2人が見た物は、化け物と仲良くしているセイルだった。


しかも、それだけじゃ無く、ファングとも楽しそうに話している姿だった。



(嘘だわ、あんなセイルの笑顔..見た事無いわ)


(化け物みたいな女に対して、優しくしているな..まるで恋人みたいだ)





「じゃぁなセイル」


「またな」








「もう出てきて良いぞ、あれが今のセイルだ、あんたに捨てられ人間が信じられなくなったと言っていたぞ」


「だからって化け物みたいな女と何で付き合うんだ」


「可笑しいわよ、セイルならもっと真面な女と付き合えるのに..」



「なぁ聖女さんよ..あんた恋人だと思っていたのか?」


「そうよ恋人だったわ!」


「セイルはそうは思っちゃいねーよ」


「嘘よ、嘘だわ」


「恋人以上だ..」


「えっ?」


「恋人以上だって言ったんだ!」


「それはどういう事なの?」


「セイルは小さい頃に両親を亡くした..だから、あんたを家族だと思っていたんだよ」


「それは恋人と違うの?」


「違う、彼奴にとってただ一人の家族だ、それこそ彼奴にとっての宝物、それがあんただった」


「そう..なんだ」



「だが、あんた、彼奴になにをした?」


「私は..」


「そっちの勇者に乗り換えたんだよな...」


「私は、そんなつもりは無かった、引き留めてくれれば」


「出来るかよ..勇者が相手で、自分を育ててくれたあんたの親も乗り気だ..別れて欲しいって言われりゃ..断れるわけ無いだろう」


「お父さんとお母さんが..そんな」



「なぁ、勇者さんに聖女さんよ...あんた達が奪っちまった物はよ..彼奴にとっての大切な家族だ、独りぼっちの男にとって命より大事な たった1人のな」



(なら、納得がいく..だからあそこ迄甘やかしていたんだ..此奴の為なら..何でもする、そこ迄だったんだな..)



「今直ぐ、セイルに会う..土下座でも何でもして許して貰うわ..」




「もう、遅いんだよ..彼奴はもう、あんたを見ていない..あのハーピーみたいな女スワニーが、彼奴の大切な家族だ」



「何で..何で..」


「俺も言ったよ..お前位器量があれば、幾らでも女にモテるだろうってな..実際に彼奴が好きな女はギルド内にも結構いたんだぜ」


「だったら、何でなの?」


「スワニーは絶対に裏切らない..何時も傍に居てくれるって嬉しそうに言っていたよ」


「そんな..」



「もう、遅いんだよ..正直俺はあんた達が大嫌いだった..だがな、思った程嫌な奴じゃ無かった..だから話した..これで納得したか? とっと帰ってくれ」



「いや、セイルに逢いたい」


「おい、やめろよ...話を聞いたろう」


「いやだ、いやだ、いやだ..セイルに会う」


「やめて置け、今の彼奴に俺たちは会わない方が良い..そんな事も解からないのか?」


(何処までデリカシーが無いんだよ..少しは人の気も考えてやれよ)






はぁ、声が聞こえてきているよ..ここで決着つけた方が良いよな..



「声がしているからみて見れば、勇者ルディウス様に聖女ユリア様じゃないですか?」


「セイル...お願いだから、一緒に行きましょう..ねっね、本当に悪かったから」




「何も解っていないんだね..残念だよ..」



「何が言いたいの..何だか声が冷たいよ!」


「それじゃ言わせて貰うけど、聖女になった以上は勇者以外を愛しちゃいけない..そんな事も解からないのか?」



「セイル、それは違う、俺はまだユリアに手を出していない..お前に返そうと...」


「ルディウス様..それは駄目だ、それじゃユリアに聞く、僕とルディウスが死に掛けていたらどっちを救う?」


「私は、今なら解る、セイルを救うわ」



(何言ってくれているんだユリア)


「見損なったよ..なぁ、ルディウスは世界を背負っているんだよ? 僕が死んでも世界は変わらない、ルディウスが死んだら大変な事になる、だから救うならルディウス..いやルディウス様だ..そんな事も解からないの?」


「いや、待てセイル、それは勇者という仕事に対する考えで愛とは違う..一緒に旅をして終われば元に戻る、それで良いんじゃないか? なぁ」



「ルディウス様まで...そんな考えだったの..良いかな? 聖女はこれから沢山の人を救うんだ、そして賢者も剣聖もね、そしてそれを率いるのは貴方だ..命より大事にしろとは言わないよ..だけど、その3人は世界中の誰よりも大切にしないといけない、これからお互いに自分の命を預ける相手なんだよ? 違うかな」



「そんな事は解っている、だが」



「解ってない..僕にとっては大切な家族だった..そう言っただろう?」


「ああ」


「その時、何て言ったか思い出して下さい」


「任せろって言ったな」


「その言葉の意味を考えて下さい..あの時僕はユリアへの気持ちを捨てたんだ」



「じゃぁ、どうすれば良かったの..どうすればセイルは、私の傍に居てくれたのよ」


「勇者が来る前に僕と駆け落ちする、それしか無かったな」


「それなら..」


「だけど無理、もしユリアがそれを言い出しても僕が断ったから」


「それじゃ、どうしたって無理じゃない..」




「今なら手はあるよ、ルディウスを殺せば良い」



「お前、何を言い出すんだ..可笑しいぞ、その話は捨て置けない」


「出来ないよ..そんな事...私」


「だったら、僕に、ルディウスを殺せって言うだけでも良いよ」


「言えない..」



「意地悪をしてすまなかった、それで良いんだよ、君は聖女だ勇者と一緒に居なくちゃいけない」



「おい、今の話しに何の意味があるんだ、俺を殺すなんて幾らなんでも可笑しすぎるぞ、流石に捨て置けない」



「ユリアにはその覚悟が必要だって教えたかった..謝ります」


「どういう事だ」



「簡単ですよ..もし今僕を選ぶならその方法しかないからです」


「解る様に説明してくれ」



「勇者相手に聖女は勝てません、だから戦えば死にます」


「そうだな」


「そうすれば、僕は後を追って死にますから結ばれた事になるんじゃないでしょうか?」



「....」



「逆に僕が勇者を殺しに掛かれば確実に殺されます..その死体を抱きしめてユリアが死ねば僕はユリアの物です」



「いいかい、ユリア! 聖女が勇者でなく僕を選ぶという事は世界を敵に回す事なんだ、だってそうだろう? 魔王に対して切り札を失う、しかも、その後救えるかも知れない命を見捨てる、そういう事なんだから...死ぬしかないんだ...だけど、僕は君には生きて貰いたかった..これで良いかな」


「....それじゃ、聖女になった時点でもう無理、そういう事じゃない?」


「2回はチャンスはあったよ..勇者が来る前と、今だ」


「出来る訳ないよ..」


「そうだね、それが正しい..罰なら幾らでも受けますよ、ただ知って貰いたかった、聖女にとって勇者は誰よりも大切な人じゃなくちゃいけない、逆に勇者にとって聖女や賢者、剣聖は誰よりも大切な人じゃなくちゃいけないってね」


「そうだな」


「と言う訳で、今度こそ本当のお別れです..もし今度会う事があっても、勇者様と聖女様そう思います、幼馴染のユリアはもう居ない、そうやっと思えるようになったのですから」



「俺はまたお前の気持ちを傷つけたんだな..すまない」



「もう良いですよ、前にナイフも貰ったしね」



「セイル..私は、それでも」



「ユリア様、貴方は聖女です..もう二度とそれ以外の者としては見ません..お別れです」


「セイル..嫌だよ、いやだ」



「すみません..」



「おい、いい加減にしてくれ..セイルの気持ちも考えてやれよ..もう良い、ユリアは押さえて置く、行ってくれ」


「ありがとうルディウス」







「嫌だ、セイルと一緒に行く」


「それは辞めろよ...さっき聞いただろう」


「あそこ迄私が好きだったのよ..だったら私、聖女なんて辞めるわ」


「だから、それは無理なんだ..セイルが言っていただろう」


「嫌よ」




「いい加減にしないかな、セイルの気持ちを考えてくれないか...聖女さんよ覚悟が足りねーよ」


「覚悟ならある..」


「どんな覚悟があるんだ」


「セイルが私と一緒にいてくれるなら何でもするわ」



(はーっ さっきセイルがあそこ迄したのに..俺が引導渡してやる..そうしないとまだあと引きそうだな)



「本当だな? 此処に王硫酸という薬品毒がある」


「それがどうしたの?」


「これを顔に浴びれば、皮は溶け肉も焼けただれる、そして二目と見れない化け物みたいな顔になる」


「だから、それがどうしたのよ!」


「そんな化け物みたいな顔じゃ、聖女なんて勤まらない、確実に聖女辞められるぜ」


(どうせ、お嬢ちゃんには出来ないだろうな..これでもうセイルに付きまとう事は辞めるだろう)


「だったら貸して..」


「馬鹿..やめろ」


ユリアは瓶をひったくり顔から毒液を浴びた..



「嫌ぁぁぁぁぁっぁぁいやああああああああ熱い、熱い、熱いわー」



「直ぐにポーション振りかけて、教会からヒーラーを連れてきて..」



ユリアは気を失った。




「駄目だ、顔が肉ごと溶けているからもう治療しても無駄だ」


「それじゃもう..」


「聖女の力であろうが、エリクサイヤーでも治りません」


「なんて馬鹿な事を、これじゃまるで化け物じゃないか..ゾンビと同じだぞ」


「顔が完全に溶け落ちている、命が助かっただけで奇跡だ」



記録水晶で映像を王宮と法皇に送った。


話し合いの結果、聖女は襲われて死んだ者とする事に決まった。



ルディウスはその知らせを聴いてほっとした。


ユリアの姿は見るに堪えない程醜くなっていた。





ボロ布を着て、頭から麻袋を被った女がいた。


良く見ると目の所に穴が空いている。



「馬鹿な事をしたもんだ、聖女として華々しい人生が歩めたろうに..自ら捨てるなんて..目ざわりです何処にでも行くが良い..そんな顔じゃ思い人も相手なんかしないだろうに..」



聖女は辞められた..だけど、ゾンビすら顔をそむけたくなる顔..もう誰も私なんて見てくれない。


勢いで本当に馬鹿な事をしたわ...あははは..勢いって怖いわね..今の私はあの化け物以下ね。



もう死のう..それで良いわ..


だけど、死ぬ前に..もう一度セイルに会いたいよ..



私は、未練がましくセイルを探し見ていた。


これで良い..後は死ぬだけだわ。






あそこで袋を被った女がいる..多分ユリアだ。


ギルドで事件があったらしいが僕にはお茶を濁して教えてくれなかった。



しかし、何で袋何て被っているんだ..あんな物で誤魔化せる訳ないのに..服までボロにしたって解るよ。



いい加減にして欲しいな。



僕はユリアが目を離した隙に後ろに回り込んだ。



「いい加減にしてくれないか」


僕はユリアの被っている袋を引っ張りとった。



「嫌やあああああああああああっ、返して、返してよ..」



そこには、凄く美しい聖女のような美少女が居た。


「ユリア..なのか?」


「......そうよ...見られたくなかった..セイルにだけはこの顔を見られたくなかったのに..」


「何があったか教えてくれるかな?」


「良いわ..あの後の話を教えてあげるよ..」



ユリアはその後の事を事細かに説明した。



「そうか、そんな事があったんだ」


「それじゃ..さようなら..」


「行く所はあるのか」


「無いわ..化け物だもん..こんな顔で生きていけない..死にたい..ううん死ぬしかないよ」


「それは僕が傍に居ても?」


「同情はもっと辛いよ」


「前に話したよね..ユリアが僕を手にする方法..」


「それがどうかしたの?」


「僕は、死体になったユリアでも愛せる..そうともとれないかな..」


「えっ..」


「例え、どんな姿でもユリアなら愛せる..その顔でもね」


嘘だけどね..今の君は、凄く綺麗だよ


「本当に? 私化け物みたいだよ?」


「もう一人の家族も化け物みたいって言われるよ」


「そんな事言って知らないよ」


「僕の渾名知らないの? 怪物王子って言うんだ..だからお似合いだと思わない?」


「セイル..知らないよ? そんな事言ったらもう私セイルから離れないよ」


「良いよ」


「何だか凄く遠回りした気がする」


「そうだね」



こうしてユリアが仲間として加わった。


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