第14話 【閑話】 迷走勇者物語 こんな聖女要らない

俺の名前はルディウス、成人の儀式で勇者に選ばれた者だ。


この間、アイシアという村に聖女を迎えに行った。


聖女に選ばれたのはユリア、凄く可愛らしい女性...


ユリアにはセイルという名前の恋人がいた。


将来を誓い合っていたらしい..


だが、俺は勇者だ結局、ユリアは恋人より俺を選んだ。


そして、相手の男は惨めに俺からの決闘から逃げた。


見てて哀れんでしまう位に惨めだった。


流石の俺もこれ以上追い込むのは可哀想、そう思う位に。


涙ぐんでいる彼が可哀想だから、本来はあと2~3日位は居る予定だったが、決闘騒ぎの翌日には村をでた。



だが....



これからは俺の辛い日々の始まりだった。



勇者は聖女を迎えに行き王都にエスコートする、そういうルールがある。


王都では 賢者と剣聖が待っていて2人を伴い..王に会う。


王都迄の旅は今後の活動を考えて勇者と聖女の2人だけで旅をする。


ある意味、半分ご褒美的な旅の筈なんだが..



「ユリア、そろそろ飯を食って野営の準備をしようか?」



「そうですね、私も疲れました、お腹もすいてきたし、そろそろ食べて休みますか」



幾ら待っていても何かしようとしない。


何でだ?



「ルディウス..ご飯の準備しないんですか?」



「ああ、そうだな俺はまきでも拾ってくる..」


「はい、ついでにほろほろ鳥もお願いね!」


「ユリア、それはどういう意味だ!」


「お肉が食べたいからお願いしたのよ、何か可笑しいのかな?」



話を聞いたら、今迄火すら起こした事が無い事が解った。



「ユリアだって村で暮らしていたら野営位は経験があるだろう?」


「勿論、ありますよ」


「だったら、その時にユリアだって何か手伝っていたんじゃないのか?」


「全部、セイルがやってくれるから、座っていただけよ! 私が微笑むと直ぐに飛び出して全部してくれました」



マジか?


本当に何もする気がないらしい..


仕方ない、俺がするしか無いのか?


「まきを拾ってくる」


「はい、いってらっしゃい」



嘘だろう? 何も準備してない。


「お帰りなさいルディウス、ほろほろ鳥は獲れた?」


「そんな短時間で獲れる訳は無いだろう」


「そうなのかな、セイルは10分もあれば、鳥やウサギを狩ってきてたけど..」


俺はまきを置いて、鳥を捕まえに行った。


「遅かったわね、ルディウス..ほろほろ鳥は捕まった?」


「なに、それグレーバードじゃない? それ美味しくないのに」


「悪かったな」


しかし、まきはそのまま、火も起こしていない。


「本当に美味しくない..ほろほろ鳥が食べたかったのに、しかも味付けもしてない何て」



「街に着いたらご馳走するよ..」


「そう、それまで我慢しなくちゃいけないんだ..」


「.......」



まきを一人で拾ってきて、鳥を捕まえて..それなのにこれなのか?



「ところでルディウス..テントは張らないの?」


「テント? 普通は持ち歩かないだろう?」


「テントが無くちゃどうやって寝るのよ?毛布は?」


「無いが..」


「まさか、虫よけのお香も無い何て言わないよね?」


「無いが」


「それでどうやって野営するのよ」


詳しく話を聞いてみた。



「嘘だろう..野営の時、それ全部セイルがやっていたのか?」


「そうよ、いつも10分も掛からずやっていたから、大変な事だなんて思ってなかったんだけど」



なんだ、此奴、何も出来ないじゃん..


どこのお嬢様なんだよ..ただの村人の筈だろう?


貴族出身の騎士だってもう少し出来るぞ..



セイルって奴がそれだけ優秀って事か?


いや...違うな、セイルは此奴を愛していたんだろうな..だから此処まで尽くしていたんだろう。


僅か1日だが、此奴の底が見えた気がする。


「多分此奴はこれからの人生で何もやる気が無い」


つまり、此奴と付き合うという事は「奴隷の様になるしかない」


そして、そこまで尽くしても感謝はしない。


多分、セイルと比べて不平不満を言うに決まっている。


確かに顔は良いし、外面も良いが..ただ、それだけの女だ。


魔王と戦う為に必要だが「女」としては要らない。


返そう..


此奴を返してセイルに来て貰おう。


此処まで尽くした女を俺が取り上げたのに..彼奴は文句を言わなかった。


ユリアが魅力的に見えたのは全部セイルのせいだ。


それに俺は自分で言うのもなんだが性格が悪い。


だから、友人は居ない..だが、彼奴なら仲良くなれそうな気がする。


しかも、かなり優秀なポーターみたいじゃないか..






お前の大切な彼女を奪って悪かった..まだ手を出していない..お前の気持ちに打たれたから返そう。


ただ、俺たちは魔王を倒す旅をしなくちゃ行けない、一緒に来て貰えるか?




これで大丈夫だ..行ける筈だ。




彼奴は感謝して俺も困らない、よく考えれば確かに可愛いが俺は勇者だ此奴以上に綺麗な女が選び放題だ。


中身がこれなら..要らない..此奴返して優秀なポーターが手に入るなら、その方が絶対に良い。



「ポーターとしてセイルが必要だな一旦村に引き返そう」


「そうね、やっぱり旅にセイルは必要よ..うん一緒に連れて行こう」



喜んでいるな..あそこ迄尽くされていたんだ..これで良い。




直ぐに引き返した。




「セイルなら冒険者になるって旅立ちました」



「何処に行ったか解るか?」



「確か、アルマンに行くと言ってました」



「そうか、解った。ところでこの村で一番早い馬を買いたい、すぐに手配してくれ、あと手紙を送りたい」


「解りました」



こうして、俺たちは王都に向う前にアルマンへと行く事になった。




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