第9話 お返し (スワニーSIDE)
気が付くとここに居た。
生まれてすぐにここに居た。
私には価値がないらしい。
私は「商品にならないらしい」それがどいう意味かよく解らない。
だけど、「商品にならない」者は扱いが悪くなる、それだけは解った。
耳の長いメスは「商品の中でも一番価値があるらしい」だから、柔らかそうな寝床があって、美味しい物を食べている。
私の目は凄く良い。
私の耳も遠くの声まで聞こえる。
良く見ていると、私に近く成るほど「商品にならない」者の様な気がする。
実際に、隣の三人は他の人に比べると凄く「商品にならない」のだと思う。
「体が痛い」「体が痒い」いつもそう言っていたけど..それを幾ら言っても何もして貰えてない。
だけど、耳の長いメスが具合が悪くなると果物が貰えていたし、心配そうに見る人間もいた。
だけど、隣の三人より、私は更に扱いが酷い。
隣の三人にはボロキレがある。
寒い時はそれを被っているけど、私には無い。
だから、寒くてもそのまま我慢するしかない。
隣の三人にはパンとスープがあったけど..私はパンしかない。
だから、私が此処で一番「商品にならない」それだけは解った。
「他の商品は買われていく」だけど、私と三人はここに居るだけ。
偶に見に来る人は居た..三人には話しかけるけど..私には話しかけない。
ここに居たくない..どうすれば、「買って貰えるのだろうか?」
よく考えて見たら、私は喋れなかった。
話掛けられても話せない..どうせならと、耳の長い女の声を聴き話し方を覚えた。
これで、買ってくれる人が出るかもしれない。
だけど、私はおろか、その手前の三人まですらくるお客は少ない。
来なければ買って貰えない..だから声を出した。
「私を買って下さい!」
お店の人も来た人も驚いていた。
「なんだ..凄く綺麗な声だ..奴隷商さんも人が悪い、当たりの廃棄奴隷が入荷したなら教えて下さいよ」
(やった、これで買って貰えるかも知れない)
だが、私を見るなり「何でハーピーみたいな化け物がここに居るんだよ..」そのまま帰ってしまった。
「ただでさえ迷惑なのに、商売の邪魔するなんて」
そう言われ、鞭で叩かれた..その日から3日間、パンが貰えなかった。
三人の奴隷は私に慣れたのか話しかけて来るようになった。
私が売れない理由が解った。
私の外見が、人間で無く化け物だからだ..
確かに、他の人達と姿形が違う..
言われて見れば、他の者は何となく似ているが...私だけは全く違う。
お客が居ないときは自由に話が出来る。
だけど、私と3人はこの部屋から出る事は許されない。
だから、4人で話す事しか出来ない。
私と違って3人は外で生活していた事があるそうだ。
羨ましい...私は此処から出た事が無い。
外には楽しい物が沢山ある。
見て見たい..
「私は、病気持ちだから、多分買い手がつかないね..」
悲しそうに、女性は笑っていた。
「僕らも手足が不自由だから無理だな、せめて農民じゃなくて「冒険者」だったら買い手が..考えても無駄だな」
「君はまだ、買い手がつくかもな! 見世物小屋とかの人が買う可能性がある」
「見世物ってなに?」
「皆んなから笑いものにされて馬鹿にされてお金を貰う仕事さ」
「そんな生活したくないわ」
「だけど、それでも此処よりは幸せになれるよ」
「そうなんだ..」
「後は、君は多分鳥のモンスターみたいに見えるから、冒険者が囮役として買うかもな」
「囮?」
「まぁ碌な仕事では無いよ! だけど、此処に居るよりはまだましさ」
「そう、そう、太陽の下で生活出来る」
「暖かい布団で眠れる」
「そうよね..ただそれだけでも、幸せだわね」
「本当に此処は地獄だから..ね」
偶に、此処までくる人が居たが私を見ると怖がったり、不機嫌な顔になるので、更に奥の物置き見たいな部屋に移された。
三人と一緒に居た時は、偶にドアが開くとお店の中が見える。
そこから、見る景色が唯一の楽しみだったから..凄く残念だわ。
私の楽しみは、三人と壁越しに話す事だけになった。
ただでさえ、此処までお客は来ないのに..これじゃ絶対に買って貰えないじゃない。
私の所にはお客は殆ど来なくなった..
偶に来ても、馬鹿にして帰っていく..
既に自分が「見世物」になっている事に気が付いた。
買う気なんて皆んな無い。
ただ、化け物の私を見て..馬鹿にするなり、蔑むなりして楽しんでいるだけ..
三人を見た男だろうか 「これはハズレだな..」という声が聞こえてきた。
三人がハズレなら、私の所には来ないだろう。
「混ざり物でも良いんだが体の丈夫な者は居ないのか?」
混ざり物? 私の事だ。
「混ざり物..かなり勉強されていますね..昔はともかく、最近は生まれた時点で処分する事が多いのでまず出ません、ですが今は1人だけいます」
「居るのなら見せて欲しい」
来る、来る、私を見に来る。
色々話が聴こえてくるが..うん、見に来てくれる事が決まったようだ。
「解りました..本当に覚悟をして下さいね..殆どハーピーにしか見えません」
ドアが開いた..
駄目だわ、固まっている..しかも全身舐めまわすように見ているわ。
この人は私を買う事は無いだろう。
期待したのに..裏切られてばかりだわ..
「貴方もどうせ、見世物代わりに見に来たのね..どう醜い私が見れて良かったわね..見たんだから帰れば?」
憎まれ口位叩きたくなるわ..後でムチで打たれるわね
あれっ 話し始めた。
「流石に、混じり物は安いんだろう?」
「本当に欲しいというなら無料でございます」
交渉しているわ..交渉していた人は1/3は買っていたような気がする。
「本当に無料なんですか?」
「はい、上等な奴隷を買い取る際ギルドに押し付けられて、正直、処分に困っておりました、ただ、奴隷紋を刻むのに銀貨1枚、彼女はどう見てもモンスターにしか見えないので奴隷の身分証明の首輪が必要です。それが銀貨3枚..銀貨4枚は掛かりますよ」
「だったら、買った!」
「だったら、買った!」 嘘、買ってくれるの?
「本当に? 返品は効きませんよ..それでもどうして返品したいという時は金貨5枚貰いますが、その条件ですが宜しいですか?」
「構わない」
「その条件も、しっかり証文に書きますよ..本当に良いのですね」
余計な事言わないで、気が変わったらどうするのよ!
「大丈夫です」
信じられない..
「ちょっと待って...本当に私を買ってくれるの?..嘘や冗談で無くて..」
「そのつもりだよ」
「そう、物好きね...」
なんで憎まれ口が出ちゃうのよ..耳の長いメスの言葉遣いのせいだわ..
奴隷紋は痛いし、首輪も嫌だけど..ようやく此処から出ていける。
三人の前を通った時、目でおめでとうと言ってくれた気がする。
生まれて初めて服を着た。
三人ですら着ていて、私だけが貰えなかった物だ。
話に聞いた、空は凄く綺麗だった。
お店という場所で彼が串焼きを4本買った。
お肉だ、羨ましい..奴隷だから私は多分食べれられない..いつかは食べれると良いな。
彼が二本..差し出してきた..えっ..
「それは..くれるの?」
「そう、君の分だ」
貰えると思わなかった。
「すいません、おばさん、彼女は僕の奴隷なんです..驚かせてすみません、彼女の服が欲しいのですが」
「そうかい、お客なら大歓迎だ、これなんかどうだい?」
「それじゃ、同じサイズで3枚下さい」
「あいよ、3枚で銀貨1枚だよ」
あの綺麗な服..私に買ってくれたの?
「さぁ、これで大丈夫だね、部屋に行こうか?」
「...本当に良いの?」
聞き返さずにはいられない...
自分が聞いていた話と違うわ。
「買ってくれてありがとうって言うべきかしら?」
何で、「ありがとう」って素直に言えないのよ..真似した耳長性悪女のせいかしら。
「それは気にする必要はないさ、僕がいっしょに過ごしたいから買った、それだけだよ」
「そう、本当に物好きね..こんな化け物を買う何て、それで貴方はどうしたいの?」
「どうしたいのって?」
「私みたいな化け物は、見世物位しか使い道が無いわよ?、もしくは何かの囮にでもするのかしら?」
それでも構わないわ..
だけど、気になる..これが「奴隷」では無い気がする、少なくとも聴いた話とは全く違う。
聴いてみた。
「私は奴隷なのよ..他の事はともかく、その身分についてだけは聞いたわ」
「ご主人様には逆らってはいけない、そう教わったわ!」
「それなのに、何で貴方は「命令」をしないの?」
そうしたら、
「そうだな、本当の意味で友達になって欲しいからかな?」
私には「友達」の意味が解らない。
だけど、絶対に「奴隷」よりは良い事だけは解る。
「さてと、そろそろ遅いから寝ようか」
彼が言い出した。
奴隷は床で寝る..そう教わったわ
床で寝ようとしたら..
「そこにベッドがあるから、使ってよ」
だって
「これは私が使ってよいの? これは「高い商品」しか使っちゃいけないと聴いたんだけど..私は「混ざり物」だから毛布も駄目って聴いたわ」
信じられないわ、ベットまで使って良いの?
「ああっ!言ったろう? 友達になりたいって」
「そう、大切にしてくれるのね...ありがとう..」
凄く大切にしてくれているわ、それだけは解る。
だから真剣に「友達」になろうと思う..
友達が何かは解らないけど。
まずは..そろそろ寝たわね..
私は自分のベッドから出てセイルのベッドの前に来た。
そして服を脱いでそのままセイルのベッドに入った。
これで良いのよね?
「一緒に寝てあげると男は喜ぶ」って言っていたわね。
「一緒に寝るなんて、好きな男相手じゃ無ければ出来ません!」
泣きながら、訴えてた女もいたわ。
凄く、大切にしてくれたから、一つ位はお返しくらいしなくちゃ..
(おやすみなさい..セイル)
私はそのままセイルと同じベッドで眠りについた。
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