第10話 楽しい日常

朝、目を覚ました。


えっ、僕は..えっ..何で..横にスワニーが居るんだ..しかも裸だ。


昨日の僕は確かにテンションが上がっていた。


寂しい気持ちが満たされる気がした..


やってしまったのか...あれっ、スワニーは裸だけど僕はしっかりと服を着ている。


これはやってない..大丈夫だよな。


うん。



「おはよう、セイル早いのね!」


見れば見るほど、綺麗で可愛い。


しかも、ハーピーの混ざり物だから、声も可愛い。


僕にとってはパーフェクト美少女だ。



「おはよう!スワニー..何があったのかな?」



「私、セイルに凄く大切にして貰っているのがわかるわ..だから少し位お返しがしたかったの!」


そういう事か? 幾ら美少女でも、本当の年齢は1歳だ。


最も、犬や猫と同じで魔物は半年位で大人になる。


「それで、何で裸なのかな?」


「一緒に寝ると男は喜ぶって聞いたわ、それに好きな男じゃないと寝ないとも、私はセイルが好きだから寝たのよ?」


これを聞いて喜ばない男は居ないだろう..


本当に「好き」が解って言ってくれたなら凄く嬉しい、だがスワニーはまだ本当の「好き」は知らない筈だ。


「スワニーありがとう..凄く嬉しいよ、だけど服を脱ぐのは「大好き」になってからで良い、一緒に寝てくれるのは嬉しいけど、次からは服を着てくれる?」



「解ったわ..「大好き」になるまで寝るときは服を着る..それで良いのね?」


「うん、それで良い」


美少女の添い寝を、全部断る事が出来ないのは..僕の心の弱さだ。



スワニーを連れて冒険者ギルドへ行った。


スワニーを連れて歩いているのに、可笑しい目で見られなかった。



(あの美少年、魔物使いだったんだ)


(残念、魔物使いはパーティー組まないから諦めるしかないのかな)




そう言えば、「魔物使い」という職業もあったな。


だけど、魔物使いは職業的に好かれない、そう思っていたんだけどな? 今は違うのか?



この前と同じ様に空いている女性のカウンターに行った。


受付のお姉さんはスワニーを見ると


「もしかしてパーティー申請ですか?」


多分、スワニーの首輪を見たんだろうな..流石はギルドの受付だ。


「はい、お願いします」


「見た所、彼女は奴隷という事で間違いないですか?」


「はい」


「では、こちらの方のの用紙になります」


普通のパーティー申請と違い、奴隷の場合は「手に入れた物が主人の物になる」そういう一文が入っている。


それ以外は普通のパーティ申請と同じだ。


ちなみに4人パーティーになるとパーティー名の登録も可能だ。


書類を書き上げたが、スワニーは文字が書けない。


スワニーの欄をどうするか聞いたら。


「それでは、私が見届け人の場所にサインしますから、人差し指の拇印で大丈夫です」


これで、スワニーも冒険者になった。


石級だけど。



「これで、私も冒険者なのね..良く解らないけど」



スワニーは何かを貰えるのが嬉しいらしく、冒険者証を大切そうに握りしめている。


僕の記憶では、「魔物使い」は余り歓迎されない職種だった筈だ。


魔物をつれて街を歩くから、嫌われていた印象が強い。


だから、その事について聴いてみた。



何て事はなかった。


この街で最高位の金級冒険者にエドガーさんという人が居て魔物使いだからだそうだ。


確かにそれなら、魔物使いでも禁忌されない訳だ。



そう言えば、昨日串焼きを食べてから何も食べてない。


折角だから、スワニーにも何か美味しい物でも食べさせてあげようかな。



「あの、それで魔物使いでも外食できそうな店ありませんか?」


「それなら、テラス席があるお店なら多分大丈夫だと思います。エドガーさんの影響で作られた施設ですから..魔物使いは勿論、獣人族でも普通に食べれますよ」



エドガー、様様だな。



「スワニー 飯食べに行くよ!」


「嘘..またご飯が食べられるの?」



スワニーに聞いてみたら、奴隷の時は1日にパンが一個貰えるだけだった。


ありえない、人間だって全然足りない、ましてハーピーの血が入っているなら余計に足りない筈。



「ああ、これからは1日3食、忙しい時で2食は食べさせてあげるからな安心して良いよ」



(やっぱり、奴隷の扱いじゃない..奴隷はあの耳長以外は、1日1食だって聞いたわ..友達って凄いわね)



「ありがとう」





僕はスラム近くのテラス席のあるお店に行く事にした。


幾らエドガーさんの影響があるからと言っても限界もあるかも知れない。


それに可能なら「行きつけ」に出来るようなお店が欲しい。


「ここ、彼女と一緒でも大丈夫ですか?」



「じゅう..じゃ無かった、テラス席なら何処でも大丈夫ですよ!」


多分、従魔と勘違いされそうになったんだな..


スワニーと一緒にテラス席に座った。


スワニーは周りをキョロキョロ見回している。


「スワニーは何を食べたい?」


「何でも良いわ、任せるわ」


(固いパンと肉しか食べた事ないし、知らないわ)



「それじゃ、任された、すいません、オークのステーキ2つとコーンのスープにライス下さい」


「畏まりました」





やっぱり、この扱いは違うわ。


あそこに居て立っている人、私と同じで売られていた人だわ。


お店よりはマシだけだけど、ボロボロの服を着ているし立っているだけで食事もさせて貰えてない。


あれが本当の奴隷の扱い...それもまだましな扱いな筈だわ、だってあの人は「価値がある人」だったんだから。



「お待たせしました」



「嘘、凄く美味しそうな臭いがする..食べて良いの?」


「勿論、食べて良いけど、食べ方は僕の真似をして」


「どうして?」


「食べ方にルールがあるからね」



そう言えば、耳長は金属の棒をつかって食べていたわね。


「解ったわ」



スワニーに睨まれながら食事をした。


旨く食べられないのは、初めてだから仕方ない。


文句言わず、真似ようとしているのはスワニーが真面目な証拠だ。


だけど、美少女が無言で睨んでいるのは..余り食べた気がしない..



その後は日常品を買って回った。


勿論、その際には挨拶とスワニーの紹介を忘れない。



しかし、エドガーさんは凄い..どこの店もスワニーに対して寛容だった。


エドガーさんの影響のおかげの様な気がする。



日常品と冒険者に必要な最低線の物を揃えると夕方になった。


もうそろそろ、お店によっては閉まる時間だ。



スワニーが一軒のお店を見ていた。


ガラス細工の店だ。


ガラス細工と言っても高級店で無く、色のついたガラス玉をアクセサリーとして売っているお店だ。


おもちゃみたいな物だから安い。


「どうした?」


「何でもないわ」



どう見ても赤いガラス玉のペンダントを見ている。



「その赤いペンダント下さいな」


「はいよ..銅貨5枚ね」




「あの、それ..」


「スワニーが欲しそうにしていたから、はいあげる」



「うわぁ、ありがとう」



多分、僕が今迄みた中で最高の笑顔だった。


こんな笑顔を見れるなら、こんな物安い物だ。



「どう致しまして」



その後は、住んでいる宿から近い事もあり、さっきと同じ店で夕飯を食べて帰った。


今迄とは違う..何をしても凄く楽しい。


だからか..気が付いたらもう暗くなっていた。



「そろそろ帰ろうか?」


「そうね」


僕はスワニーと手が繋ぎたくなった、だから手を握った。



「これって何か意味があるの?」


「仲の良い男女がする事だよ..嫌なら辞めるけど」


「嫌じゃないわ、セイルがしたいなら良いわ」


「ありがとう」




セイルの言う、「友達」「好き」「大好き」の意味が私には解らない。


だけど、セイルとずっと一緒に居たい..そう思った。







さてと..セイルは寝たわね、「大好き」なら裸で寝るのよね?


幾ら考えてもセイルより好きな人は居ないわ..というか他の人はどうでも良い人だもの。


セイルより好きな人は居ないから、これは「大好き」って事だと思うのよ。


だったら..


スワニーは裸になりまたセイルのベッドに潜り込んだ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る