第3話 子供時代① 真相


僕は目を覚ますと赤ん坊になっていた。


今回は、転生するときに女神様には会わなかった。


という事は勇者ではないのだろう。


目の前に居るのが...母さんなのか?


嘘だろう..どう見ても化け物だ、..これならまだゴブリンの方が綺麗に見える。


父さんは..もっと駄目だオークの方がまだましだ。



魔王を倒すときに、呪いを掛けられた。


その時の呪いで僕は化け物にされた。


その呪いが今も続いていて、今度は化け物の子として生まれたのかもしれない。


これが銀嶺の勇者と言われた僕の次の人生なのか、あんまりだ。



「セイル、貴方は本当に可愛いわ、お父さんの綺麗な目そっくり」


「この髪はライラに似ているな..絶対に美形に育つな」



可笑しいだろう、これ程醜いのに..もしかしてこの姿は、この化け物の種類では美形なのか?



3歳になった。


どうやら、僕は化け物の子供ではなく、人間の子供に生まれたらしい。


しかも、化け物のように見えた両親はかなりの美形なのだという。



最初は何の冗談か、そう思ったが..村人の様子を見ると本当にそうみたいだ。



父さんにも母さんにも良く、「綺麗」「羨ましい」なんて言葉を使う相手が多かった。



最初は嫌味なのか、そう思ったが、本当にそう思っているようだった。


そして、僕の姿は..勇者の時に呪いを掛けられ醜くなった姿を、子供にしたらこんな姿になる。


そんな姿だった。


こんな姿じゃ..絶望しかない、そう思っていた。



隣にはユリアという女の子が住んでいた。


見た瞬間に「この子も絶対幸せになれない」そう思った。


僕程ではないが、化け物みたいに醜かった。


はっきり言う..もしも、ゴブリンとユリア、どっちと結婚をするのか?


そういう二択なら、誰もがゴブリンを選ぶ、そう思うほど醜い。



僕は自分の醜さが解っているので引き籠っていた。



「セイル、本ばかり読んでないで外で遊びなさい」


母さんに、そう言われ外に出された。



途方に暮れていた。


そんな所をユリアに見つかった。


「セイルくんだよね?」



「そうだけど?」


「うわぁ..セイルくん、近くで見るとうん、凄く綺麗だぁー...王子様みたい」


「そう?」


この子も醜いから友達が居ないんだろうな...だからお世辞を言っているのかな..そう思った。


「うん、本当に綺麗、プラチナブランドの髪に鳶色の瞳..神秘的...凄いな..」



えっ、可笑しいな?


僕にはそうは見えない...だけど、その容姿は銀嶺の勇者と呼ばれていた時の僕の姿だ。


「本当にそう見えるの?」


「うん..あのね..ユリアも良くお姫様みたいって言われるんだよ?」


「そうなんだ」



「あれっ、何だか気が無い返事..可愛くないかな、ユリア?」


ゴブリン娘とは言えないな...


「うん、可愛いよ」



最初はただのお世辞だと思っていた。



だが違っていた。


「ユリアちゃん、僕のお嫁さんになってよ」


「嫌だよ..わたしは、セイルくんみたいなカッコいい人じゃなきゃ結婚しないよ」




「セイルくん、お芋半分あげるよ」


「ありがとう」



「ちょっとブスのくせにユリアのセイルくんに手を出さないでよ」



ユリアは可愛いというのは本当だった。


そして僕は、本当に美形らしい。


だけど、僕の目には..醜く見える。



ここで僕は魔王の言葉を思い出した。



「勇者よ、お前の目から見たらさぞかし、我らは悍ましく映っているのであろうな..だが、余からすればお前達の方が醜いのだ、余は死ぬ..だが、余はお前のその清らかな目が世界で一番嫌いじゃ..奪ってやろう」



魔王の呪いは..僕を醜くするのではなく、美醜が逆転するそういう呪いだったんじゃないか?



ようやく気が付いた。



確かめるために、ませているトードに美少女ランキングを聞いてみた。


ほぼ逆転していた..


「だけど、ダントツの1番はユリアちゃんだけどね」


やはり、そうだ。


だけど、この目は酷すぎる。


この村でぼくに一番可愛く見える子(実際は一番不細工)な子でも普通の子位にしか見えない。


つまり、余程の不細工でなければ...美人には見えない..そういう事だ。





5歳になった。


僕の母さんが死んだ。


森に山菜を取りに出かけた時にバインドベアーに襲われた。


他に沢山の死傷者がでた。



ユリアのお母さんが「これからはうちの子になったつもりで甘えて良いのよ」


そういっていた。



父さんは猟師なのであまり家に居ない。


自然とユリアの家で過ごす事が多くなった。



ユリアは凄く優しかった。


だけど、僕には友達までしか思えなかった。



この目じゃなければ、好きになったかもしれない。


だけど、どんなに優しくても人間は獣とは恋をしない。




7歳になった。


父さんは母さんの仇を討ちたかったのか、ずっとバインドベアーを含む魔獣を狩っていたらしい。


だが、そんな無茶なことしたから、最後は魔獣の群れに囲まれて死んでしまった。



嫌な事に母さんの時と同じで僕は悲しくなかった。


それは僕の目に、父さんや母さんが、人間として映ってないからなのかも知れない。


そんな自分が嫌だった。



僕にはこれで家族が居ない。



自分の家にはいるものの..その殆どの時間をユリアの家で過ごす事になった。


おじさんもおばさんも凄く優しい。


特におじさんは、化け物に見えない、だから凄く嬉しかった。



「ぶぅー何でお父さんばっかり話すの?」


「おばさんにも甘えても良いのよ?」



「がははははっ、男は男同士だ..ようやく家にも俺の味方ができたな」



女の子の友達は出来なかった。


他の女の子と話すとユリアが不機嫌になる。


それにユリアは女の子の中心にいるから、文句を言う女の子は居ない。


「セイルくん..大きくなったら...」


「ごめん、ようがあるから」



この先に言う事は解る「お嫁さんにして」だ。



だから言われる前に逃げた。


「もう..セイルは奥手なんだから」




周りは僕もユリアの事が好きだけど、照れて逃げている。


そう思っている。



正直、逃げたい。



だけど、育てて貰った恩があるから、そんな不義理な事は出来ない。




諦めないといけないのかな..



いっそう、目を潰そうかな...



ユリアが優しいのは解る。


だけど..本当に気持ち悪いんだよ..



目さえ潰せば..そう悩むようになった。



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