第2話 勇者は死を選んだ
主人公の前世のお話です。
僕はいわゆる転生者だ。
他の世界から来たのではない、そういう勇者もいたらしいが、僕はこの世界で前世は勇者だった。
最近の勇者は仲間と一緒に戦うが、僕の時代の勇者は1人で戦う。
己の力を限界まで鍛えあげ、ただ一人で魔王討伐の旅をする今となっては可笑しい話だ。
苦しい旅の末、僕は魔王までたどり着いた。
魔王との戦いは激闘につぐ激闘だった、だが僅かに僕の方が実力が上回りどうにか勝つことができた。
だが、その際に僕は呪いを掛けられた。
「勇者よ、お前の目から見たらさぞかし、我らは悍ましく映っているのであろうな..だが、余からすればお前達の方が醜いのだ、余は死ぬ..だが、余はお前のその清らかな目が世界で一番嫌いじゃ..奪ってやろう」
「うがああああああああああっ」
目が焼けるような痛みが数時間続いた。
目がくり抜かれたのかと思った..だが違った。
「可笑しい、ちゃんと見えている」
そのまま、魔王城を歩いて行くと途中に鏡があった。
自分の様子を見る為に鏡を見た。
そこに映ったものは世にも醜い怪物だった。
これが魔王の呪いなのか?
自分で言うのも何だが..僕は美貌には自信があった。
プラチナブランドの髪に鳶色の瞳。
王女や貴族の令嬢ですら魅了する美貌..それが「銀嶺の勇者」と呼ばれる僕だった。
だが、鏡に映る、その姿は、ゴブリンすらまだ綺麗、そう言える程の醜い男だった。
これが魔王の呪いなのか..
この姿で生きるのはこの世の地獄だ..
あれが「銀嶺の勇者」だと言われたくない。
それより、何より、ルール姫にこの姿を見られたくない。
ならば、この場で死のう..
銀嶺の勇者は魔王と死闘の末相打ち..それなら綺麗な物語で終わる筈だ。
こうして前世の僕は、死ぬことを選んだ。
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