7日目 俺、生き残りました

「うぅぅぅ」


 あまりの身体の怠さに目が覚める。倒れた時は心臓が痛かったが今は落ち着いているようだ。


「知ってる天井だ」


 首だけ動かすとここは知ってる場所だ。ここはオカルト何でも屋レイだ。


「目が覚めたんですね」


 そして聞き覚えのある声が聞こえた。霊歌ちゃんの声だ。


「あー………」


 言葉の掛け方に悩んでしまい声が出ない。ちょっと前に大事な依代を壊してしまったのだから。

 もう会う事はないと思ってやったんだけどなぁ。


「昨日のことなら怒ってませんよ。むしろ感謝しています。ありがとうございました」


 とお礼を言われた。ちょっと待て。


「昨日?」


「ええ、貴方はあれから15時間くらい寝ていたんですよ」


 と言われてだるい手を動かしてスマホを見ると朝の10時になっていた。


「マジかよ……霊歌ちゃん学校は?」


 金曜日なのにここにいるという事は休んでくれたのだろうか。


「休みました」


「そっか…………あれからお母さんは何か言ってた?」


 少し気になっていたので聞いてみた。


「大変でしたよ。あの男を出せとか家の事はどうするんだとか、挙句の果てにお前は一家の恥晒しだとまで言われました」


「……ごめん」


 いくらなんでも勝手すぎたよな。


「いえ、私は貴方に感謝しています。無理やりにでも私の束縛を壊してくれて……これからの人生どう生きるか考えているだけでワクワクします」


 そう言ってくれるなら良かった。


「そう、か。なら良かったよ」


「……貴方は何故私にそこまでしてくれるんですか? 

 私は貴方に出会ってから助けられてばかりですが貴方の考えている事が理解できません。貴方にとって私は憎むべき相手なのでは?」


 そう言われて俺は笑った。


「最初出会った日に言ったこと覚えてる?」


「ええ、私を惚れさせると言っていた事ですよね?」


 俺はその言葉に頷いた。


「うん。最初は勿論惚れさせてこの呪いが解かれたら殴ってやろうとか、色々考えていたんだよね……だけど、その……」


 俺が言葉に詰まると霊歌ちゃんは不思議そうな顔をした。


「気づいたら俺の方が霊歌ちゃんの事好きになってたんだよね。クールに見えて負けず嫌いで、真面目で。それにちょっと意地悪な所も全部ひっくるめて好きになってんだよね」


 昨日霊歌ちゃんの相談を受けた時には自分の気持ちにも気づいていた。だからこそ、あんな無理やりなやり方でも彼女を助けたいと思った。

 仮に俺が死んだとしても……


「……っ!!」


 霊歌ちゃんの方を見ると顔を真っ赤にしていた。


「あれ? そんな顔真っ赤にして告白とかされたことないの?」


 最後くらい意地悪でもするかと思って揶揄ってみる。


「そ、そんなことないですよ? 私結構モテてますし?」


 と疑問系で返してくる。モテているのは事実だろうけど、この反応を見るに高嶺の花に見えて告白なんてされたことなさそうだ。


「まっ、そうだろうね」


 と言って立ちあがろうとするがうまく立ち上がれない。

 力がうまく入らないのだ。


「っ! どこへ行こうとしているのですか?」


 霊歌ちゃんは俺の事を見て心配そうな表情を一瞬浮かべた。


「帰ろうかなって……これ以上ここにいても、迷惑でしょ?」


「……なんでそんなに優しいんですか!? 恨んでくださいよ! もっと罵声を浴びせてください! そしたら私は……私は……」


 とその場に力なく座り込んでしまった。


「ばーか、好きな子に誰が悪口言うんだよ。それに俺って意外と幸せ者かもよ? 人間なんていずれ死ぬんだし、好きな人に殺されたって理由なら成仏もできそうだしね」


 俺はなんとか立ち上がるがふらついて倒れてしまう。


 すると霊歌ちゃんが俺の近くまで来た。


「ご、ごめん。すぐに立つから……」


 俺が立ちあがろうとすると霊歌ちゃんに止められた。


「……っ!!」


 突然キスされた。しかも唇に。


「!?!?」


 俺は驚きのあまり声が出ない。


「っふぅ。私の負けです」


「へ?」


「だから私の負けです! 私はヒロさんに惚れてしまいました!」


 と顔を赤くしながらそう言った。すると体が軽くなった。


「えっ!? 霊歌ちゃんが俺に惚れたの!? しかもな体軽くなったし」


「呪いは解呪しました。……初日の約束でしたからね」


 とそっぽを向いて恥ずかしそうにそう言った。


「や、やったーー!!! これで長生きできるぞー!!」


 俺は喜びのあまり変なダンスを踊ってしまう。

 ダンスが終わった後、霊歌ちゃんが俺の服をちょんちょんと引っ張ってきた。


「……その、私の人生を無茶苦茶にしたんですから責任とってくださいね」


 上目遣いでそう言われた。

 くそぅ、可愛いなぁ!


「勿論!」


 俺は頷いて霊歌ちゃんの方を改めて向いた。

 すると霊歌ちゃんは目を閉じて少し上を向いた。

 俺からキスをしていいってことか?


「絶対幸せにするよ」


 俺は霊歌ちゃんにそう言ってキスをした。




 こうして俺の奇妙な7日間は幕を閉じたのだった。めでたしめでたし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

美少女呪術師に呪いをかけられたので惚れさせて呪いを解いてもらいたいと思います コーラ @ko-ra

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ