その後

車を見送った後、

私は感傷に浸っている場合ではないことに気が付いた。


子供が帰ってきたら、なんと説明しよう。

絶対、荒れるに決まっている。


ヤギとの別離の悲しみにプラスして

これからショックを受けるだろう我が子のことを思うと、

私の心は重く沈んでいった…。


どうしよう。

子供を悲しませたくない。

私だって、もっとヤギを飼っていたかったのだ。

ん?!


ヤギを飼う?


そうか、その手があったか!


そうなのだ。

ヤギを自分で飼えばいいのだ。

レンタルではなく。


ただ、普通の犬や猫、鳥や金魚のようには手に入らない。

農協に電話して、なんとかヤギを入手する方法を教えてもらった。


かくして、我が家には、新しく別のヤギが来ることになった。

もう返さなくていい。

正式に我が家の家族の一員のヤギだ。


子供も、ヤギがいない期間はふさぎ込んでいたが、

次のヤギは返さなくていいんだよと言うことで、

なんとかなだめることができた。


しばらくして、新しいヤギがやってきた。

このヤギもまた、人懐っこく、優しい顔をしていた。

子供も大いに気に入ったようだ。


よかった。私の心はやっと晴れた。


こうして、私も子供も、ヤギとの生活に夢中になった。

敷地には、ヤギが食べるための草がたくさん生えるよう、

私は土壌を改善したり、肥料をまいたりと頑張っている。


ん?

最初にヤギをレンタルしようと思った理由はなんだったっけ?

私はなんだか真逆のことをしているような気がしたが

もう、そんなことはどうでもよかった。


我が家のかわいいヤギのために、

今日も私は草を育てている。


《終》

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ヤギを借りてみたらこんなことになった 神楽堂 @haiho_

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