第5話 なりきりWeb小説の視点問題

 Web小説、特にBLでは推奨される三人称で、どうやって主人公の心情を書けばいいのかという、この矛盾。

 三人称で、俯瞰ふかんして書く文学を、なりきり一人称のWeb小説でやれと、言われたようなものですよ。


 要求自体が、むちゃくちゃやん!!! 



 私は書き手としてBLをどんな視点で書けばいいのか、全然わかりませんでした。ですので皆、どうやってるのか勉強するため、Web小説を読みまくりました。


 ここからは、あくまで私見になりますが、その視点の矛盾の問題を、Web小説はWeb小説特有の『視点』を作り出したことで、クリアしようとしているのかなと、思いました。



 おもにBLでは、視点は冒頭から完結まで三人称視点で統一させつつ、心理描写をするときにだけ、一人称に近い視点で書いています。

 もう一度言います。

 作品全体においては、三人称視点を崩しません。



 例えばBLでの『受』キャラが『攻め』に対して、何らかの行動をしたしましょう。


(1) 『受』のAは、本当は『攻め』のB君が好きなのに、好きだと言えな       い。むしろ反発してしまう。←この文章は三人称視点です。


(2) 僕(A君)は、どうしていつもこうなんだろう。本当はこんなに好きなの     に。←この文章は一人称。


 どちらの視点でも共通するのは、相手が何を思い、考えているのかは



 小説において三人称、一人称が推奨されるのは、この《《相手の気持ちがわから

ない》》を物語の鍵にするため。

 謎であるがゆえのにするための手段です。



 三人称のはずなのに、Web小説のに限っては、


『……俺。本当に……、あいつがいないとダメなんだ……』


 という風に、一人称で書かれます。

 これ、三人称視点なら『Aは、あいつがいないとダメだと思った』に、なりますよね。また、こういった独白は、一人称ならOKです。


 

 Aはと書かれると、読者と小説に、言葉にしがたい距離感が生じます。Web小説おいては、これが三人称視点の問題でもあり、欠点です。


 それを避けたいためなのか、

 主人公の感情描写はで、ポーンと書き出す。次の行で改行して、また三人称視点に戻す裏技。


『……俺。本当に……、あいつがいないとダメなんだ……』

 Aは胸中で呟いた。

 

と、続ければ、三人称に戻れます。この独特の視点での書き方は、BLには本当に多いです。

 キャラの言動や、状況描写は三人称視点で書きますが、主人公の喜怒哀楽は、一人称寄りの視点で書いている。




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