第4話 消せない矛盾
だから、私のBLでは読者は主人公になりきれない。
主人公になりきって、ドキドキやハラハラを、体感できずにいるのかも。
そんな気づきもありまして、それなら登場人物との会話や地の文で、主人公の気持ちをわかりやすく書き足そう。
主人公は今、こう思っている。
片想いの相手にこんな態度をとられてしまい、こんな風に感じている。
きっと、私が「こんなに書いたら、しつこいって思われるんじゃ……」と不安になるほど、たくさん書いて丁度いいぐらいなんだろう。
それを最初に学びました。
私は自作の主人公に、共感はしています。共時性も感じます。
ですが、なりきるぐらいの感情移入は乏しいと、書きました。
私の主観では、これこそが「紙媒体(文学)と電子書籍(ライトノベル}の最大の違いなんじゃないかと、思います。
Web小説の読者は、主人公は自分の気持ちの代弁者であって欲しい。
作者も主人公になりきって、美少女軍団に囲まれる恋愛や、最強の自分を体感できる冒険を楽しみたい。
Web小説を読んだり書いたりする目的は、現実では発散できない攻撃的かつ、反社会的な感情や、満たされない欲求のカタルシス(浄化)が優勢です。
文学(紙媒体)を読み、そして書く側の目的は、主人公に自分をなぞらえて考え、今を顧みるために。
この小説の主人公は、こういう言動をとっているけど、私だったらどうするのか。あるいは、ストーリーそのものに自分の人生を重ね合わせ、違いだったり類似点に思いを馳せる。
また、書き手であれば、物語の中でしか言えない、消せない何かを手放す手段として、小説にすることもあるでしょう。
この場合、感情と同時に、何らかの体験の昇華に近い気がします。
ストーリーを追いながら、主人公が生きた物語を疑似体験する。主人公と自分自身、あるいは物語と自分の人生を、照らし合わせて考える。
照らし合わせて考えるには、一対一で、物語に向き合わなければなりません。ですので、Web小説のように同化はしない。
そういった思考が、どこかで生じるタイミングであったり、合わせ鏡的な要素が文学にはある。
だから、もし、読んでいて何かしら考えさせられる要素がなければ、それは文学ではないと思っています。
Web小説で主人公になりきって、恋愛をしたり冒険をしたりすることで、何かしらの気づきがあったというのなら、ライト文芸ジャンルになります。
文学は文芸ではありません。
雑多な言い方をすれば、読んでいて揚がる感覚があれば文芸。沈む感覚を思えたのなら文学です。
書き手の小説に対するスタンスも、これほど違うわけですから、なりきりWeb小説であると同時に、思考的な文学(紙媒体)でもある小説は、書けません。
感情と思考が相殺し合う関係である以上、Web小説でもあり文学(紙媒体)でもある小説は、それぞれの良さをつぶし合い、どっちつかずになるでしょう。
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