第6話 喜怒哀楽まで、実は別物

 また、同じ感情(Feel)は、感情(Feel)でも、Web小説と文学では、読んでいる最中に湧き起こる喜怒哀楽の性質も、厳密に言えば実は別物。


Web小説を読んでいて湧き起こる喜怒哀楽は、「感情(emotion)」。

文学を読むことで呼び起こされる喜怒哀楽は、「情操(sentiment)」。



感情(emotion)は、もたらされるものというのが、私の考えです。少し話は逸れますが、気分がコロコロ変わる人のことを「お天気屋さん」と、言ったりします。

 同じように英語圏でも、感情(emotion)は、よく「weather(天気)」に例えられます。

 つまり、一過性のものとして。


 

 雷のように激烈な情動であっても、嵐のように吹き荒れても、それらは、すぐに過ぎ去って消えるもの。感情(emotion)は、そういった外的な刺激に対するな反応です。

 不安定さ。スリル。揺れ、を連想させるものになる。



 対する、文学による「情操(sentiment)」は、まず文章を読み、物語を理解して、熟考する。

 そうして何かの想いにふけることで、自分の内側から染み出してきて派生する。

 湖に投げられた小石が波紋を広げるように、ひとつの感情が別の想いに波及する。


 そういう、を、連想させるようなもの。それが文学における『喜怒哀楽』だと、そんな風に感じます。


 Web小説の感情(emotion)に比べると、派手さやインパクトには欠けるものの、安定していて、持続性と広がりを感じさせる。



 Web小説の感情が、乱高下であるならば、文学の感情は、《《しんどう》なのかもしれません。

 音のように、波のように、液体・気体を媒体『ばいたい』として伝わる振動に近い気がします。



 ですので、Web上で「情操(sentiment)」を描いても地味なんです。

 地味顔だと、言われます。

 なので、もし、Web上でモテたかったら、あなたの小説も化粧して盛りましょう。


 アイプチにアイブロウ。ボリューミーなマスカラや、アイシャドウにアイライナー。コンシーラーで涙袋を強調し、アイブロウペンシルで涙袋の影を描き、カラコン入れて、チーク入れて、リップは濡れ感のあるピンクでしょう。

 このつやつやの濡れ感は、男性読者への巻き餌です。


 ああ、もう書いてるだけでも面倒くさい。私は絶対、リアルでもやらないな。こんなこと。

 ですが、最低限でもこれぐらいしてないと、Webでは自分の『しょうせつ』、覚えてもらえないかもしれません。

 

 だから攻略法は、すごくシンプル。

 目立でば、勝てる。

 たとえ創作論と評論の分野に、異世界ファンタジーをぶっ込んで、タグには創作論の創の字も見当たらないのに、それが週間ランキング2位ですよ? 

 悪目立ちしてでも★が欲しいか。狂っとる。

 

 

 こういった女子力の高いWeb小説と、地味顔の文学ちゃん。

 人格そのものが違いますから、当然属するグループも違います。結局、最後の最後にWeb小説と文学は好みの問題に、なってしまう。

 読み手にとって「どっちがタイプ?」で、分割される。


 しかも、Web上では、理論整然と書けば書くほど、読者は居ついてくれません。

 殴り書きみたいに書いた方が、ウケがいい。

 連発式の打ち上げ花火みたいなものです。脳内は色とりどりに彩られ、感情のジェットコースターが止まらない。それが快感。

 あまり紙媒体で本を読まない、後頭葉優勢の人々には。




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