第9話 Web小説で個性を打ち出すには

 Web小説の、それらの縛りをクリアしながら、ライバルに差をつけるにはどうすれば……。


 それがわかっているのなら、そしてそれができているなら、私も入賞しているはずなので、論説するのも気が引けますが。

 ここで言及しないのも、片手落ちのように思います。ですので、サクッと書いて通過します。


 もし、突き抜けた独自性をと考えるのなら、自分の変態性フェチを、どれだけ恥ずかしげもなく書けるかどうかじゃないでしょうか。


 自分が何に執着を示す変態なのかということを、小説を通して豪語する。

 その時、書き手に少しでも躊躇や恥の感覚が生じると、ストーリーにも、それが透けて出てしまう。

 私は自作の投稿作への批評の中で、「まとまってはいるが、決め手に欠ける」。

 そう、何度指摘されてきたことか。


 針を振り切ってしまえない踏ん切りの悪さが、作品としての勢いであったり、インパクトの弱さに通じてしまう。

 だからといって、書き手がキャラを演じさせても、小説を読めば『真正・頭おかしい人』かどうかは、伝わってしまいますよね。どうしても。


 明治末期から昭和初期にかけて活躍した文豪の谷崎潤一郎だって、ドM変態の総合商社。太宰治だって、メンヘラの帝王。何ごとも極めれば、文学やエンターテイメントに昇華させることができますよ。


 だから、人には絶対知られたくない自分を描く。

 谷崎潤一郎も三島由紀夫も太宰治も坂口安吾も、みっともなくて情けなくて、ろくでもない自分をネタにした人。恥をかけということです。


 だけど自分は普通だという認識があるのなら、その『普通』さを全開しましょう。前面に打ち出しましょう。あなたがどれほど『普通』であるかを、書くのです。



 それでも、黒船ペリー来航以来のカルチャーショックの変態作家が出現しても、奇抜なアイデアだけが抜き取られ、あっという間に『検索ワード』にされてしまう。そして、書店には似たような作品が溢れかえる。


 そのスピードといったら、Webの特性そのものといっても過言ではありません。


 類似品が乱立すれば、頭ひとつ抜きん出たはずのアイデアもマンネリと化し、その系統の売上も、どんどん頭打ち状態になっていく。ラノベ作家と出版社の苦悩は尽きません。


 なんだかWeb小説で個性を打ち出すには! を書くつもりが、筆者の愚痴っぽくなってしまいました。すみません。

 次章からはWeb小説と、紙媒体の小説に対する脳の反応について、掘り下げて書きます。


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