第2話 微々たる書き分け

 だからWebで小説を書くときは、冒頭で時間(過去・現代・未来またはファンタジー)、主人公の年齢や外見、主人公がどこにいるのか(場所)など、物語の設定をすみやかに開示する。

 人がネットで何かを読むときは、そういったを求める脳の分野の後頭葉こうとうようが、優勢になる気がするからです。


 対して、紙書籍を前提にして書くときは、冒頭では読者の脳の前頭葉ぜんとうように「んっ? 何だこれ」と、興味や関心をそそられるシーンをバーンと持ってくる。

 

 紙媒体での冒頭の安直な例えですが、二十代後半で平凡な容姿の女が、三十代前半のイケメン男の首を締めている。

 とにかく締めてる描写から入ります。

 

 そのあと、二人は新婚夫婦なんだとか、場所は新居の階段だとか。妻は二十代後半で夫は三十代前半等々のを、読者に提供する。


 前頭葉は好奇心の塊だと考えてください。

 おおっ!? なになに!? 何が起きようとしているの!? 的なビックリマークが、前頭葉を食いつかせる餌みたいなもの。


 これをWeb小説バージョンにするのなら、時代設定は現代、二人は新婚、場所は新居の二階に続く階段の途中、夫は三十代前半でイケメンで大手企業のサラリーマン、二十代後半で平凡な容姿の妻が夫の首を絞めている。


 といった順番になります。

 Web小説では、いきなり妻が夫の首を絞めてるなどと書かれても、後頭葉は「何のこっちゃ」と、呟きます。好奇心をそそられたりはしないんです。

 得られる情報が少ないと、後頭葉はフリーズする。

 そこから先には進めない。


 ここで一回話をまとめますと、


*紙書籍では【エピソード】の方が先。設定開示は、その後です。

*Web小説では【設定の開示】が先。エピソードの展開は、その後に持ってくる。


 後頭葉は「何が起こっているのか、わからない状況」に

 前頭葉は「何が起こっているのか、わからない状況」を


 私は紙で小説を読む時に、最初に文章にコンタクトする脳の分野はだと、考えています。

 だから前頭葉が大好きな、シーンを持ってくる。たとえば「ぎょっとする」以外にも「何これ笑える」「なんか恐い」でも構いません。


 紙書籍の冒頭では「この先、どうなっちゃうんだろう」と、読者の前頭葉に思わせる。


 前頭葉は「これからどうなっていくのか」考えたり、自分で推測したりするのが大好きです。

 だから、エピソードの背景を、読者が推測したくなるような冒頭を持ってくる。

 そうすると、とっかかりとして、2ページぐらいまでは読んでもらえるかなというか、読者でもある自分がそうなので、そのように書くよう心がけます。



 ただ、Web小説は設定に関する情報はすぐに開示するものの、一度に提供しすぎても、情報過多で、後頭葉は設定を理解できなくなってしまいます。

 わりと、あっけなくキャパオーバーになっちゃいます。

 この辺の匙加減が、冒頭の鍵になる。

 


 小説に限らず、人間が視覚から入ってくる情報を一度に処理できる量って、ほんの少し。だから、Web上で読んでるうちに情報を処理できなくなってしまったら、読者は読むのを止めるでしょう。

 

 Webでは「この小説は、こういう時代背景で、こういう登場人物で進めますよ」という、必要最小限の設定だけ理解してもらったら、そのあとの伏線は小出しに小出しに、ゆっくりと。

 また、Web小説ではなるべく漢字を使わずに、ひらがなで書くようにしています。漢字は後頭葉での視覚情報の処理に、かなり負担を与えます。



 そして、私はWeb小説に最初にコンタクトする脳の分野は、後頭葉だと考えています。


 ですので、この情報処理の段階で後頭葉に「」と思われないよう頑張って、へつらいます。

 漢字がずらーっと並んだ小説をWeb上で見た瞬間、ページを閉じてしまう読者だっているはずです。


 今のところ、私が意識している書き分けは、上記した分ぐらいでしょうか。

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