第11話


満月から少し過ぎた夜

静けさはどこか蒼くて

それはキミの瞳を思い起こさせた


もうこんなにも、僕は大人になってしまった


それはどこか絶望的で

でもどうしようもなく真実で


時の流れは止められない

薄れていく記憶も

かすかにしか思い出せない

あの頃のキミの澄んだ声も


結局僕は手放せなかったし

たぶんキミを救うことなんてできなかった


それでも。


「眠れないの?」

少し掠れた声が隣からして

僕はその頭をきゅっと抱きしめた


その腕に残る無数の傷痕が

もう見えないほどに薄れている

きっと僕はそれだけでよかった

キミの存在だけで、もうそれでよかった





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カゲロウ マフユフミ @winterday

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