第10話



川沿いを群れなして飛ぶトンボを

ヘリコプターみたいだなんて笑って

人気のない公園の

雨上がりの緑の匂いを吸い込んだ


手袋もマフラーもいらない

でも少し厚手のカーディガンはほしい

そんなどっちつかすの季節に


「ほら、あそこに虹」

いつになくはしゃいだキミの声が

川面をゆるく波立たせる

灰色の雲の間から射し込むような虹が

ゆらゆらとこちらを見下ろしている


そんなキミの純粋が

羨ましくて妬ましくて

どうしたって守りたくなってしまって


こちらを振り向くこともなく

柔らかな笑みを浮かべたキミを

どうしても離したくなくて

それでももう手放してしまいたくて

見られないようにそっと頭を抱えた

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