詩『砂糖水』

初めて髪を染めた夏休み

花火大会に向かってる

1年ぶりに会う君は

何だか大人っぽく見えたんだ


人混みの中で離れないようにと

君が私の右手をつかんだ

ふとよみがえる日記の一行

あの夏の私は何て言うのかな


もうあの夏は過去の記憶

そんなこと分かっているんだって

でも期待しちゃうよな、させないでよね

夜空に花火が打ち上がった


甘ったるくて爽やかじゃなくて

色褪せた ただの水だから

また飲もうなんて思わないし

他の味を求めてるはずだ


心臓から聞こえる鼓動は

きっと夏の暑さのせいだ

友達に戻っただけだよ

炭酸が抜けた砂糖水


「彼氏ができたんだ、この夏」

君が突然そう呟いた

笑顔で伝える「おめでとう」

ハッピーエンド。これでいいんだ


人混みの中ではぐれたと思ったら

君が2本のラムネを買ってきた

ふとよみがえる日記の一行

私は君のここが好きだったんだ


もうあの夏は過去の記憶

そんなこと分かっていたはずなのに

もう期待させないで、本当にやめて

夜空で花火がぼやけて散った


甘ったるくて爽やかじゃなくて

色褪せた ただの水なのに

恋の味は消えないままなの?

なんで消したいところが消えないんだろう


花火大会はもう終わったのに

まだ鼓動は止まってくれない

夏の暑さのせいにはできない

炭酸が抜けた砂糖水


「ラムネのガラス玉って取り出せるんだよ」

君が可愛い顔をして言った

何であの時教えてくれなかったの

瓶の底に残ってたラムネ

炭酸が抜けたと思っていたのに

まだ小さな泡が邪魔をする


もう遅いよ 今更言ったって

時間かけて諦めたんだから

きっとラムネはもう飲まないだろう

だって飲んだら思い出しちゃうから


甘ったるくて爽やかじゃなくて

色褪せた ただの水だから

また飲もうなんて思わないし

って思い込もうとしていたけれど


まだ残ってるラムネの香りが

あの夏に引き戻すんだ

さようなら 飲み込んだ「大好き」

炭酸が抜けた砂糖水

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