騒がしく楽しく、はみ出し者たちは生きている（企画から来ました）

どことなく「千と千尋の神隠し」を思い出すような世界観ですね。まあ、あの世界観よりも楽し気で騒がしい世界ですが。個人的に「千と千尋の神隠し」の異界だからこその残酷さのようなものが好きではないので、こちらの世界の方がいいですね。

主人公がヒロインと運命的な出会いを果たして、そこから始まる恋愛劇かとも思いましたがそうではありません。なぜなら、もう主人公は大人だからです。好きだというだけで好意を素直にさらけ出せる子供ではない。社会人経験を経て、自分の感情を隠しすことを覚えてしまった大人。それは成長なのか、退化であるのかなんてことは分かりません。でも、だからこそ主人公はゆっくりとヒロインとの距離を縮めていく。

それは臆病さからと言われるかもしれません。気になる女がいるなら、さっさとベッドに連れ込めなどとアドバイスされるようなヘタレの所業かもしれません。でも、私は主人公のヒロインを見つめる雰囲気が好きですね。誰かを好きだという感情は暴走しがちです。そんな気持ちをぐっと抑えて、自分が知る彼女ではなくて、今そこにいる彼女を尊敬して向き合う。なかなか出来ることじゃありません。それにそんな主人公だからこそたどり着けるラストを作者さんは用意してくれているのだと期待も持てますし（笑）

総じて楽しい作品です。まだまだ、序盤ですし流行りにも乗っていないかもしれません。でも、彼らのようなはみ出し者が楽しく生きている姿はほっこりします。

是非とも、読んでほしい作品ですね。次のエピソードについつい手が伸びていくような静かだけど、魅力にあふれた作品です。お時間あれば、ご一読をお勧めします。