第7話 写真
カイは、植木鉢の下の鍵を使い自宅の中に侵入した。
リビングは整頓されているが、廊下や寝室は物が散乱して薄汚れている。
両親が大事にしていた我が家は荒れ果てていた。
カイは、足音を潜めて階段を上った。
叔父は一階の寝室で寝ているらしい。
グオーーーー、グガーーーー。
叔父の大きないびきが聞こえてくる。
二階は物置になっていた。以前はカイの部屋だったのに、ガラクタで埋め尽くされている。
カイは、奥へ進み、一枚の写真立てを取った。
写真の中で両親とカイが微笑んでいる。当たり前だった幸せな光景がそこにあった。
カイは、写真だけを抜き取り、屋根裏部屋へ向かった。
ギイーーーー。
思ったより大きな音がした。
だが、躊躇っている時間はない。
もう少し、、、、
屋根裏部屋に入り、小さな木箱を探す。
やっと見つけた、その木箱には複雑な文様が彫られていた。
パズルを解くように、木箱の文様を操作して移動させる。
カチ!
音がした。
蓋を開けるとそこには、カードキーが入っていた。
両親の財産が保管されている貸金庫の鍵。
両親の遺産が、カイに戻って来た。。
家はもう諦めよう。だが、これはカイの物だ。
その時、ふとカイは気が付く。
静かだ。
さっきまで聞こえていたはずの音が聞こえない。
叔父のいびき声が、、、、
ギイーーーーーー。
屋根裏部屋のドアが開かれる音がする。
カイは、慌てて、窓から飛び降りた。
猿の脳を元に作成されたオーマプログラムを装着しているカイは、軽々と2階から飛び降り着地する。
後ろから叫び声が聞こえる。
「泥棒だ!俺の物を返せ!絶対に捕まえてやる!」
黒装束でマスクをつけているカイに叔父は気が付いていないみたいだった。
逃げろ!
両親の遺産は取り戻した。
親戚を捨て、家を捨て、社会を捨て逃げるのだ。
カイは、慣れ親しんだ自宅を後にして、闇に紛れ姿を消した。
残された叔父は、2階から叫び声を上げ続けていた。
「帰ってこい。泥棒。絶対に捕まえてやる。全部俺の物だ!」
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