第6話 庭

パチパチパチパチ


拍手がなり、インタビューが終わったようだ。


叔父が、インタビュアーの女性と笑いあう声が聞こえる。


しばらくして、スタッフが外に出てきた。


カメラマンの男性が言う。

「それにしても、酷いな。さっきの人は、甥を売ったって噂だよ。社金返済の為に兄夫婦を殺したらしいともネットに書かれている。だが、人間再利用計画に同意したって公言する親族はほとんどいないからな。何度も人間再利用計画のインタビューを受けているみたいだよ。」


さっき叔父と話していた女性は声を発した。

「ほんとですか?怖いですね。でもその甥だって問題があったのでしょう。」


男性は言った。

「そりゃそうだ。社会脱落者だからね。」


カイは、心の中で叫ぶ。

(違う!俺は悪くない。グロウが急に虐めて来た。それに、家に引き籠っていた期間だって短い。社会脱落者として認定されるような事は無かったはずだ。そういえば両親は、市長と話をすると、、、)


グロウの父親は市長をしていた。当時は普及途上だった人間再利用法律を推進していたはずだ。両親はなぜ死んだ?まさか叔父と市長が共謀して、、、

カイは身震いした。


社会脱落者が排除されるこの狂った社会。だが、一部の人間からしたら、善人だって厄介者だ。両親はカイの事を考えて市長に会いに行ったはずだった。


物思いに沈んでいると、いつの間にか周囲は暗闇に包まれていた。


もう10年以上前の記憶だ。


もうここにはないかもしれない。だけど、もしかしたら、、、


カイは、庭の奥にある鉢植えに近づいた。


その鉢植えは母が一番大事にしていた物だ。毎年コバルトブルーのバラが咲くその鉢植えは、カイの色だからと、丁寧に世話をしていた。


土と茎の残骸だけ残る母の大事な鉢植え。


まるで、社会に捨てられたカイのような鉢植えを、そっと持ち上げた。


鉢植えの下には鍵があった。


なにかあったら、これを使いなさいと両親に言われていた鍵だ。


叔父が庭に興味がなくてよかった。


カイは、鍵を取り、自宅を見上げた。

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