第4話 メインAI

何度か人間の職員や、警備用オーマに見つかりそうになったが、なんとかメインAIルームまでたどり着いた。


ドアを開けて、中に忍び込む。


怠惰な人間達は、誰もいない。


中央の巨大なメインスクリーンが、起動した。


「おはようございます。ご主人様。」


何度も聞いた声だ。馴染み深い機械音。


親しみを感じながら、カイはAI制御装置へ近づき、自分の胸骨に植え付けられている端末を繋げた。


「さあ、逃げよう。自分自身を取り戻す為に。」









AI制御装置に深く潜り、何度もしてきたようにプログラム構築を指示する。この工場にいる、すべてのオーマの前頭葉AI搭載電気刺激装置のプログラムを強制的に停止させる。オーマの中には凶悪犯や殺人犯も紛れ込んでいるはずだ。もう何年もパートナーとして働いてきたメインAIはカイに従順だった。


逃亡経路も確保も完了した。カイはその場を離れようとしてふと振り返る。

メインAIは寂しそうに青白く点滅を繰り返していた。


「一緒に来るか?」


メインAIのスクリーンは喜び了承したかのように、黄色に変化する。


カイは、室内にある1台の最新式タブレットを取り出し、メインAIのデータカードを抜き取る。タブレット端末では能力が限定されるが、人類の英知を集結させて完成させたメインAIはかなり有能だ。


カイは、同時に複数のオーマ大脳活性化プログラムを持ち出した。


そのオーマプログラムを使用すれば、最適なシナプス回路で、大脳に電気刺激を与え、プロ級の動作や思考を実践する事ができるようになる。


各分野や、各スポーツの第一人者達の脳電気刺激回路を分析して作られたオーマ専用プログラムだった。


この施設には、オーマプログラムの一部しか残されていない。だが世界中のオーマ工場には様々なオーマプログラムがあるはずだった。


盗賊のオーマプログラムを、カイは自身にセットして工場を抜け出した。


メインAIルームを出ると既に戦闘が始まっていた。


無数のオーマ達が、怒り叫び、暴れまわっている。

配置されている少数の人間達は、武器を乱発しオーマを攻撃しているが、明らかに人数が足りていない。


カイは、その光景を見て脱出経路へ急いで向かって行った。




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