第2話 オーマの証

カイは、ゆっくりと口から手を離す。その手は茶色に汚れ、無数の傷跡が残っていた。カイのAI搭載前頭葉電気刺激装置は寿命を迎え、破損したのだろう。だが、カイがオーマ化した痕跡は残っている。


カイは、オーマとして過ごしてきた時の記憶を頼りに、カプセルから抜け出す。その場所は数百個のカプセルが積み重なっていた。まるで使い捨ての部品置き場のような冷たい光景。灰色の無機質の物体が積み重なり、微かな無数の息遣いが聞こえてくる。オーマだった時に何度も見てきた光景なはずなのに、カイは急にこみ上げてきた嫌悪感で顔を歪めた。


(この社会は狂っている。俺たちが何をした。全てを奪われ、ぼろ雑巾のように使い捨てられる。一部の人間達の享楽の為に、、、)


カイは壁に設置されている鏡を見る。


カイの瞳の中心は薄っすらと紺色に変化していた。

一見しただけでは、分からない。目を合わさなければ気づかれる事がない微かな変化。だが、確実にオーマだった証でもある。


もう2度と、利用されるつもりは無い。


自由を手に入れ、俺らしさを取り戻してやる。


たとえ世界中の人間から追われる事になったとしても、、、、



世界から見捨てられ、強制的にオーマにさせられたカイの逃亡が始まった。



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