第27話 『なるほど名声とはこういうものか』
――アビスにて。
「よう、ユリウス。 待たせたな」
「やあ、オリシス。 もう交代の時期だったか」
上空から降り立った気配にユリウスは振り返りもせずにそう返した。
ここは時間間隔がおかしくなって困る。彼は自嘲気味に微笑むと前方で戦い続けている仲間に声を掛けるのだ。
「オリシス達が来てくれたぞ。 交代の時間だ」
「おー、やっとかぁ! 地上の食い物が愛おしくて堪らなくなっていた所だったぜ」
その言葉にルウイがケラケラと笑いながらかる軽口を叩いた。
「では、キリを付けるとしよう」
戦闘番をこなしていたディノスはそう宣言をし、大回転を始める。
「『フォトン・ブレード』」
彼の持つ大剣が光を帯びる。そして、それは哀れな犠牲者達を巻き込みながら回転に合わせて眩い光を発しながら伸びるのだ。
「ふんっ!」
気合一線。彼は巨大な光の刃を放つ。
「おー、すげーすげー。 百はいったか?」
「百十三だ」
ディノスは言葉少なく訂正を入れると振り返った。
「では戻らせてもらう。 武具の手入れもしたいしな」
「ああ、お疲れ様」
二人は目も合わせない。オリシスが上げた手を叩いただけだった。
こうして三人は地上へと戻るのだ。
「おい、あの子たちが『ノルン』らしいぜ」
「随分と可愛い子たちだな。 お友達になれんもんかな?」
「おいおい、止めとけ。 ああ見えてヤバいくらい強いらしいぞ。 お前なんかじゃ、ぶっ殺されちまうぞ」
俺たちが冒険者ギルドに入ると、そんな会話が聞こえてきた。
最初の頃は『何か知らんが優遇されてる奴ら』みたいな視線であったが、今や一目置かれる存在となっているようだった。
どうやら『ハミングバード』の奴らが行く先々で俺たちの事を話題にしているそうだ。成程、名声とはこういうものか。
「何か私たち注目されていますね」
「強者に向けられる視線! 悪い気はしないでござるな」
そう言うと満足そうにカスミは鼻を鳴らした。
「まあ、何にせよ。 慢心はしないでおきましょう」
こんな事を言いつつも俺も悪い気はしなかった。
「アンリちゃん、ちょっとこっち来てもらってもいいかな?」
掲示板を見ているとカウンターの奥の方で俺たちを手招きしている人がいた。
俺達は『またかよ』なんて思わずに、名が売れ出したと解釈をして素直にその招きを受け入れたのだ。
「私はここのギルド長を務めさせて貰っているシンと言う。 君たちが『ノルン』の三人で間違いないね?」
俺たちが素直に肯定すると彼は続けた。
「君たちにはある仕事をしてもらう事となった。 今回は依頼ではない。 ギルド命令なので済まないが君たちに拒否権はないものと思って欲しい」
「どの様な命令なんです?」
「ウッホン。 時に君は冒険者と言うものに国民がどういったイメージを持っていると思うかね?」
彼は咳ばらいをすると何か思わせぶりにそう言った。
「えとえと……、切った張ったの商売ですし、『粗暴』とか『粗野』とか、そんな感じですか?」
「そうだね。 冒険者と言えば聞こえはいいが荒くれ者である事は間違いない。 そして、その荒くれ者を統括しているのが冒険者ギルドな訳だ。 我々ギルドは国営の謂わば官吏の様なものであり……」
何だ?やたらと遠回しだな……。
「つまりはイメージがよろしくない、と言うのが国民の感想なのだそうだ。 そこでだね、君たちにイメージアップの手伝いをして欲しいのだよ」
「きゃー、アンリちゃん。 可愛いですぅ」
目にハートを浮かべたシルに抱きしめられる。俺はと言うと目に光なく、今回ばかりはエロい感想もなく彼女のされるがままになっていた。
――何だ、これ?
俺は、いや、俺たちはボディーラインが強調され可愛らしいヒラヒラの付いたドレスの様な服を着せられている。ギルド長にこれに着替えろと命令されたからだ。
「私のはちょっと胸がきついですね……」
「キー、それは嫌味にござるか! 拙者のはブカブカにござる」
シルがそう窮屈そうにするとカスミがヒスを起こして彼女の胸をペシペシと平手で打った。
「ちょっと、カスミさん。 止めてください……」
俺はと言うと正にジャストサイズだった。あらゆる部分がまるで計ったの如く完璧に裁縫されていた。
理由はすぐに分かった。
「ふむ、それはドワーフの名匠によって仕立てられたものだ。 直ぐに手直しをさせよう」
え!? 俺の体を計った理由ってまさかこれか?
俺はこんな風に壮絶な勘違いをするとギルド長の言葉を思い出していた。
彼曰く、上の方の命令で冒険者イメージアップをする様に指示されたそうだ。そこで目を付けたのが最近、名を上げている俺達といった訳だ。
これは俺たちの実力や等級によってではなく、単に美少女オンリーのパーティーだったからだそうな。
まあ、確かに女性の冒険者の数ってのは男のそれに比べると大分、少ないのは事実だ。更には女性のみの、それも若く美しいパーティーとなると『ウチくらいしかないんじゃないか?』ってレベルになってしまうのだ。
つまり、荒くれのイメージを払拭するためにキャンペーンガールをやれと言うのだ。
「はい、ワン、ツー。 ワン、ツー……、ハイ、アンリちゃん、半テンポ遅れたわよ。 もう一度始めからやり直しましょう」
「はい……」
俺は死んだ目でコーチに返事をした。そして、振り付けの最初から踊り始める。
――何だ、これ?
衣装を着て、愛想でも振りまいとけばいいのかと思ったら、歌と踊りのレッスンをさせられた。
もう、あれから何日経ったのだろう?
「いやぁ、今日も良い汗を掻いたでござる」
「カスミちゃんのダンスってキレッキレでカッコいいですよね!」
「いやいや、シル殿の歌もなんとも素晴らしいでござるよ」
二人がノリノリで練習しているのが不思議だった。
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