8.13章 日本軍第二次攻撃隊

 4隻の米護衛空母部隊は、自らの搭載機を送り出した後も、第20任務部隊の主力に向けて距離を詰めていた。もともと220浬(407km)程度に開いていた距離も、米艦隊と日本艦隊が戦っている間にも全速で航行を続けたおかげで80浬(148km)程度に縮まっていた。


 戦艦ワシントンに移乗したスプルーアンス少将は、日本艦隊を攻撃した艦載機の攻撃隊が大きな被害を受けたようだとは聞いていたが、それでも3割くらいは戻ってくるものと考えていた。

「そろそろ、我が軍の攻撃隊が帰投する時間になったな。ブローニング君、護衛空母の艦隊は、どの程度離れているかね?」


「80マイル(129km)ほどの距離です。既に第一次攻撃隊には、無線で西方の母艦に向かうように伝えています。但し、爆撃隊はかなり大きな被害を受けたようです。戦闘機隊も程度の差はありますが、被害は大きな見込みです」


「とにかく帰投した機体をできる限り収容したい。もちろん、もう一度敵に攻撃を仕掛けるつもりはないが、この艦隊にできる限り多くの戦闘機の網をかぶせておきたい。この海域から脱出するまでに、日本の機動部隊はこれからも続けて仕掛けてくるだろう。我々の被害を小さくするためには、護衛の戦闘機が必要だ。日本軍がやってくる前に、上空の戦闘機を1機でも増やしたい」


 1時間ほどして、三航戦と交戦した第一次攻撃隊の戦闘機が、傷つきながらも戻ってきた。西方の護衛空母まで飛行するように指示される。中には力尽きて、駆逐艦のかたわらに着水する機体が出てくる。代わりに護衛空母に残っていた18機のF4Uが、当面の直衛機として第20任務部隊の上空で護衛していた。


 しかし、スプルーアンス少将が望んだ時間の猶予は与えられなかった。帰投する米軍の艦載機を追いかけるように、日本の攻撃隊がやってきたからだ。山口中将が米軍からの攻撃を受ける前に、一航艦から急いで発進させた零戦25機と彗星27機からなる攻撃隊が飛来してきた。


 上空のF4U部隊が、日本編隊を迎撃した。F4Uは、高度4,000m付近において零戦よりも35km/h優速であったが、零戦が高オクタン価の燃料に切り替えることによりその差は15km/hに縮まっていた。零戦はこの高度でも330ノット(611km/h)程度は発揮することができた。他の性能については、急降下はF4Uが優れるが、旋回性能と上昇性能は零戦が優っている。


 戦闘機隊を率いていた白根大尉は、攻撃隊を前進させるために、零戦のF4Uの編隊への突撃を命じた。米軍機の数は20機弱と見えたので、零戦隊が数に勝っていると判断した。もちろん零戦の性能が相手よりも一歩劣っていることは認識している。

「零戦隊、突撃。増槽、噴進弾を投棄。複数機で1機に対応」


 F4Uは上昇して、有利な高度を確保しようとするが、零戦隊も同様な機動を行った。結局、お互いが相手の後ろをとろうとする旋回戦となった。戦闘機同士の戦闘が行われている間に、彗星爆撃隊が米艦隊の上空に侵入していった。


 この時、米艦隊は20ノット程度で進むインディアナとサウスダコタの前後左右を防空巡洋艦と駆逐艦で固め、それから5浬ほど離れて、25ノット程度で航行するワシントンと重巡洋艦群で構成された一群が西方に向かっていた。


 赤城攻撃隊の村田少佐は率いていた彗星攻撃隊に突撃を命令した。

「爆撃隊、突撃開始。雷撃隊は降下開始」


 攻撃隊は、12機の急降下爆撃隊と15機の雷撃隊に編隊を分離した。東西に離れて飛行していた二式艦偵が妨害電波の放射を始めるが、既に妨害電波を経験済みの米艦隊はレーダーの波長を変えてそれに対抗した。


 急降下爆撃隊は、6機毎の2群に分かれて、それぞれインディアナとサウスダコタを狙ったが、防空巡洋艦も戦艦も5インチ砲の砲弾を時限信管に切り替えていた。しかも日本攻撃隊の頼みの綱のレーダーへの電波妨害も波長をシフトすることで回避されていた。猛烈な勢いの対空射撃が始まると、あっという間に3機の彗星が撃墜された。急降下の途中で、更に1機が40mm機関砲に撃墜される。


 対空砲火で4機が撃墜されたが、8機は投弾に成功した。激しい対空砲火を受けたにもかかわらず、彗星隊はインディアナとサウスダコタにそれぞれ1発を命中させた。インディアナの第3砲塔後ろの艦尾に命中した80番の1発は、上甲板の1.5インチ(38mm)装甲を貫通して、135mmと19mmが重ね合わされた船体中央の水平装甲板に斜めに突入して装甲板の途中で爆発した。このためインディアナは舵機室と発電機への被害は免れた。サウスダコタの中央部に命中した1発は2基の両用砲を破壊して、その下の強度甲板上で爆発した。左舷側の両用砲下の弾薬が誘爆したが、船体内の缶室への被害はない。黒い煙がサウスダコタの左舷側から立ち上る。これにより、実質的に左舷の両用砲や機関砲は全損状態になった。


 雷装した彗星の編隊は、3機がアトランタを雷撃して1本を命中させて艦隊から脱落させた。対空砲火がまばらになった隙間を見つけて、村田少佐機を含む12機の雷撃機が戦艦に向けて侵入した。インディアナに向けて7機、サウスダコタに向けて5機が雷撃態勢に入った。対空砲火により途中で3機が撃墜されたが、インディアナに1本を命中させた。船体後部への命中により更に速度が低下してゆく。サウスダコタにも中央部に1本が命中して船体中央の水雷防御区画への浸水が増加した。


 一航艦から発進して、米戦艦部隊よりも更に西方に向けて飛行していた山田大尉の二式艦偵は、電探で艦影をとらえた。


 後席で電探を操作していた野坂一飛曹が山田大尉に報告する。

「西方、50浬(93km)で反応が出ました。複数の艦艇だと思われます」


「了解、位置から考えて友軍の艦艇ではない。確認するぞ」


 西方に飛行するとまもなく空母部隊を発見した。山田大尉は周囲を飛行して、空母の数を確認した。

「後方に米軍の空母が隠れていたぞ。空母4隻、駆逐艦複数、位置と時間をつけて大至急報告してくれ」


 ……


 角田少将は帰ってきた攻撃隊の戦果を確認していた。

「敵の空母は2隻を撃沈したのだな? それに戦艦2隻に損害を与えたということか。それだけの戦果を考えると、ある程度の被害はやむを得ないな」


 宮崎中佐が答える。

「空母は間違いなく、一航艦の部隊と合同で2隻を撃沈しています。帰った搭乗員の話によると、敵艦隊は輪形陣による防御陣形だったとのことです。対空砲弾への妨害電波の効果が非常に大きく、激しく撃たれたにもかかわらず、被害は一定程度におさまったようです」


 河村参謀がやってきた。

「二式艦偵からの報告です。電探に対する電波放射は、米艦が波長を変更して対策されました。また、近接信管への妨害電波はかなり大きな効果がありました。しかし、1隻の戦艦が、妨害のきかない古い高射砲弾に戻して射撃を再開しています。その後は順次、時限式の砲弾へと戻していると思われます。現状では、対空砲は電探射撃が可能で、砲弾は我々と同じ時限式になっていると思われます」


 そこに、宮崎中佐がメモをもってやってきた。

「一航艦からの報告です。一航艦の第二次攻撃隊が敵の戦艦部隊を攻撃しました。2隻に被害を与えましたが、撃沈はできていません。更に、その艦隊の西方に小型の空母4隻からなる別働の部隊を発見しています」


 角田少将が、空母を発見との説明で目を見開いた。

「敵の攻撃隊の数が空母2隻にしては多いなと思っていたが、後方にまだ空母が控えていたとはうかつだったな」


「恐らく後方の空母を発艦した艦載機が、前線の空母で補給を受けて発進することにより、攻撃隊の機数を増やしています。装甲で防御された空母を前方に出して、一度補給させる案は、我々も検討している方法です。後方の空母には、まだ艦載機が残っている可能性があります」


 角田長官がうなずく。

「空母が残っているならば、ミッドウェー攻略部隊が攻撃される恐れがある。被害を恐れて攻撃を控えるわけにはいかん。空母を攻撃目標として攻撃隊を出すぞ。飛行中の我が艦隊の二式艦偵に、戦艦部隊の西側を偵察するように命令してくれ。空母の正確な位置と艦隊編制を知りたい」


「まだ続きがあります。一航艦から再度空母への攻撃隊を出すとのことです。我々にも攻撃隊を出すように要請しています」


「さすが山口さんだ。空母が目の前にいるのに、刀をもとの鞘に納めるはずがない。一緒に攻撃するぞ」


「もう一つ通信文があります。一航艦の通信参謀からです」


 メモを角田長官に渡す。

「なるほど、我々が保有する二式艦偵と合わせて、多数機でもう一度電波放射をやってみようということか。攻撃隊の被害が減るなら願ったりかなったりだ。すぐに艦偵の搭乗員に一航艦からの依頼事項を伝えてくれ」


 まもなく、三航戦は第20任務部隊の護衛空母部隊に向けて、一度米軍を攻撃した機体に補給を行って攻撃隊を発艦させた。


 攻撃隊は、烈風24機、彗星36機から構成された。隼鷹と飛鷹だけでは攻撃機が不足するために、祥鳳と瑞鳳を飛び立った機体も隼鷹と飛鷹が収容して攻撃隊を編制していた。


 ……


 一航艦の第三次と三航戦の第二次攻撃隊が第20任務部隊へと接近した時、米艦隊では補給を済ませて迎撃可能な戦闘機を全て発艦させていた。米空母の上空には24機のF4Uと21機のFJ-1が待ち構えていた。


 一航艦の橘花改が攻撃隊の先頭に出てきた。板谷少佐が突撃を命令すると、橘花改は横陣に広がって17機が一斉にFJ-1の編隊に向けて噴進弾を発射した。しかし、あらかじめジェット戦闘機の飛来を予想していたFJ-1は、ロケット弾ポッドも増槽も搭載していない身軽な形態で待ち構えていた。発射の白煙を認めると、急旋回して回避した。橘花改は噴進弾格納筒を投下すると、回避により乱れたFJ-1編隊に突入していった。たちまち3機のFJ-1が撃墜される。上昇して米軍機の上に抜けると反転して今度は降下攻撃を行う。3機のFJ-1が撃墜されたが、残りの機は橘花改が上昇反転した時点で、急降下して逃走していた。


 橘花改がFJ-1を引き付けたが、攻撃隊の前方を飛行していた烈風もF4Uの編隊を発見していた。


 笹井中尉が無線で中隊に指示する。

「一度上昇して、攻撃する」


 烈風はF4Uが接近する前に、2,000馬力を生かして加速した後にぐんぐん上昇する。F4Uより更に高度を上げてゆく。上空で反転すると降下攻撃に移った。F4Uが攻撃隊に近づく前に先手を打って攻撃する作戦だ。F4Uは後方を飛行する彗星隊を狙おうとする機体と、上空の烈風に対抗しようとする機体に分かれた。


 一部のF4Uは急降下してくる烈風の攻撃を急旋回で回避する。戦闘空域をまっすぐ飛行していたうかつなF4Uが20mm弾に被弾して破片を飛び散らせながら錐もみになる。急旋回で回避したF4Uの後方には、烈風が空戦フラップを使って迫った。至近距離から20mm弾を浴びせて翼から炎が噴き出した。坂井機は、降下攻撃で1機を撃墜した後に、そのままF4U編隊の下方へと抜けた。予想通り、急降下で逃げようとするF4Uが降下してきた。下腹を突き上げるように降下姿勢のF4Uに向けて射撃すると、翼の付け根がばらばらになって落ちてゆく。あっという間に8機のF4Uが烈風に撃墜されて、F4Uの編隊はばらばらだ。


 続いて一航艦の攻撃隊が接近してきた。40機以上の彗星編隊の上空を15機の烈風が護衛している。


 戦闘機の戦いが始まったころ米艦隊周辺を飛行していた二式艦偵は、一航艦の機体が4機と三航戦の機体が3機だった。これら7機の艦偵は編隊を組まず、お互いに距離を離して米艦隊の周囲を取り巻くように飛行していた。


 森田一飛曹が後席から田中上飛曹に報告する。

「指示が出ました。電波放射を開始します」


 同じころ中島飛曹長の二式艦偵も送信機のスイッチを入れていた。

「命令が来た。電波の放射を開始する。受信機には6つの輝線が出ているが、今度はこちらが7機なんだ。それぞれが3波長ずつ電波放射すれば、21種類を妨害できるぞ。米軍はどこまで周波数を変えられるかな。今度は向こうが困る番だ」


 ……


 艦隊のMk.4レーダーに一斉にノイズが現れた。各艦の艦長は想定されていた状況だと考えて、異なる波長への切り替えを行った。しかし、波長を切り替えても、前回の戦いとは異なりノイズがなくならない。


 ワシントンのCICでは、レーダー担当士官が、おかしいと言いながらあわて始めた。すぐに艦長に報告が上がる。ベンソン艦長が担当士官と長々と話している様子を見て、スプルーアンス少将が話しかける。

「なにが起こっているかね?」


「敵からの電波放射で、Mk.4が妨害を受けています。波長をいろいろ切り替えているのですが、複数の周波数が妨害されているようでレーダーが回復しません」


 すぐに参謀の方を振り返る。

「ムーア大佐、敵も新手を出してきたぞ。高射砲射撃は光学照準に切り替えろ。艦隊の各艦にも通知をしてくれ。レーダーがダメならあわてずに照準を切り替えろ」


 となりのベンソン艦長もそれを聞いていて、レーダーの光学照準への切り替えを砲術長と担当士官に指示した。既に、第20任務部隊の各艦は近接信管を封じられたため、全て時限式の旧来の高角砲弾に切り替えていた。それに加えて高角砲の管制もレーダーから目視照準に切り替えた。これで、実質的に1年以上昔の対空射撃法に戻ったことになる。


 この時、米艦隊は、縦列になった護衛空母シェナンゴとサンディーを護衛するために戦艦ワシントンが空母の前方を航行していた。空母の北側を重巡オーガスタ、南側を軽巡ナッシュビルが守っている。更にその周囲を駆逐艦が警戒していた。


 護衛空母のサンガモン、スワニーには、前方を防空巡洋艦サンディエゴ、北側に重巡ウィチタ、南側をルイスビルと軽巡洋艦ホノルルと駆逐艦が護衛していた。


 爆弾や魚雷で既に被害を受けて、速度が出ない艦艇は空母とは、まだ合流できていない。アトランタとサウスダコタ、インディアナは防空巡洋艦サンフアンに護衛されて、護衛空母群よりも50浬(93km)東方を西に向かって約15ノットで航行していた。


 米空母が上空から視認できるようになると、三航戦攻撃隊の阿部大尉は突撃を指示した。それを聞いて、三航戦の烈風隊から西沢飛曹長を先頭にした6機の烈風が抜け出した。ぐんぐん加速すると急降下を開始した。戦艦ワシントンの高角砲が射撃を開始したが、烈風は海面ぎりぎりまで降下していた。


 噴進弾を備えた6機の烈風は横一線になって海面上を進んでいった。目標は護衛空母のシェナンゴとサンティーを擁している一群だ。ワシントンの高角砲は思いきり俯角をつけて射撃するが、高射砲弾は烈風よりもやや高い所で爆発している。その時、3本の巨大な水柱が烈風の前に立ちのぼった。たちまち1機の烈風がそれに巻き込まれて墜落する。ワシントンが第3砲塔の主砲を水面に向けて撃ったのだ。しかし主砲は1度の射撃だけで連射できない。続いて40mm機関砲が射撃を開始した。烈風は機動力を生かして左右に機体を滑らせて、機関砲の狙いを外す。5機の烈風は最後に機首をわずかに上に向けて、噴進弾をオーガスタとワシントンに向けて発射した。右舷の低い位置から発射されたために噴進弾は横方向から着弾した。オーガスタの中央付近に8発の100mm噴進弾が命中して、煙突の周りで火災が発生した。このため右舷側の2門の高角砲が射撃不能となる。


 ワシントンを狙った100mm噴進弾は、山型になった上構の艦橋を中心として命中した。右舷の両用砲のうちの2基が破壊された。2基の40mm高射砲も被害を受けて射撃不能となる。続いて、上部艦橋に命中した噴進弾が固体燃料による火災を発生させた。噴進弾を発射した西沢機と太田機はそのまま直進して、ワシントンの艦橋に向けて機銃を連射しながら突っ込んできた。40mm高射砲弾が反撃するが巧妙に機体を滑らせて直撃を回避した。そのまま上昇して艦橋の上を通り過ぎる。この銃撃により艦橋脇の40mm高射砲が破壊された。なによりも痛いのは、20mm弾の命中により艦橋上のレーダーアンテナが破壊されたことだ。レーダーによる主砲の射撃が不可能になった。


 その時、上空から三航戦の17機の彗星が急降下を開始した。あわててワシントンとオーガスタ、それに空母シェナンゴ、サンティーの対空砲が上空への射撃を開始した。しかし、頼みのワシントンは砲火が2割減となって、近接信管も使えず、射撃管制もできないため、日本機への狙いも不正確だ。それでも急降下の途中で1機を撃墜した。


 ワシントンには3機が80番4号を投下して、1発を命中させた。投下直後に1機の彗星が40mm機関砲の直撃弾を受けてバラバラになる。後部の第3砲塔の直後に命中した爆弾は上甲板の1.45インチ(37mm)装甲板を貫通して、下部の3.6インチ(91mm)装甲と1.4インチ(36mm)の合わせ装甲を貫通して後部機関室に達した。機関室内での爆発により推進力が半減する。後部甲板が盛り上がって、甲板上の破口から激しく煙が吹きあがる。


 護衛空母のシェナンゴには7機が投弾して、2発を船体の後部と中央部に命中させた。タンカーを空母に改造した船体は全く装甲板で防御されていない。80番は飛行甲板から水平隔壁を次々に破って船底も貫通して水中で爆発した。2ヶ所の艦底に大きな亀裂が発生して浸水が始まる。護衛空母サンティーには6機が爆弾を投下して1発が命中した。これも艦底に亀裂を発生させた。


 ほぼ同時に19機の彗星が低空から雷撃態勢に入った。対空砲火により1機が撃墜されたが、18機が雷撃を成功させた。シェナンゴに対しては9機が雷撃して、3本が次々に命中した。サンティーにも9機が魚雷を投下して、4本を命中させた。2隻の護衛空母は、爆弾と魚雷による大量の浸水を防ぐことができなくなって、傾きながら沈んでいった。


 一航艦の21機の彗星部隊は、ほぼ同時期に護衛空母のサンガモンとスワニーを中心とした艦隊への攻撃を開始していた。


 最初に最も激しく対空砲を撃ってくる防空巡洋艦サンディエゴに対して、6機が急降下を開始した。降下途中で5インチ砲と40mm機関砲により2機が撃墜されたが、4機が投弾した。船体の中央と後部にそれぞれ1発が命中した。80番爆弾は1.25インチ(32mm)の水平装甲板をやすやすと破ると、一気に船体下部まで貫通して船底で爆発した。大きな亀裂が船底に発生して浸水が始まる。浸水は軽巡洋艦の限界をすぐに超えて、たちまち船体が傾き始める。


 続いて、急降下爆撃機の7機がサンガモンを狙って2発を命中させた。8機がスワニーを狙って3発を命中させた。いずれの爆弾も船底近くで爆発して、船体底面に生じた亀裂から猛烈な浸水が始まった。


 爆撃と同時に20機が雷撃態勢に入っていた。1機が対空砲に撃墜されたが、9機がサンガモンを雷撃して3本が命中した。続いて、12機がスワニーを雷撃して4本が命中した。2隻の護衛空母は、限界以上の爆弾と魚雷の被害により大量の浸水が発生して、あっという間に沈んでいった。


 4隻の空母が沈んでしまうと、日本軍攻撃隊は目的を達成したことを確認して去っていった。

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