4.6章 日本軍 第二次攻撃隊
第一次攻撃隊より30分遅れて、第二次攻撃隊が突撃を開始した。
インドミタブルは既に横転した船体が半分以上沈没しつつあった。プリンス・オブ・ウェールズは既に海中に姿を没していた。海面に広がった油の輪がそこで大型艦が沈んだことを示していた。海上で停止していたフォーミダブルは左舷の浸水を受けて傾斜していた。3機の艦攻が左舷側に接近して、停止した目標に向けて魚雷を発射すると3本の魚雷が次々に命中した。フォーミダブルの傾斜は急速に増加していってやがて海中に没していった。
一方、浸水により艦首を沈めて15ノットで航行していたレパルスには、3機の零戦が艦橋を狙って、噴進弾で攻撃した。多数の噴進弾が艦橋を直撃したが司令塔内の艦長は無事だった。しかし噴進弾の燃料による火災と爆煙のために一時的に艦の操艦が一時的にできなくなった。
まっすぐ動き続けるレパルスを狙って、6機の急降下爆撃機と9機の艦攻が同時攻撃を仕掛けた。
飛龍爆撃隊の6機の彗星は、4号爆弾の投下訓練は必ずしも充分ではなかったので、必中を期してギリギリの高度まで下げて爆弾を投下した。1発がB砲塔の天蓋に命中した。80番4号爆弾が4.25インチ(108mm)の装甲板を貫通した。弾体が砲塔内に侵入するとそのまま砲塔の底面を貫通して、揚弾筒の横で爆発した。しかし、主砲を射撃するような戦いではなかったために、砲塔内には炸薬や弾頭などの誘爆の可能性のある危険物はなかった。砲塔の下部で爆弾が爆発すると、爆圧でB砲塔は空中に一度持ち上げられ、舷側から落ちそうな位置に再び落下した。砲塔の下部の前部主砲弾薬庫には直ちに注水が行われた。
船体の前部に命中したもう1発の80番4号爆弾は3インチ(76mm)の水平装甲を貫通して、弾体はほぼ艦底の近くまで隔壁を破った。船体の下部で爆発した弾体は前部船体の底面に10メートル以上の長さの亀裂を作って防ぎようのない多量の浸水を発生させた。更にもう1発の80番爆弾が右舷側の船体中央部に命中して、高角砲の弾薬を誘爆させた。爆発の炎と煙が垂直に巻き上がり、右舷側の船体上部に煙突がすっぽり入るような穴が開口してしまった。
レパルスの艦首の浸水は既に危険水位に達していたが、瑞鶴艦攻隊の嶋崎中佐の9機の97式艦攻が突入を開始した。嶋崎中佐は上空からレパルスの右舷の喫水が下がっていることに気づいて中隊に指示する。
「右舷がやや下がって見える。右舷側から攻撃する」
艦攻は右舷側から9機が侵入を開始した。右舷に3発の反跳爆弾と6本の魚雷が投下された。80番の反跳爆弾は1発が舷側に命中した。水面で飛び跳ねた爆弾は最も高いところから斜めに落ちてきてレパルスの舷側に命中した。80番爆弾は3インチ水平装甲に命中したが、爆弾はそれを斜め下方に貫通した。更に船体内部の垂直隔壁を次々と斜め下方に向けて破っていって、船底に近づいたところで爆発した。ここでも爆圧により船底に亀裂が発生して、水圧により多量の浸水が始まる。右舷に投下された6本の魚雷は、そのうち4本が船体中央と後部に命中して浸水が始まる。右舷のいたるところで大量の浸水が発生して、水量はレパルスの限界値をはるかに超えていた。嶋崎中佐の狙い通り右舷側の傾斜がどんどん増して、一気に横転した。横転後はしばらく海上に浮かんでいたが、そのまま横倒しになって沈んでいった。
全ての空母と戦艦の命運が尽きようとしていたころ、まだ爆弾や魚雷を搭載した第二次攻撃隊の急降下爆撃機や97式艦攻はそれぞれ30機以上残っていた。また噴進弾を発射していない零戦も10機以上が飛行していた。
まず、上空から見て戦艦に次ぐ大きな目標であった重巡洋艦のコーンウォールとドーセットシャーが狙われた。コーンウォールには、6機の2個小隊の零戦が急降下してゆく。この巡洋艦の対空砲火は4インチ(10.2cm)の連装高角砲が4基に強化されていた。加えて、8連装のポンポン砲が密度の高い火網を構成している。高角砲の至近弾で1機の零戦が炎を噴いて落ちてゆく。しかし、残った零戦から110発の噴進弾が発射されると艦の中央部から後部にかけて約半数の噴進弾が命中して、ほとんどの対空火砲は沈黙してしまう。
艦の中央部に搭載していたウォーラス飛行艇に直撃して黒い煙を上げて炎上する。そのころ上空の3機の彗星と3機の99式艦爆は既に、急降下体制に入っていた。もはや有効な対空砲火を上空に向けられないコーンウォールに3発の爆弾が直撃した。2発の80番4号爆弾は重巡洋艦の1.5インチ(38mm)水平装甲を簡単に貫通して船体を抜けて水中で爆発した。爆発の衝撃波が喫水線より下側の船体のいたるところに亀裂を発生させた。99式艦爆の投下した50番4号爆弾は、1発が機関室の床まで到達して爆発した。ほぼ同時に3機の97式艦攻が接近して雷撃を行った。コーンウォールは、まだ機関が破壊される直前の全速の余力で減速しつつ走っていたために、1発の魚雷のみが命中した。魚雷による舷側からの浸水と、800kg爆弾による亀裂からの浸水が合わさって、この巡洋艦が海面に浮かんでいることは不可能となってしまった。
同じころ、ドーセットシャーも攻撃されていた。4基の連装高角砲は全力で射撃するが、それを回避した3機の零戦が噴進弾を発射すると艦橋と煙突の周りに着弾した。半数の対空砲が無力化される。6機の急降下爆撃により3発が命中した。更に4機の艦攻が1発の80番反跳爆弾と1本の魚雷を命中させた。次々と命中する爆弾と魚雷により、この艦の浸水を防ぐための努力を開始する以前に、沈没が始まった。
軽巡洋艦のエメラルドとエンタープライズも重巡洋艦とほぼ同時に急降下爆撃と艦攻により攻撃を受けた。エメラルドには50番爆弾1発が命中した。艦の前半が破壊されたこの軽巡は大きく速度が落ちて艦の前半部が沈み込んだが、まだ低速では航行が可能でアッズ環礁に向けて避難を始めた。日本軍機が去ってゆくと基地に帰り着く前に連絡のために搭載機を射出した。エンタープライズには、50番爆弾2発と80番反跳爆弾1発が命中した。舷側から突入した80番反跳爆弾が艦内の隔壁を破ってほぼ船体の中央部で爆発した。そのため底部のキールが破壊され、船体が逆への字型に屈曲してあっという間に沈んでいった。
まだ攻撃をしないで、残っていた99式艦爆と97式艦攻は、周囲の目標を探していたが、英艦隊の最後尾をアッズ環礁に向けて航行していた空母ハーミーズを発見した。3機の艦爆が急降下を始める。3基の単装高角砲で反撃するが、有効な射撃とならない。99式艦爆が投下した爆弾は、2発が命中して、50番爆弾はまともな装甲板のない空母の隔壁を次々と破って艦内で爆発した。直ぐに機関が被害を受けて10ノット以下に速度が落ちた。続けて、9機の97艦攻が低空に降りてきた。速度が落ちた空母を狙って、2発の反跳爆弾と7本の魚雷が投下された。1発の反跳爆弾が命中して艦内で800kgの爆弾が爆発すると、爆風で飛行甲板が大きく盛り上がってしまう。船体に亀裂が発生して浸水が始まった。一足遅れて航走してきた3本の魚雷が左舷側に命中した。艦首から艦尾までの間の3カ所に生じた大きな破孔により浸水が一気に増加して、ハーミーズは左舷に横転しながら沈没していった。
嶋崎中佐は、上空から英軍の大型艦が全て撃沈されたことを確認すると、一航艦司令部に戦果を報告した。もちろん、次に攻撃すべき戦艦がアッズ環礁にまだ残っているために、こちらの艦隊への攻撃はもはや充分だと教えるためだ。
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