第9話 期末試験 上
「―――…あ、あと、期末試験。もうすぐだから気をつけて。」
先生がその
き、
……まぁ、うん。
今までの総ざらいをやれば私はまぁ赤点はとらないだろう。
問題は………………。
と、思い隣の席を見ると、まこっちゃんが信じられないとでも言いたげな顔をしていた。まこっちゃん、勉強嫌いだもんな〜。
………瀬名さんたちに頼もうかな……。
瀬名さん、とは、超進学校に通う、二年年上の友達なんだけど、瀬名さんは、人気ZeTuberグループ、「
瀬名さんは、頭良し、顔良し、性格良し、家柄良しの完璧超人なので、まこっちゃんに勉強を教えるにはうってつけの人物といえよう。
「朱歌〜!! ヘルプミー!」
案の定、マネージャーの仕事が終わり、家に帰るとまこっちゃんが泣きついてきた。
「もー。しょうがないな〜。」
わたしはそう言いながら携帯で瀬名さんに連絡を取る。
「もしもし、瀬名さん?」
『もしもし。どうしたの、朱歌ちゃん。……あれ、もしかして、
「………ご明察です、瀬名さん。まこっちゃん――真ちゃんが泣きついてきまして……勉強を一緒に教えてもらえないかな、なんて思いまして…」
『あはは、真ちゃんは勉強苦手だもんねー。
うん。いいよ。いつがいい?』
「! ありがとうございます! 瀬名さんが空いている時で大丈夫ですよ。日中は特に用事ないですし。」
『ありがとう。………じゃあ、
「はい。
………それでいいね、まこっちゃん。」
耳を近づけて聞いていたまこっちゃんにそう聞く。
「その日はわたしもなにもないから大丈夫だよ。というか、用事あってもあけるし。」
『うん。それじゃあ、二十日の十時、場所は……
レン、二十日の十時
少し声が遠くなった瀬名さんが、
すると、聞き覚えのある声が瀬名さんの方から聞こえてくる。
『別にいいよ。他のメンバーにも言っとくし。』
『ありがとう!
………と、いうことで、
「「大丈夫です!」」
『じゃあ、またね。』
「はい、また。」
×××
「うっひゃぁ〜。何度か見てるけど、相変わらずめっちゃ豪華な……。」
「あっははは。ね。規模が違うよ……って、元「アウルロス」だったまこっちゃんに言われてもね。」
「いや、うちんとこは守銭奴が多くてね。設備は最高だけど、外観とかはあんまり気にしてない人が多かったかな。」
まこっちゃんは、懐かしそうに目を細める。
私たちが中学二年生になった時、「アウルロス」は解散。
まこっちゃんは、まだ二年目だったにもかかわらず、引退を余儀なくされた。
「……私がトランスジェンダーだってこと、最初から最後まで言えなかったなぁ…」
ぽつん、と、そうこぼすまこっちゃん。
そう。まこっちゃんはトランスジェンダー。
まこっちゃんの体の、社会的な性別は男。でも、まこっちゃんの心の性別は、女。
「アウルロス」の人たちに、本当は男で、トランスジェンダーだと、うちあけられなかったことを、今でも後悔しているみたいだった。
「あれ、二人とも! はやいね! おはよう!」
二人して黙っていると、元気な声が玄関の方から聞こえてきた。
「おい、「
そのナコさんに、「おはようじゃなくてこんにちはだろ。」と言ったのは、毛先が少し金色に染められている、不良のような格好――そうと言ったら悪いけど――の「
どちらも、「
「っちょっ、二人とも! ごめんね、朱歌ちゃん、真ちゃん。二人も点数ギリギリになりそうで、急遽参加することになっちゃったんだけど、大丈夫かな……?」
慌てながらそう言ってきたのは瀬名さん。
「あ、はい。大丈夫ですよ。」
やっぱりここのグループ、仲良いなー。
そんなことを思いながら玄関に入ろうとすると、「あ。」と、後ろから声が聞こえた。
後ろに振り向くとそこには、顔見知りの二人の男女がいた。
「あれ?
「お、おひさ〜、まこ、朱歌。」
驚いた表情をしながら言った黒髪の男性に、気まずげに言う灰色っぽい(本人は黒だと主張している)髪の同い年くらいの少女。
男性の方は、「
そして、少女の方は、私たちの幼馴染で、一個上の、
なんでそんな二人がここに?
「あー! わかったー! もしかして、
「ちょっ、ナコ! 失礼でしょ!」
慌てて瀬名さんがそう言うが、もう時すでに遅し。
ああああ。大丈夫かな? かなり目が死んでるけど。
「もう、ナコ! ………美玲ちゃん、ごめんね。ナコがデリカシーかないこと言って。」
「あははは、別にいーですよー。だって、事実ですしー。」
あわわ、既に手遅れだったか…目がもう死んでるよ……。大丈夫かな?
「ナコ、お前も点数ギリギリのバカなのにそんなこと言う筋合いないだろ。」
レンさんが冷静にそういうと、美玲もやっと立ち直ったようで、ゆっくりと俯いていた顔を上げる。
よし、もう一踏ん張りだ!
そう思った私は、美玲の手を掴んで立ち上がらせる。
「ほら、勉強するんでしょ? 早く立ち上がって。ほら。」
「はぁーい。」
……ははは、こんなんで大丈夫かなぁ〜?
×××
「っ……っ! ふっ、ふぅ〜。」
疲れた。このダンス、激しすぎんだろ……
「……………お疲れ。」
………
「……おう。」
コイツ、本当に同じように踊ってたよな、俺の横で。……俺にはなぜかあまり疲れていないように見えていた。
「今日は居ないんだね。」
彗がチラリと周りを見て、少し落胆したかのような顔をする。
「誰が?」
え? とでもいうように目を見開いたか、と思ったら次の瞬間、はぁ〜、と、大きなため息をつかれた。
「朱歌ちゃんだよ、朱歌ちゃん。」
朱歌? ああ、青海のことか。ってことは、なんだ? コイツ青海のことであんな顔をしていたのか? なんで。
「面白いのになー。」
「……オマエ本当に面白いもん以外興味ないよな……。というか青海がその面白いものに入るってこと自体が俺には不思議だが。」
面白いものにしか興味がない。コイツは、そういう奴だ。逆に、面白いものだったらそれこそストーカーのように探究する。すごいなと、そこ(継続力・集中力)は尊敬するが、やりすぎな時もあるから時々制御するのには疲れる。
「星牙、それ本当に言ってる? あのスキルを見て? …圧倒的だっただろう。面白いと思わないか?」
「………あのスキルはすごいとは思う。でも、面白いとは思わない。あいつの努力だろ。」
あー、くそっ、言ってて恥ずかしくなってきたじゃねーか。
「ふぅ〜ん?」
「ニヤニヤすんな!」
思わず彗の頭を小突く。
こいつ…俺が恥ずかしいのがわかってて言ってやがる。
こういうところがムカつくんだよ………!
「それより星牙、期末試験。大丈夫?」
「う………っ!」
こいつ、自分がちょっと頭がいいからって……!
「主席の子にでも教えてもらったら〜?」
「主席……?」
彗がふっ、と笑う。
「朱歌ちゃんだよ。」
「え。」
×××
「「朱歌〜!!」」
あの後、家に上がって、みんなで一緒に勉強することになった。二階で少し勉強していると、すぐにまこっちゃんと美玲が泣きついてきた。
「何?」
「わかんない。」
「これ、どんな暗号なのさ………」
まこっちゃんは数学、美玲は英語なのだが………暗号って。
別に暗号でもなんでもないと思うんだけど……
「あー、これね……」
「えと、これはね、この――」
と、わたしと瀬名さん、レンさんとで教えていく。
だが、ナコさん、ウルフさんは流石に学年が違うので、瀬名さんとレンさんに任せているので、二人の負担が増えている。
幸い、美玲もまこっちゃんも二人とも、基礎ができているからよかったわ。
―――たららたららたらららん
「ん?」
「なにかな?」
―――たららたららたらららん
携帯の着信音のようだった。
「あー、ごめんなさい。私と朱歌、抜けないと。」
「あれ、もうそんな時間?」
時が経つのは早い。
もう
やばいです。 おまめあずき @400725AZ
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