図書館というイレモノ 🏢

上月くるを

図書館というイレモノ 🏢




 お店を閉じる前、図書館が一番のライバルで……率直に言えば、大きらいだった。

 民間書店が懸命に販売しているのに、税金で購入した本を無料で読ませるなんて。


 おかげで本は身銭をきって買うものではないと信じこんでいる人も少なくなくて、そういう輩は、たまに書店を訪れても、立ち読みを当然の権利みたいに思っている。


 稀少な郷土史とか専門書を提供するのが、本来の図書館の在り方のはずでしょう。

 なのに、ただ読み癖がついた一部市民の要望で、新刊書籍を百冊も大人買いする。


 わずかな手数料の日銭稼ぎで成り立つ書店は、どうやって経営していけばいいの。

 お役所が先頭きって、法人税を納める民間書店をイジメてどうすんのよ、ったく。



 

      👛




 で、どうにもこうにもまわらなくなって、当市で一番の老舗として一等地にビルを構えていた店を閉じたんだけどね、その後も仇敵の図書館へは一度も行かなかった。


 これはね、意地とかじゃなくて、地域文化の一端を担って来た者のプライドなの。

 版元・著者・書店の連携で出版される本には相応の対価が払われるべきでしょう。


 そんな当たり前が当たり前でなくなっている世の中が、真っ当でいるはずがない。

 案の定あちこちに目立ち始めた歪み、さらなる亀裂を深めなければいいけど……。




      📚




 曾祖父が創業した書店を閉じたら人間的尊厳まで奪われたので、たいていのことは何でもよくなったけど、こと図書館に関してはネガティブシンキングのままだった。


 そんなとき、ふとしたご縁から、毛色の変わった小説を読む機会を得たんだよね。

 その名も『夢見る帝国図書館』という、ファンタジックで堅苦しい(笑)書名の。


 図書館という字を見ただけで両手を突っぱねたいような忌避感があったんだけど、映画『小さいおうち』の中島京子さんのご著書だったから、ちょっと覗いてみたの。


 そしたら、折々に挟まれている作中作話がね、図書館視点の近代史みたいになっていて、へえ、日本の図書館はこうして歩んで来たんだ~って、素直に得心できたの。


 それからよね、ニクラシイ(笑)図書館への偏見が少しずつ薄らいでいったのは。

 第一、選本センスは館長しだい、イレモノである図書館自体に罪はないんだしね。


 で、昨今は歩み寄り、全国&地方全紙そろっている新聞の閲覧に利用しているの。

 だけど、本はやっぱり身銭主義の基本スタンスは、どこまでもくずせないけどね。




      📖




 あ、そうそう、国立国会図書館は「日本国内で出版された本は、商業・自費の区別なく必ず献呈する義務がある日本唯一の法定納本図書館」という事実は承知していたけど、帝国図書館→国立図書館→国立国会図書館併合という変遷は初めて知ったし、その国会図書館を、あの国会議事堂と初めて連携させて考えたことも同書のおかげ。


 


 

 

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