ヘッドライト・テールライト

@yama1363

第1話 日常

「100万円って1円玉だと何枚?」

そんなくだらない話を地元のチェーン店の喫茶店で話す。

「まず一万円で一万枚だから百万枚やろ!」と、ショウが言う。すかさず、タケトが続ける。

「じゃあ100億円だと何枚?」

これには今までうるさかった4人が一斉に黙る。

しばらくの沈黙の後、自信満々にリュウが言う。

「100億万枚!!」

「100億万枚って何枚やねん!」

そんな、周りから見れば何一つ実のない話題だが話している本人達は至って真剣なのである。

日曜日の夜20時、22歳の男4人で喫茶店でコーヒーを飲みながらこんなバカ話をするのが日常だった。

あんなに気になっていた1円玉変換話も誰か一人がまた違う話をすれば話題は自然にその話になり、誰も1円玉変換の事など微塵も覚えていない。

店員さんのラストオーダーですの声で、ハッと我にかえりまた今週末も下らない話で休みが終わったとため息をつきながら各々帰路に着く。


まだこの時はこの後に起こる悲劇を誰もが予想していなかっただろう。そう、あの日までは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヘッドライト・テールライト @yama1363

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ