第23話 開戦の予感……

「おい、聞いたか? 魔王様の事」


「あぁ……」


「とうとう、亡くなってしまったのね」


「歳だとよ……」


「これからどうなってしまうのかしら?」


魔王死去! この噂は立ちどころに広まっていき、それはサンディの所属するギルドにおいても例外ではなかった。


「サンディ? 今朝の新聞は読んだかしら?」


「はい……」


「残念ね……魔族には珍しい穏健派の方だったのに」 


「そうです……あの方のおかげで今の平和が築かれておりますしね」


「こんにちはーーー遊びに来ましたよお姉様!」


「あら! マキ来ていたの?」


「マキちゃん、いらっしゃい」


「こんにちはキャシーさん、ところでお二人とも知ってます? 魔王様が亡くなった話」


「えぇ……今ちょうどその話をしていた所よ……本当に残念ですね」


「でも、感傷に浸ってる場合でもありませんよ」


「え?」


「後継者争いですよ、魔王国の中には魔王様のやり方を良く思っていない魔族もいますしね」


「そうね〜……」


「特に、長兄のダモクレス! 噂では魔王様が生きている時から反乱軍を募っていたという過激派な奴みたいですしね」


「マキちゃん、随分と詳しいのね」


「外での宣教活動が多いので」


「なるほどね」


「だけど私はもう一人の継承者候補のシーク様がなってくれたら、グフフフ……」


「ど、どうしたの? いきなり変な笑い方をして?」


「す、すみません……いや〜シーク様は超イケメンで誰にでも優しっくって、頼りがいがあって……」


「あ〜そういう事ね……」


──魔王国


──ポク……ポク……ポク……


「な〜んまいだ〜……な〜んまいだ〜」


「うぅ……親父……」


「お兄様……お気を確かに……」


「あぁ……分かってる……ありがとうミサ」


「私は……是非、次の魔王はお兄様に取ってもらいたいのです」


「……やめないかミサ……こんな時に……」


「いいえ……お兄様、もう継承者争いはすでに始まっているのです」


「……」


「お兄様……哀しいのは分かります、しかし今は、こういった場でこそ皆に気丈な振る舞いを示さなければならないのです」


(そう……お父様のご意志を継承できるのは、シークお兄様しかいない……絶対にダモクレスお兄様に譲ってはいけないのです)


「わ、分かったよミサ……辛いけど……今が踏ん張り時だ」


「その通りです」


(フフフ……やっと親父も死んだか……魔王とは言っても歳には勝てなかったという事だ……遂に、遂にやってきたのだ! このダモクレス様の時代がな……ん? ミサめ……シークのを担ぎ上げようというのだな? クックク……馬鹿め! 今から準備しても遅いのだ!)


「ハーハッハハハハハハハ!!!」


「!?」


「兄さん! こんな時に何がおかしいというんですか!」


「クックク……愚弟よ……やっと俺様の時代が来たのだ! 笑わずにはいられぬだろう! ハッハハハハハハハ」


「何!」


「お兄様!」


「え、え〜それではですね……ご親族の方からご焼香をお願い致します」


「「え? あ……う、うん」」


その後、魔王の通夜はしめやかに執り行わた。

そして、四十九日の三日後に魔王国の中で次期魔王の継承者選挙が執り行われる事となった。

そして、ダモクレスは自分を支持する反魔王派を集め決起集会を開催していた。


「諸君! 遂にこの時が来た!」


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


「先代魔王の功績……確かに認めざる部分もあるかも知れぬ……先代魔王の方針それは、本来! 魔族としての生き方! その真逆の考え方であった! それにより確かに魔王国の繁栄を築き上げた事は事実であろう……しかしだ! 我々は魔族なのである!」


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


「そうだ! そうだ!」


「他国への略奪! 服従! 侵攻! それこそが我ら魔族の伝統! 文化ではないだろうか!」


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


こうして、ダモクレス派閥は一気に魔王継承への士気が高まっていった。


──シーク陣営


シークは妹のミサと共に魔王支持派の側近達を集めて会議を開いていた。


「皆さん是非お力をお貸し下さい」


「シーク様、不安な気持ちは良く分かりますが何も心配は入りません、魔王国の国民は約7割近くは亡くなられた魔王様の政治を支持していました、そして、その魔王様のご意志を継ぐことが出来るのはダモクレス様ではなく、シーク様だというのは誰の目にも明らかであります」 


「し、しかしこのまま何もしないという訳には」


「大丈夫です……シーク様はお兄様と骨肉の争いをしたいのですか?」


「い、いや……私もどんな兄であっても兄は兄ですできれば平和的に……」


「そうでしょう? このままでも、きっとシーク様の次期魔王継承は揺るぎませんハッハハハ」  


「し、しかし兄はどんな手段にでるか……!」


──バーン


その時、勢い良く扉が開かれた。


「おーこれはこれは皆お揃いでフフフ……早い」  


「に、兄さん!? 何故ここに!?」 


「何故って? 報連相は大事じゃないか?」  


「い、一体なんの事だ!?」


「実はな親父の部屋を整理していたら、こんなものが出てきたのでな」


ダモクレスは一枚の紙切れをそこにいた者達に、これみよがしに見せつけてきた。


「な、なんだい? それは」


「クックク……遺言書だよ」


「ゆ、遺言書!?」


「この遺言書には面白い事が書いてあってな〜ゴホンえ〜現魔王であるワルドーの死後、次期魔王の権限は長兄ダモクレスに譲る事にする西暦521年4月9日だとよ」


「そ、そんなバカな!?」


「ありえません! だってお父様は、私に次の魔王はシークお兄様に継がせたいと……」


「はっ! そんなもん知るか!」


「そ、そんな急に出されても……ん? これは父さんの筆跡ではない! こんな出鱈目な字で法務省が認める訳……」


「だったら今から法務大臣を呼んでやろうか?」


「え!?」


──ギィィィィィィィ


「!? コブラ大臣!」


シークの目に飛び込んできたのはダモクレスの手下に首元をナイフで突きつけられ震えながら入ってきた、コブラ大臣だった。


「み……認めます……その遺言書は先代魔王様のご意志であります!!!」


「ダモクレスーーーーー!!!」


──ゴーラ国防衛庁


「はぁ〜大変な事になったな……キーユよ」


「そうですね」


「ここゴーラ国及び周辺諸国は、ダモクレス率いる魔王軍に対抗できる兵力はとても持ち合わせておらん」


「…………」


「皆、この平和が永遠に続くと思ってしまった」


「そうですね……」


「皆その幻影を見ていたおかげで、すっかり牙を抜かれてしまったからなぁ……」


「……長官殿! それなのですが……魔王軍にぶつけてみたい者達がいます」


「……そ、そんな者がいるのかね」


「……外部の人間というのが少々心苦しいのですが」


「……外部の人間?」

















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