第14話 再び異世界へ!
「け、拳さん! チョット……ヤダどうしちゃったんですか?」
「あ〜〜〜良かった〜〜〜」
「? 良かった?」
「ワシの頭は正常じゃったんじゃ〜」
「ど、どう言う事ですか?」
「……おぅ! すまんすまん、実はな……誰もワシが異世界に行ったちゅんを分かってくれないんじゃ」
「はぁ〜……」
「周りの人間にワシが異世界に行った事を話すとみんなキョトンとするんじゃ、最初はその反応が逆に面白かったんじゃが……けれど、みんなに頭おかしなったんか? とか夢と現実が分からんくなったんか? とか挙げ句の果てにはキ◯◯イ扱いされてのぉ……」
「そ、それがどうしたんですか?」
「その内に自分でも、アレ!? ワシは本当に異世界に行ったんか? もしかして、喧嘩で頭やって幻覚でも見てたんじゃないんか? ワシはおかしくなってしまったんじゃないか!? と、どんどん怖くなってしもうたんじゃ」
「はぁ〜なるほど……」
「そしたら、サンディが現れた! そしてサンディを抱きしめた! 触れている感覚がある! ハァ〜良かった……本当に良かった! ワシはおかしくなっとらんかったんじゃ! 異世界は本当にあったんじゃ! と心の底から安心したわい」
「そ、それは良かったですね……今後は気をつけた方がいいですよ……」
「はぁ〜? なんでじゃ?」
「セクハラで訴えられるって場合もあるっていう事です!!!」
「せくはら? なんじゃそりゃ?」
「男虎拳! 私の事は覚えているか?」
「……誰じゃアンタ?」
「グッ……」
キーユは苛立ちを隠しきれなかった。
「ホラ、拳さんが最初に私達の世界にやってきた時に、あの……その……」
「あぁ〜……なんとなく思い出したわ」
「な、なんとかく……だと?」
「ま……まぁそんな事より早く私達の世界に行きましょう」
「おぅ、そうじゃチョット待っててくれや」
拳は丘の上から異世界に連れて行くメンバーを呼んだ。
「おーい、辰巳! 弘正! 文吉! お前らチョットこっちに来い! 後の者は解散じゃ!」
「へーい」
拳は三人の舎弟達をサンディとキーユの前に立たせ、自己紹介を始めた。
「まずは、ウチの副番で木戸辰巳じゃ」
目に十字の刀傷をつけた男が一歩前に出る
「ウッス、よろしゅう」
「次はウチの特攻隊長で毒島弘正じゃ」
スキンヘッドで眉なしの首から上が肌色一色の男が一歩前に出る
「ウッス、おい! おどれ警官か? ワシはなぁ警官が大嫌いなんよ」
毒島がキーユの前にズイッと立ちガンをつける様に睨みつけた。
「弘正! やめんかコラ!」
「へ〜い」
毒島は、キーユの目をそらさずに後ろに下がっていった。
(やはり……この男たちも拳と同じタイプの人間らしい……心配だ……)
「次はウチの舎弟頭の藤原文吉」
藤原は他の二人とは違い、まだ幼ささも見せる、一般的な学生の風貌をしていた。
「よろしくっす」
藤原は二人に好意的に握手を求め、手を差し出した。
「よろしくお願い致します」
「よろしく」
(この男は他の人間とは違い、まともらしい……)
藤原はニカッと微笑んだ。
前歯は一本も無かった。
(そうでもないかも……)
「この三人を連れて行きたいんだが、いいよな?」
「え、ええまぁ……」
「拳よ〜ワシらどこに連れて行くんじゃ?」
「今からお前らを異世界に連れて行く」
「えっ!? ……プッ! ダーハッハハハー」
「おいおい! 番長まだ言っとるんか」
「勘弁してくだせぇ! クゥークックックッ腹が腹が痛えっす〜〜〜〜」
「まぁそうなるわな……」
「クックックッ……拳よワレ喧嘩で頭を強く打ったんと違うか?」
「お前らに貸してる博打のツケがあるじゃろ?」
「おぅそれがどうしたんじゃ?」
「お前ら、ここまでワシをコケにし腐ったんじゃ……もし異世界に行けたらチャラにせぇや」
「!?」
「お、面白いやないけぇ……その代わりもし、行けんかったら倍付けっちゅう事でええな?」
「もちろんじゃ」
「チョッ……チョット待ってくれ」
舎弟頭の藤原が話を中断し三人で相談したいと言い、三人は少し離れた場所に移動した。
「おい……大丈夫なんか?」
「何がじゃ?」
「よう考えてみぃ……異世界に行ったらなんてアホな事博打にもってくるか?」
「だったらよ、ワレ異世界っちゅうのが本当にあると思っとるんか?」
「いやワシだってそんなもん、あるはずが無い思うとるよ」
「あったり前じゃ、何回説明を聞いてもワシなんて全く持ってチンプンカンプンじゃ」
「そうっす! そんなもん行けるわけ無いわい!」
「そ、そうじゃな! ヨシ! これで借金倍付けじゃい」
三人は相談が終わり拳たちの所へ戻ってきた。
「拳よ〜その博打乗ってやろうじゃないけぇ」
「よ〜し、お前ら吐いた唾飲み込まんとけよ!」
「そっちこそなぁ〜」
「それから、お前らともう一人連れて行きたい奴がおるんじゃ」
「もう一人?」
そう言うと拳はその連れて行きたいと言ったもう一人の男の所に歩き出し、サンディたちも拳の後に続いた。
──髑髏ヶ峰高校
「おい拳! 連れて行きたいちゅんは髑髏ヶ峰の奴かい!」
「おぅそうじゃ」
拳は近くにいた、髑髏ヶ峰の生徒に話しかけた。
「おぅ兄ちゃん、チョットええか?」
「なんじゃい? あぁん!? ワレ獄門高の野郎じゃないけぇ! おぅ! カチコミじゃ〜〜〜獄門高のカチコミじゃ〜〜〜〜〜」
話しかけた生徒が大声で仲間を呼び出した。
「おぅ? なんじゃ? なんじゃ?」
「カチコミじゃってぇ〜〜〜〜〜!」
「上等じゃないけぇ」
その声を聞きつけて、周りにいた生徒がゾロゾロと集まりだし、ついに拳たちは囲まれてしまった。
それに対して、サンディは怯えキーユや仲間の三人は身構え臨戦体制をとる。
しかし、拳は至って冷静に髑髏ヶ峰の生徒に話を続ける。
「ヘヘッ……待たんかい、さっきも言うたじゃうワシは、ただ人を呼んでもらいたんよ」
すると校舎の奥からポケットに両手を突っ込み、ゆっくりと男が一人歩み寄ってきた。
「どうしたい……今日はただの客かい? だったら、ちゃんと出迎えにゃならんのぉ」
「鬼嶋!」
「鬼嶋だ!」
「鬼嶋さん!」
「総番!」
「拳よ〜言っていたもう一人ちゅうんは……」
「ヘヘッそうよ」
「拳よ……まさかただ遊びに来たわけじゃ無いじゃろう?」
「鬼嶋〜チョット
「フッ……今日は喧嘩じゃ無いんじゃろう? どこ連れて行くんじゃ?」
「ええとこよ……ええとこ……」
鬼嶋は拳の誘いに対し一瞬躊躇しそうになったが、断ってしまったら髑髏ヶ峰高校総番としての面子が立たなくなる、そして幼子が新しいおもちゃで一緒に遊ぼうと言っているかの様な拳の無邪気な笑顔に好奇心が鬼嶋の背中を押させた。
「……フッよう分からんが乗ったろうやないか」
「ヘヘッ乗ってきてくれると思ったぜ、鬼嶋よ……」
「拳さん、この方たちでよろしいんですね」
「おぅ、そんじゃまぁ頼むわ」
(六人用の魔法陣なんて初めてですね……)
「!? どうしたサンディ? 地面に落書きなんぞしおって」
「これに乗ってください」
「? 乗ってどうするんじゃ?」
「異世界に行くんです」
(……本当に行けるのかやっぱり不安になってきた)
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