第10話 今すぐ実戦じゃい!!!

「ど、どう言う事ですか?」


「いや〜私もこんな事は初めての経験だからね、少し困惑しているのだが……あの能力相性と言うのは私が手をかざした対象者の体内にある、火、水、雷、土、時空、治療、この六つの能力の種の鼓動を、感知できるはずなんだ……」


「はぁ……」


(このおっさん……ワシの身体の中を覗き見たっちゅう事かい……うっす気味わるいのぉ……)


「しかし、拳くんにはその鼓動をまるで感じない」


「も、もう一度お願いします」


「もう、ええって……」


「拳さん……」


「サンディよ……そもそもワシは最初から能力なんぞ使う気はなかったんじゃ、まぁワシからしたら結果オーライっちゅう事よ」


(それに、変な力でワシの中を調べられるなんざ気持ち悪くてしょうがないわい)


「で……ですから、何度も言っている様に能力者相手に無能力で戦うのは危険すぎます。それに拳さんはラングストンに対して空瓶を使用したり、屋敷の中で椅子を使おうとしてましたよね。それと能力を使う事のどこが違うというのですか?」


「え!? 屋敷で何があったの?」


「そ、それとこれとは話が違うんじゃ……わ、分かるじゃろう?」


「私には全然違いが分かりません」


「あのぉ〜……拳くんチョットいいかな?」


「おぅなんじゃい?」


「能力付与には成功しているよ」


「え? だってさっき六つの属性に何も当てはまらないって」


「そうなのだが一つだけ君にもあったんだ能力の種がそれも、異常に強力なものがね」


「マ、マスター……それはなんですか?」


「そ、それは上手く言えないが……強いて言えば精神的なものかな」


「で、でもそれは六つの属性ではないのですよね?」


「まぁそうなんだが……精神的というのも一つの能力の種には違いはないのだが、今までは精神的な能力はあっても六つの属性のうち一つないし二つぐらい能力の種は皆んな持っているものなのだよ」


「はぁ……」


「その六つのうち最も適した能力の種が開花する、今までは皆んな精神的な能力というものはあっても、他の六つの能力の種が適正として開花するからね」


「だからなんじゃい?」


「しかし拳くんの場合は六つの属性の種が極めて小さく、逆に精神的な能力が異常な程大きいので精神の能力付与が行われたという事さ」


「そうか……で、でもアレじゃろう? 能力があったって使う使わんかはワシが決めりゃいい事じゃい」


「いや……これは恐らくなんだが」


「え?」


「他の六つの能力は意識的に発動を促さねばならないが、精神的な能力の場合恐らく無意識的な要素が強い、だから拳くんの意思とは無関係に発動してしまうかもしれん」


「……」


「そ、それはどういった能力なのですか?」


「いや〜それは私にも……なにせ初めての体験だから分からないなぁ〜……そうだ! もし拳くんが良かったら腕試しでもどうだい?」


「腕試し?」


「ここのギルドメンバーの誰かと手合わせをやってみては?」


「そ、そうですね! 拳さんやってみたらいいじゃないですか? 拳さんの好きな喧嘩ですよケ・ン・カ」


 サンディは拳を焚き付ける様に仕向けた。


「そ、そうじゃな! ここに入った時、面白そうな奴が何人かいたからのぉ」


「よし決まりだな! では早速下に降りて拳くんと手合わせしてくれる者を探そう」


 拳たち三人はギルドメンバーがいる酒場に降りて、拳の模擬試合の対戦相手になってくれる者はいないかと呼び掛けた。


「えーという事なのだが、ここに居る拳くんと手合わせしてくれる者は名乗り出てくれ」


「ヘヘッ俺は誰でも構わんよ」


 しかし、わざわざ危険な事をする訳はなく、そこにいたギルドメンバーたちは目を伏せて名乗りを上げる者はいなかった。


「誰もワシとやらんのかい? 腰抜けばっかりじゃのぉ〜ヘッ可哀想じゃからええわい、だったら街にいるゴロツキに喧嘩売った方が早そうじゃ」  


「な、なんだと!?」  


「い、言わせておけば〜」


 拳の挑発により、その場は一気に殺伐とした雰囲気になった。


「ヘッ腰抜けとは言ってくれるじゃあねぇか! マスター俺にやらせてくれ」


「お〜ディックだ! やっぱりここはディックにやってもらわなきゃな!」


 スキンヘッドで左目に古傷を付けた大柄の男が名乗りを上げた。


「ヘッ……ワシだったらすぐに名乗りを上げるのによ〜ビビって躊躇しとったんか? ああん?」


「フン……最初は見逃してやろうと思ってたんだがなぁ……お前のような野蛮なサルにはお灸を据えてやらないといかんからな……」


「お〜なんだが面白くなりそう……」


 カウンターで見ていたキャシーは子供の様なイタズラな笑みを浮かべていた。


「うむ、拳くんこのディックはここのギルドで一番の戦闘力だ、存分にやりたまえ」 


 ギルドから少し離れた闘技場へ移動した。


「うお〜〜〜ディック俺たちギルドの代表として、あの野郎をぶちのめしてやれ〜〜〜」


 闘技場の雰囲気は昂ぶり、拳にとっては完全にアウェーの中、闘いは始まろうとしていた。


「ふんっ……だったらおどれが出てくればよかったんじゃ」


「ヘッどっからでもかかって来い! ……なっなんの真似だ?」


「まぁまぁ……さっきアンタの上司も言ってたじゃろうじゃって、試合の前には握手じゃい」


「ヘッただの野蛮人でもなさそうだな……」


 ──ギュ〜〜〜〜〜ウ


「?」


「ヘヘッ」


「ふぐっ!!!」 


 拳はディックを引き込み顔面へ頭突きを喰らわせた。


「オラオラオラ!!! これが男虎拳様の喧嘩殺法じゃい!!!」


「この卑怯者め! 恥ずかしくないのか〜〜〜!」 


「ヘッじゃがしいわい! 喧嘩に卑怯もらっきょもあるかい!」


「チッいい気になるなよ……」


「!? なんじゃこりゃ〜〜〜!!!」


 拳の立っていた地面が泥の様になり、拳の体が腰まですっぽりハマってしまった。そしてまた、元の地面に戻ったのである。


「ヘヘッ俺の能力は土属性でな、地面の質をコントロールできるのよ」


「ど、どうなってやがんだ!? ちくしょう」


「ヘッ……そうやって腰まですっぽりハマりゃあ身動きも出来ねぇだろ」


「くっ……」


「ケッ……さっきはよくも不意打ちなんぞ汚ねぇ真似してくれたな」


「ヘッ喧嘩に汚ねぇもクソもあるか!!! とっとと攻撃して来いや〜」


「減らず口の減らねぇ奴だな!!!」


「ごふっ」


「オラもう一丁!」


「ガハッ」


(拳さん……)


「マ、マスターもうやめてさせて下さい!」


「ヘッこれで参ったかよ」


「ヘヘッ……ワシはまだまだピンピンよ〜」


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