第2話 探訪! 異世界じゃい!

「おい! どうしたんじゃい?」


「サンディちゃんどうした! うわー!!!  へ……変質者だー!!!」


 サンディの悲鳴を聞きつけた近所の住人が慌てて駆けつけてきた。


「ワレ誰に言っとんじゃい!!! この大和男子に向かって! おぅ!?」


「なっ何言ってるんだ! あ……あんた、フ……フル○ンじゃないか?」


「わしゃ銭湯に来たんじゃぞ、銭湯で服脱いで何が悪いんじゃ!!!」


「通しなさい! 変質者はどこだ!」


「キーユ隊長! コッチです」


 警察の様な服装、サーベルを腰に帯同した男が部屋のなかに飛び込んできた。そして、その後ろにも同じ制服を着た5〜6人の男達が住人をかき分け部屋に入ってきた。


「キーユ隊長……これは違うんです……この方は私が……」


 サンディが赤面の表情で、か細い声で囁いた。


「君が被害者かね……我々親衛隊が来たからにはもう大丈夫だ、貴様! 恥を知れ」


「どいつもこいつも好き勝手言い腐りやがって……人の話を聞かんかい!!! 上等じゃ〜……己れら全員ぶちのめしたるわい!!!」


 拳が親衛隊の隊長キーユに飛びかかり右ストレートを喰らわそうとするがキーユはその場から動こうとしない。


「もらった〜〜〜!!!」


 右ストレートがキーユの顔面を捉えた……かに思ったが拳の右ストレートはキーユの体をすり抜け、姿を消した。


(!? ど……どうなっとるんじゃい?)


「コッチだ」


「!?」


 後ろの声に反応し拳が振り向いた先には確かに、たった今殴りかかったハズのキーユの姿がそこにあった。


「はぁ!?」


 拳が呆気に取られたその刹那、キーユがサーベルに手をかけた状態で一瞬にして間合いを詰め、拳に胴切りをお見舞いした。


「ふぐっ……」


「フッ……峰打ちだ……よし、さっさとこの変質者を連行するぞ」


「た……隊長! まだです!」


「何?」


「ぬおりゃ〜〜〜〜〜〜〜!!!」


 キーユが振り返ると拳が鬼の形相で飛びかかり、あっという間にマウントポジションの状態を作ってしまったのである。


(バ……バカな!? 私の攻撃は峰打ちとはいえ大柄のオーグが相手でも1日は気絶して動かなくなるんだぞ!?)


「くそボケが〜! ワシの国にはな……切腹ちゅうもんがあるんじゃい……どんなにワレの攻撃が……重かろうがな……土手っ腹に峰打ち一発くらったくれぇでくたばる日本男児と違わい!!!」


(クッ……なんて馬鹿げた耐久力だ、しかしそれにしても奴のチン○が私の体に……!!!)


「タコ殴りじゃい! くそボケが〜!!!」


「ごめんなさ〜い!!!」


「!?」


 拳が攻撃を喰らわそうとした瞬間、先程まで顔を覆いうずくまっていたサンディが突然に大声を張り上げた。


「わ……私がその方を……転生してしまったんです。で……ですから……その方のおっしゃっている事はた……正しくて……そ……その……申し訳ありません、転生者様の状況は私がまだ未熟者故、確認できなかったのです」


「そ……そうだったのか……悪かった、我々も君の話を信じるべ……ゴフッ」


「このくそボケが〜!!! 転生だがなんなだか知らんが、だからワシがさっきから言うとったろうが〜!!!」


「だ……だから謝って……グワッ」


「おどりゃ〜血祭りにしちゃるわい!!!」


 頭に血がのぼってしまった拳は、キーユの謝罪が耳に届かず攻撃を続けるのであった。


「馬鹿! もう辞めろ!」


「血祭りに〜!」


「もうなってる、もうなってるから〜」


 攻撃を続ける拳に部下たちが必死に引き離そうとする。


「離さんかい! おどれらも同罪じゃい! 全員血祭りじゃ〜!!!」


 ──30分後──


「フゥ……フゥ……フ〜」


 ようやく落ち着きを取り戻した拳の目の前には、服は破れ、顔面が腫れ上がったキーユとその部下達が横たわっている。


「ヨイショ」


 拳がおもむろに、キーユの服を脱がし始めた。


「な……何をしているのですか?」


「ん? この格好じゃあアレじゃろがい」


「そ……それではまるで追い剥ぎではありませんか?」


「ネェちゃんよ……アンタ男物の服、持っとるんかい?」


「え? いいえ私がその様なもの……」


「ほうじゃろ、だからしゃあないわい」


「しゃあないって……チョッ、チョット待ってて下さい」  


 拳が追い剥ぎまがいの行動を見てサンディは財布を手に持ち部屋を出て行った。


 ──15分後──


「はぁ……はぁ……はぁ……こ、こちらを着てください」


「お〜う、ネェちゃんが買って来てくれたんかい?」


「そ、そうです」


「へぇ〜わしゃ外国の服ちゅうんは初めてじゃ」


(が、外国とはチョット違うのですけど)


「ネェちゃんよ」


「サ、サンディです……どうなさいました?」


「街案内してくれんかのぉ」


「えっ!? え〜!」


 昭和30年、日本では海外旅行というのは現代で言う所の宇宙旅行に近い存在であり、拳の様な庶民達からは夢の中の夢であり、拳が浮き足立つ事も無理からぬ事であった。


 ──ゴーラ国中央都市──


「ほぉ〜」


(なんて順応が早いのかしら……)


「い、いかがです?」


「いや〜さすが外国じゃ〜ワシの国には見たこともない建物や食い物だらけでワクワクするのぉ」


「そ、それは良かったです……」


(先程まで自警団の方々をボコボコにしてたとは思えないわ)


「腹減ったのぉ〜何処かええ店連れてってくれや」


「わ、私の行きつけでよろしければ……」


「決まりじゃい、じゃあ案内頼まぁ」


 二人はサンディの行きつけだと言う居酒屋に入って行った。そこは、様々な人種が集う憩いの場として賑わっていた。


「ここは……ええのぉ……みんな笑顔じゃ」


「え?」


「いらっしゃい……あらサンディ良かったじゃいか勇者候補かい?」


 席に着いた二人に店の女将が話しかけてきた。


「勇者候補?」


「い、いえ……そんなんじゃ」


「ふーんまぁいいさ、お前さん初めてだろう好きな物食べていきな」


「おぅ、じゃあオススメを適当にみつくろってくれや」


「ハハッ随分威勢が良いね〜分かったよ」


 注文を聞いた女将は厨房へと入っていった。そして拳は少し神妙な面持ちでサンディに話を切り出した。


「ところでサンディよぉ……ワシはなんで此処におるん?」


「え!? い、今ですか? それは転生と言う魔法で」


「は!?」


「で、ですから……う〜んなんと説明したら良いのでしょう」


 無論、拳にとって魔法、ましてや転生など初めて耳にする言葉である。サンディも拳の反応を見てそれは感じとっていた。

 予備知識がゼロの状態の拳に対してサンディは悪戦苦闘をしいられていた。そこへ


「相変わらず汚くて狭いねぇこの店は……」


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