悩みごと:一人称の地の文はどのあたりまではっちゃけていいのか
このところ、小説の文章についてひとつ悩んでいます。
数か月くらい悩んでいるのですが結論が出ておらず……悩みごとは今回のタイトルの通り。
「一人称の地の文はどのあたりまではっちゃけていいのか?」です。
改稿が終わったら続きを書くと宣言しつつ、まだ再開できていない異世界ファンタジー「白銀はアツく焼いて打て! ~略奪された精霊鍛冶師と、勝利を知らない死に還りの剣士~」 https://kakuyomu.jp/works/16816927861465369698 。
実は改稿が一字たりとも進んでいないのですが、原因がこの悩みだったりしています。
この話、ちょっと口悪めの少年の一人称で進むのですが、読み合い企画等に参加した折、結構な頻度で「地の文にラフな口調が混じる」点について引っかかったという感想をいただいています。
改稿をしようと考えているのはそのためなのですが……直すとして、どのように直すのが妥当なのかがわからず、手が止まっている状態です。
文章の現物がないと話しにくいと思いますので、以下に一部サンプルを引用します。(「飛んで火に入り正面突破」 https://kakuyomu.jp/works/16816927861465369698/episodes/16816927861465555557 より)
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山道の半ばで、オレたちは前後を塞がれていた。林の間を縫って進む山道は、手を広げた大人二人分ほどの幅しかない。その前方と後方に、汚れた革鎧姿の男たちが三人ずつ並んで行く手を阻んでいる。
手斧、短剣、短槍……手に持つ得物はばらばらだ。まだまだ肌寒い季節、頭巾やマフラーを付けてる連中もいるが、例外なく擦り切れてくたびれている。なんとも薄汚い連中だった。
「金目の物などない」
ヴァルターが言えば、男たちが一斉に笑った。
「いい服着てんじゃねえかよぉ」
「腰の剣もなかなかだぜ?」
舐め回すような六対の視線が、じっとりと絡みついてくる。昨夜のジークハルトとはまた違った意味で、気持ち悪りぃ。
前に進むためには、この場をなんとか切り抜けなきゃならねえ。ヴァルター、策はあるんだろうな?
横をちらりと見れば、腰の長剣は既に抜かれていた。青い目が、前方の三人をぎろりとにらむ。
腰が、落ちる。
「おぉ? やる気――」
賊の声が、途切れた。
ヴァルターの剣が、袈裟懸けに前方の一人を斬り飛ばしていた。
鮮血が右腕から散る。短槍が地面に落ち、大きな身体がゆらりと傾ぐ。
残る二人の目が、泳いだ。
遅れてあがる、絶叫。賊どもの目に光が戻る。
「てめえ――やっちまえ!」
うぉぉおぉ、と声をあげつつ、賊が飛びかかってくる。前から二人、後ろから三人。
おい、どうすんだヴァルター! お前だけならともかく、オレもいるんだぞ!!
うろたえるオレの前で、ヴァルターの足は華麗なステップを踏む。
舞踊じみた素早い足さばきが、前へ後ろへ駆け抜ける。踏み出した先で短剣を弾き、手斧を逸らす。
オレの周りを守りながら、ヴァルターはすべての攻撃を受け流した。間断なく繰り出される五つの得物を、ヴァルターは完璧に見切っているようだった。がら空きの背中を狙ったはずの一撃は、次の瞬間、吸い寄せられるように長剣に受け止められ、弾き返されていく。
やがて賊の体勢が乱れ始めると、現われた隙へ、ヴァルターの剣が容赦なく叩き込まれる。
賊どもの腕を、肩を、斬撃が襲う。得物が、次々地に転がる。
命に関わる首や頭を一切狙ってねえのは、ヴァルターの美学なのか情けなのか……どっちにしろ、当てる先を気にする余裕がある時点で、とんでもねえ。
あっというまに、六人が無力化された。どいつも利き腕をやられ、得物を持つことはできなくなっていた。
……七年前から、剣技に鈍りはないようだ。動きのキレはむしろ増して、人間離れした領域に達している。
さすが、王国第二の剣士は伊達じゃねえな。すさまじいぜ……。
「何をしている。新手が来る前に行くぞ」
ヴァルターに促され、オレは先を急いだ。
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……上記のような感じで進行する一人称なのですが、「語り手の口調が出ている部分と、叙述的な文章とが混ざっていて違和感がある」という趣旨の感想をしばしばいただきます。
うーん……部分によってラフ口調が出たり出てなかったりするのがよくないのかもしれません。かといって状況説明の部分までもラフ口調で書くのは、ちょっと無理がある気もします。
かといって、全編を口調なしのプレーンな地の文にすると、台詞の口調と一致しなくてそれはそれで違和感がある。
どんな感じにするのが正解なのか、いまだに自分の中で答えが出せずにいます。
ただ、似た口調のラウル(「笑顔のベリーソース」 https://kakuyomu.jp/works/16816927861260911907 など)については地の文の違和感を指摘されたことはないので、説明部分が増えがちな長編特有の問題なのかもしれませんね、これ。
妥当な落としどころについて、もう少し悩む必要がありそうです。
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