青い太陽、ウサギの神様
桜子
私のタトエ
家族を文房具で例えるなら、迷わず「筆箱」と答える。
友達を色で例えるなら、迷わず「オレンジ色」と答える。
彼氏を星で例えるなら、迷わず「太陽」と答える。
彼らから見て私は、何に見られているのだろう。
「本当に助かる!!イトハまじ神様~!」
クラスメイトから飽きるほど聞かされているこの言葉。先月は『仏様』だっただろうか。宿題を見せただけで神様やら仏様やらとたいそうな称号をもらえるなんて、ありがたいのか、軽率なのか。
「いいよ。気にしないで」
明日もきっと見られることになるのだろう。感謝の眼を私にではなくノートに向けているのが証拠だ。神様の私は今日も気を遣う。
「あんたってウサギみたい。ほら、集団行動を好むー、みたいな。」
放課後、友達から可愛い動物の肩書きをもらう。先週は『犬』だったはずだぞ。
「何それ。」
「嫌なら断っちゃえばいいのよ、宿題の解答掲示板役なんて。無理してるの見え見えだしさ。」
そういってLINEの画面ばかり見る友達。トーク画面は私ではない。小学校の頃からの"イツメングループ"なるものらしい。
「あんたを思って言ってるのよ?媚売るのキツイって。」
ふーん、と聞き流す。聞く意味など無いから。画面のミドリのふきだしに(こいつの相手終わったらすぐ電話するから)と映っているのを知っているから。じゃ、こっちだから。と急いで私は橋を渡る。ウサギの私は今日も1人で巣に帰る。
「イトハ、もっと顔色を良くしたらどうなの?本当、青い子ね。」
夕飯には必ず母さんから説教が入る。そんなにつまらなそうにしているだろうか。
「私があなたの年頃のときはね、元気に鬼ごっこなんかしたものよ。生活に色があったわね。そういうのが無いワケ?」
知ったことか。何の自慢話なの?大体、生活に『色』だなんておかしな話。
「楽しいわ。クラスの子と勉強して、友達と恋バナしながら帰って。心配されるまでもないし。」
神だと慕ってくれるクラスメイト。可愛い例えの上手い友達。そう言おうとして、でも母さんはさっさとお風呂に行く。青い私は今日も口角を引っ張る。
「世界一美人だよ。まるで太陽だ。」
夜は大好きな彼氏と電話をするのが日課だ。一番明るい恒星は私たちの誉め言葉の決まり文句。いつだって私と彼は明るい。
「どんな女性より素敵さ。人に言われたことなんて気にするなよ。」
彼の言葉には毎回感心してしまう。彼の表現力は、きっと俳優より高いから。先月手をつないでいた女の子のことを悟られぬ様に、前にもまして誉めてくれる。そして日を追うごとに通話時間が短くなっているのも、誰かを想っているからだということに私はちゃんと気づいてる。
ああ、太陽に涙という名の水が流れているって知ったら、彼はどんな反応をするだろう。太陽の私は今日も暗い視界の中で。
今日も明日も明後日も、何かになっていく私。矛盾を重ねる私。
神様ってなんだろう。望みを何でも叶える使用人?
ウサギってどういう動物だろう。一瞬でねじ伏せられる小動物?
青ってどんな色だろう。目立つ黄色や赤を引き立てるだけの色?
太陽ってどんな星?その場しのぎの輝き。
私って何だろう。皆に「物」で置かれる、どこにでもいる存在なのかな。
違う。私は「私」だ。思想でもないし、動物でも色でも星でもない。私だけの「私」なんだ。いつか、自分だけの色を作って、自分だけの世界を染めよう。
明日、どんなモノになっても、私は矛盾と闘う。
青い太陽、ウサギの神様 桜子 @youko31415
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