第14話 吾が輩は魔猫である

 吾が輩は魔猫である。

 名前はミィヤと付けられた。

 このような喋り方だが、雌である。


 母親の猫からは、『お前』とか『化け物』としか呼ばれなかった。

 とは言え、猫社会でも固有名詞が有るのか分からないうちに、母猫により森へ棄てられたから良くは分かっていない。


 記憶では、姉妹などは居らず、母猫とも形が違う様だ。

 吾が輩には尻尾が二本ある。


 周りの情報によると、発情期に森の近くまで雄探しをしていた母猫が、運悪く魔物に強姦されたらしい。

 命は取られなかったが、その時に孕んだのが、吾が輩らしいのだ。



 森に棄てられた吾が輩は、虫や小鼠を食べて生きていたが、ある日、新鮮な血肉の匂いに誘われて、現在の御主人様達に出会った。


「あらっ?こんな森の中に、猫!」

「御腹がすいてるのかな?ほらっ、お肉だよぉ」


 放り投げられた肉の塊に警戒はしたが、育ち盛りの空腹には変えられなかった。

 母猫の母乳は、ほとんど飲ませてはもらえなかったのだ。

 むしろ村の人間の方が、一匹でうろついている子猫である吾が輩に、山羊の乳をくれていたので、人間に恐怖心は感じない。


 辺りをうろつかれるのが不快だった母猫により、森へと捨てられてからは、人間からの恩恵も途絶えていた。


「あっ、食べてる食べてる!」


 獣の匂いがする青髪の人間が、好奇の目で見ている。


「この猫、私達と同じハーフじゃない?猫だけど、所々魔物の特徴があるわ」


 何か話している三人の人間だが、どうやら雌の様だ。

 確かに村人と似かよった姿をしているが、体から光の様な物を出している。

 母猫にも光は出ていなかったが、吾が輩は自分自身からも、うっすらと光が出ているのを知っている。


 この光は、森の獣の一部からも出ていたが、人間から出ているのを見るのは初めてで、興味が湧いた。


「ミィ~!」


 投げたら肉を食べ終えた吾が輩は、催促で鳴いてみた。


「もっと、こっちへおいでよ」


 先程よりも人間側に落ちた肉に、吾が輩は飛び付いた。

 肉は先程よりも大きく、食べ終えた時には久々の満腹である。


 感謝の印に体を擦り寄せ、撫でさせる。

 村人は、こうしてやると、次回も乳をくれた。


 そのまま抱きかかえられ、再び人間の世界に戻ってからは、っちゃ寝の生活を続けている。


 森で暮らしていたせいか、爪研ぎも排便も、外で行う我が輩を、宿屋の者も「おりこうさんな猫ね」と、オヤツをくれる。

 見れば近所の猫は、建物の柱で爪を研ぎ、宿屋の者に怒られていた。


 母猫を見た時も思ったのだが、普通の猫は知能が低いらしい。




 久しぶりに御主人にいただいた生肉は、どうやら人間の物らしいが、やはり生肉は力が湧き出る。

 周りの人間を襲って食べる事も、一瞬は頭を過ったが、特に空腹になる事も無く、オヤツをくれる人間を食べてしまうのは先々で損だと判断し、御主人にもらう生肉だけにしようと改めた。


 吾が輩は魔猫である。

 名前はミィヤ。

 今日も御主人様達と共に、魔族や魔物の棲息する森を駆け巡る、ワーカーチーム【ナイトメア】のペットである。



――― ワーカー編 完 ―――


しばらくお休みします。

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ギャルズナイトメア ワーカー編 二合 富由美(ふあい ふゆみ) @WhoYouMe

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