第39話 朝陽の中で
面白い岩が海岸線に沿って続いてる。
千葉の根本海岸は、撮影スポットとしても人気の場所だ。
俺と美依は体をくっつけて遠くを見つめる。
空がだんだん白んで来た。
俺は、右手を美依の肩へ回すとぐいっと抱き寄せる。
「ちょ、ちょっと。誰かが見てるかもしれないでしょ?」
美依はそう言うけどいつもの感じではない。
きっと、これってOKってことなんだろうと思う。だから、俺はもっと右手に力を入れ、美依の頭を俺の胸に抱き寄せ、長い黒髪にキスをした。
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朝三時、俺のスマホが小さく震えた。
夜はマナーモードにしているから、正直、メールやメッセが来ても気づかない方が多い。いや、ほぼほぼ気づいたことはないのだが、今日に限ってなかなか寝れず、布団の上に足を出したり中に入れたり、はたまたゴロゴロと横に転がったりと意味不明な事をしていた。だから、美依からのラインに奇跡的に気が付いたというわけだ。
【太一、起きてるかな…。会いたい】
【すぐ行く】
【えっ?起きてたの?】
俺は枕元にあったパーカーを羽織ると音を立てないようにゆっくりとドアノブを回す。
外に出ると美依が駆け寄ってきた。
「太一、おはよ」
耳元で小さな声で呟く声に思わずドキッとする。
「お、おう。美依、お前、その恰好で大丈夫か?」
よく見るとノースリーブに薄いカーディガンを羽織っているだけだ。
「うん。思ったより寒いんだね。でも、大丈夫だよ」
「そう?無理すんなよ。じゃあ、ちょっと歩く?」
「ふふ、歩くって言ってもまだ暗いし何も見えないけどね」
「まあ、でも、直に明るくなってくるよ。うん」
俺らはゆっくりと砂浜を歩く。
夜の海はまるで秘密を抱えた恋人達を応援するように波音で高まる俺の心臓の音を消し去ってくれる。
暗闇が怖いのか俺の腕を持つ美依の手にも力が入っている。
「なあ?今、何を考えてる?」
「暗闇だったら私、何も気にせず太一とこうしてくっついて話せるんだなって思ってる」
「そうだな。まあ、確かに」
「でしょ?なんでもっと暗い時にくっついてなかったのかな。あー、今まで損した〜」
「損したって…。くっ。美依ってやっぱり最高だな」
「何よ、今の超上から発言だったよ。どうせ私は気が利かない強がり女ですよ〜だ。もう、ばかっ」
そういうと美依は砂浜を走り出した。
「おい、美依。危ないってば」
俺も慌てて美依を追いかける。自慢じゃないが足は速いほうだ。だから、美依を捕まえることくらい楽勝だ。
「きゃぁー」
俺が急に美依の腕を取ったもんだから、美依は砂浜に倒れ込んだ。俺は美依を守るように抱きしめながら背中から倒れ込む。
『ザァッー』
砂浜に倒れた俺の上に美依が横たわる。
「み、美依?」
美依は、口許に落ちて来た黒髪を人差し指で除けると俺の口元に吐息が掛かるくらい近づけた。
俺は溜まらず声をかける。
「ん?えっと、どうすればいい?」
「ど、どうすればって…。もう決まってるじゃない!」
「だよな」
俺は、美依の口元に自分の顔を近づけた。
そして、ゆっくりと美依と口づけを交わした。
二人並んで砂浜に座って、波の音を聞いている。
空がだんだん白んで来た。
俺は、右手を美依の肩へ回すとぐいっと抱き寄せる。
「ちょ、ちょっと。誰かが見てるかもしれないでしょ?」
「いいって。逆にみんなに知ってもらいたい。美依は俺の彼女って」
「太一…」
俺と美依は、今日何度目かの口づけをゆっくりと交わした。
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第三十九話を読んでいただきありがとうございました!
次回、「同じ部屋に!?」をお楽しみに!
皆さま、どうぞお時間のある時に遊んでいってくださいね!
引き続きよろしくお願い致します。
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