第33話 新しいイベント

 午後三時前十五分、俺と美依は、ちょっと照れながらも手を繋ぎながら大学のキャンパス内を歩いている。

 知り合いに見られたくないな、いや見られたい…、二つの思いが交差する変な感じだった。そう、とにかく照れくさいんだよ!

 サークルのミーティングが行われる喫茶が近づいてきた、結んだ手をゆっくりと解くと俺と美依は顔を向き合い頬を赤く染めた。


 サークル『遊ぼ』は、現在約三十名が所属しているサークルの中では大きな団体の方だ。月に一度、全体ミーティングが行われ、その場で翌月のイベントなどが発表される。

 それにしても、先週、月一度のミーティングがあったのになんでだろう?二週連続でミーティングって初めてだな。


 代表の髙橋先輩が「じゃあ始めるぞ」と声を出すと、それまでざわざわとしていった雰囲気がシーンとなった。

 やっぱり髙橋先輩は統率力がある。細かい所まで気が利くし面倒見も良いし、とにかくメンバーから尊敬されてる。


「今日は、二つ報告があるぞ。まず一つは、新入部員が入ったぞ」


「お〜〜!!!女子ですか?」


 玉木がちゃらけ顔でストレートに質問をする。


「そうだぞ〜!良かったな。玉木!」


「いや、そんなんでもないっすよ。可愛いのかな…」


「ほ〜。玉木は顔で判断するんのか」


 すると、髙橋先輩の近くに陣取る女性陣から「玉木さん最低ー」と声が上がる。


「い、いえ、そ、そんなつもりでは…」


 流石、髙橋先輩。あの玉木をあっという間に黙らせた。


「じゃあ、紹介しよう。塩谷さん、自己紹介してくれる?」


 えっ!?あ、あの子…。ま、まじか!!!!

 ちょっと胸元が広めに開いたブラウスにタイトのミニから白い足が伸びている。桜ちゃんとは違ったフェロモンを感じる美少女だ。


 驚いた俺の顔を見た美依は、俺の腕をぎゅっとつねる。

 いや、あの子に見とれていたんじゃないんだってば…。


「皆さん。初めまして。塩谷あかりといいます。学年は一年です。実は、ずっと休学をしていたのですが、先週から復学しました。元気になったので、これからはどんどん新しいことをして行きたいと思います。まだ、友達がいないので、皆さんどうぞ仲良くしてくださいね。よろしくお願いします」


 可愛らしい声と友達がいないから寂しいみたいな雰囲気を醸し出す塩谷あかりに男性陣は釘付けになっている。


「ライン交換しよう〜!塩谷さん、どこに住んでるの?、学部は?」


 塩谷あかりの周りに男性陣が集まる。それを見ていた女性陣は面白くない顔をしている。


「こらこら。そういうのはミーティングが終わってからやれ。それじゃあ、もう一つの議題いくぞ」


 髙橋先輩の一声で塩谷の周りに集まっていた男性陣は我に返って大人しくなった。


「実は、今期の予算が余りそうなんだ。理想を言えば全て使い切って、来年もしっかり大学に申請をしたいと思っているんだ。だから、来月の第一週の土日で千葉へキャンプに行こうと思っている。行き帰りはチャーターバスを用意するので、みんなは荷物を持って大学い集合してもらえればいい。追って、スケジュールや役割分担表はメッセージで送るからそれを見て各自準備を頼む。何か質問あるか?」


 みんな、思ったより冷静だった。いや、乗り気では無いという思いが広がっていた。まぁ、確かに夏も終わって秋に海水浴って訳にもいかないし、なんで千葉?ということなんだろうな。


「髙橋〜!質問いいか?」


 髙橋先輩といつもつるんでいる中島さんが手を上げる。


「お、いいぞ。中島」


「この時期って、一番紅葉が綺麗な時だろ?じゃあ、福島とか長野とかがいいんじゃないか?」


 中島さんの意見にみんな同感だったらしく、多くのメンバーがうんうんと首を立てにふっている。


「確かに、そうなんだよな。実は、俺が一年の時に四年だった曽根さんって先輩がいたんだけど、その曽根さんが昨年、千葉にオートキャンプを開いたんだよ。そんなに大きくはないんだけど海沿いでコテージも2棟あるらしい。俺ら『遊ぼ』から本当に遊びで生涯を掛けた先輩がいるって聞いたら応援したくなってさ。まあ、俺の勝手な感情なんだけど、みんなにも是非同意してもらえればうれしい」


「そっか、お前、それを早く言えよ。だったら話は別だ。曽根さんのキャンプ場でみんなで思いっきり楽しもうぜ!」


 中島さんが話し終わると髙橋先輩が、「サンキュウ」と手を挙げ、中島さんもそれに答える。こんなやりとりを聞いたからには、反対する人なんかいる分け無い。ということで、満場一致で千葉でのキャンプ実施が決まった。


 俺と美依、そして、あの塩谷という新入部員。

 それに…、もしかして、髙橋先輩はまだ美依の事が好きなのかも知れない。そんなことを考えていると、桜ちゃんが近寄って来た。


「太一君も行くでしょ?」


「う、うん。行くよ。あの話しを聞いちゃうと行かないとな」


「良かった!太一君が行くなら、私も行く〜!楽しみ〜〜!」


 そういうと、桜ちゃんは、女子の輪の中に入っていく。


「太一、あのさ、鼻の下が伸びてるんだけど。もう、知らないっ!」


そういうと美依は走って喫茶室の方へと入って行った。

げぇ、、、これって、前と同じじゃない!?



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第三十三話を読んでいただきありがとうございました!

次回、「キャンプでの出来事」をお楽しみに!


皆さま、どうぞお時間のある時に遊んでいってくださいね!

引き続きよろしくお願い致します。




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