第26話 この子だれ?
今、俺はアパートに向かって歩いている。
今日の昼はまかないとして大盛りの天津飯を頂いたのでまだお腹はまだすいてない。なのに、さっき来た美依のラインを見ると不思議なもので早く食べたいと思ってしまう。
公園を横切るときに、ベンチに座っている人影を見つけた俺は、少し距離をとって通り過ぎる。すると、そのベンチに座っていた恐らく女子だと思う人影は、立ち上がると俺と同じ方向に向かって歩き出したようだ。
「ん?たまたまだよな…」
ちょっと後ろが気になるが、変に意識しすぎるのも変だしな。
そうだ、美依に料理のお礼に何かスィーツでも買って帰ろう。
アパートの近くにあるいつものコンビニの灯りが見えてきた。
俺は店に入るとレジから馴染みの店長が「いらっしゃいませ」と会釈してくれたので、俺も「どうも」と返す。そして、緑の小さなカゴを持つと、店内をぐるっとひとまわりして、シュークリームやヨーグルトやお菓子、そしてチーズなどを無造作に入れた。
「他に何かないかな〜!?ん?あの子…」
入り口を見ると女性がコンビニに入ってくるところだった。
えっと、もしかして、さっき公園のベンチに座っている子じゃないのか?
なんだか変に意識してしまう。でも、関係無い、関係ない。帰る方向がたまたま同じだけだよ。早く家へ帰ろう。
いつもより早歩きで家に向かった俺は、リズム良くアパートの階段を登る。すると、後ろから、『カンカンカン』と高い音が聞こえてきた。
『ハイヒール?一体、誰だろう?』
後ろを向くと、なんとさっきの女性が階段を登ってきているところだった。
視線が合った俺は、びくつきながらも小さく会釈をする。
「こんばんは〜」
「へっ!?こ、こんばんは〜」
彼女は、俺の隣の扉に鍵をさし込むとドアを開けた。
「私、本日、引っ越してきました。塩谷あかりです。よろしくお願いします」
しっかりと礼節をもって挨拶をしてくれる彼女。
きっと常識有るご家庭で凄してきたのだと思う。背中がピシッと延びてお辞儀の角度も完璧だ!
だが、なんと言っていいのか、これって、やばいのではないだろうか?
とにかき着ている服がやばい。彼女がお辞儀すると豊かに実った胸が見えしまうんだけど!!!俺は一体どうしたらいいんだろう?もしかして、あの〜、見えてますよ〜なんて言ってあげた方がいいのか?
『わ、わからん〜〜〜!!!』
俺は、心の中で絶叫する。
その時、『ピローン』とラインが鳴る。
【太一、胸が好きなんだね】
へっ!!!
【そんなに好きなら、私も今度思う存分見せてあげるね】
美依の奴、なんてことを!!!
って、どこで俺の姿を見てるんだ!?
と思った瞬間、俺のシャツがくいくいと引っ張られ、俺は彼女の胸元から視線をずらす。
すると、下を向いているものの、とにかく超不機嫌な美依がそこに立っていた。
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第二十六話を読んでいただきありがとうございました!
次回、「お説教」をお楽しみに!
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