第25話 モテ期到来?

 俺は、もっと自立しなければならない。

 だとすると、しっかりと自分が使う分位はアルバイトして稼がないと駄目だよな。そう思い立った俺は、学生課の掲示板に張り出されたアルバイト募集を一枚一枚念入りに見て行く。

 家庭教師、塾講師、テスト添削など頭が良いやつが出来る仕事は時給も高い。しかも、募集案件もとても多い。でも、赤点を取るくらいの頭脳しか持たない俺では到底それは無理だし…。


「ん?これだったら出来そう?」



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「太一!ほら、チャーハン出来たぞ。ラーメン頼む!」


「はい!」


 今日も凄い人が押し寄せている。大学の裏門すぐにある立地だから当たり前だが、昼時はもう息もできないくらい忙しい。

 皿を洗ったりするのは食洗機だがその中に隙間なく入れていくのは何気にセンスがいるんだよな〜なんて思っていると、「急げ!オーダーが溜まってきたぞ」と怒号が飛ぶ。

 だが、俺は、できるだけ冷静に行動をし、ミス無くスピーディーに対応する。そんな俺は、端から見るとそつなくやっているように見えるみたいだ。


「ふぅ〜。今日の特別ランチ、百人分準備したのに午後一時で売り切れとは…。これって記録だな。みんなお疲れ様。ありがとうな」


『中華らいらい』のマスターがみんなにジュースを配りながら笑顔で礼を述べる。アルバイト代払っているから忙しくても最後までやるのは当然だろう?という経営者も多いと思うが、ここのマスターは本当に俺たちのことを考えていてくれる。だから、何年もバイトをしているスタッフが多いんだろうな。


「ねぇ〜。太一君が来てから、前は余り見かけなかった女の子がきてるよね」


 急に俺にそんなことを話しかけてきたのは、バイト歴一年で俺より一つ年上の志保さんだ。


『まさか、桜子ちゃんのことかな?』


 俺は、今日の昼のことを思い出す。

 今まで、桜子ちゃんはこの店には来てなかったようだ。まあ、あのルックスだしチャーハンを食べるというよりも、スパゲッティをフォークに少量巻き付け、スプーンを添えて食べるというようなイメージだしな。

 だが、俺がここにバイトに入ってからは、週に一度はなんやかんやと通ってくれている。これって、俺を見に来てくれているのだろうか?

 それとも、ここの看板メニューの黒ごま担々麺の虜になったとか?


「それと、もう一人。凄い綺麗な子だよね。細くて、黒髪がとっても綺麗で。でも、その子さぁ、食べる時お皿の方しか見ないんだよね〜。それがとても印象に残っててさ」


 俺は思わず飲みかけたジュースを吹き出してしまう。

美依もなにかと俺が入っている時に、店に来てくれるし、俺のシフトが短い時は、一緒に家に帰ったりしている。

 

 俺は、美依の食べる姿を思い出す…。

 まあ、やっぱりそうだよな。他の人から見たらえっ?て感じだろうし。だけど、美依はそれを克服すべく頑張ってくれてるんだよな〜。


「あっ、あとさ、もう一人いるよね!?」

「そうそう、いるよね〜。太一君が入ってる時だけ来る子がさ」


 志保さんと同期で、ここでバイトをしている中ではもっともギャルな法子さんがそうそうと力を入れて言っている。

 えっ?いたっけ?そんな子…。


「自分が言うのもなんだけど凄いギャルっていうか、そう、服とか超きわどい感じだよね〜。私でもあんなスカートはとてもはけないよ〜。でもさ、顔立ちとか凄く綺麗な子だよね〜」


 あっ、そ、そう言えば…。そんな子がいたような気がするな…。


「ほんとに〜〜。太一君ってモテモテじゃん〜〜!!」

「そうそう〜。モテ期だ〜〜」

「ひぇ〜〜。羨ましい〜〜」

「太一!今度紹介しろ!」


 アルバイトの女性陣に混ざってマスターまで俺を茶化している。ったく!!!

 みんな、ちょっと面白おかしく言い過ぎだよな。だって、ほんとにここの料理が美味しいだけって線が濃くないか?絶対そうだよな〜。そうに決まってる!


その時、『ピローン』とラインの音がした。


【太一、今日の夕御飯、私の部屋で一緒に食べない?】


 美依からだ!へ、部屋で一緒に食事〜!!やった〜〜!


【うん!午後の講義終わったらダッシュで帰る!】


【頑張って太一の好きな唐揚げ作るからね〜!!】


 あ〜、俺は幸せものだ…。


 俺は、美依からのラインですっかりさっきの会話の事を忘れていた。 


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第二十五話を読んでいただきありがとうございました!

次回、「この子だれ?」をお楽しみに!






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