第19話 日曜の朝は、パン?ご飯?それとも?

 カレーを食べ終えた三人は、さっき俺がコンビニまでひとっ走りして買って来たプリンを食べている。色々と昔話をしていたせいか、時計の針は二十二時を指している。それにしても、母さんの入院から死に至るまで、全部知った気でいたが、実は俺が知らないことはあったんだなと恭子さんに感謝だ。


 すると、恭子さんが、いきなりすくっと席を立った。


「あっ、忘れてた!お父さん、今日、出張から帰って来るんだった!!!」


 リュックと薄手のハーフコートを片手に持つと「太一君、今日は本当にお世話になりました。今後も美依のことよろしくね。そして、美依は、太一君にちゃんと話をすること。いいわね」と言って慌ただしくアパートを出て行った。


 残された俺と美依は、唖然としながら恭子さんの出て行ったドアの方を向いている。だが、いつまでもそうしているわけにはいかない。


「美依、遅いし、俺もそろそろ部屋に戻るわ」


「えっ、ちょっと待って。今日、太一とちゃんと話をしたいの」


 強い口調で言われた俺は、テーブルの椅子に座ったまま固まっていた。

 美依の部屋に初めて入って、しかもこんなに遅くまでいるなんて、恥ずかしさやなんというか倫理観みたいなものも含め、俺の心の中はぐちゃぐちゃな感じだ。


「えっと、じゃあ、ちょっとだけ飲もうか。私、少しくらい酔わないと言えそうにないから…」


 美依は、冷蔵庫からビールと、白ワインを取り出す。


「ハイボールとかあれば良かったんだけど…。これでいっ?」


 美依は、いつもの如く、下を向いて俺に尋ねる。俺の顔を見て言えばいいのに…。


「いいよ。じゃあ、俺、ビール貰おうかな」


「うん。私も今日はビールにしよっ。えっと、チーズとかあったっけ…」


 そう言うと、美依はつまみになりそうなものを探してテーブルの上に並べた。


「じゃ、今日は迷惑かけてごめん。お疲れ様〜」


「「お疲れ〜」」


 目を伏し目がちに差し出されたコップに俺も自分のコップをゆっくり当てる。


「う〜ん、美味しい!!」、「上手いっ!」


 正直、そんなにアルコールは強くない方だが、最初の一杯は何故か美味しく思える。美依も一気にコップの半分まで飲んでいる。そういえば、これまでのコンパでの美依を振り返ると、確か美依は俺よりアルコールに強かったんじゃなかったっけ?

 じゃあ、俺が酔っ払わないうちに聞いた方がいいだろう。


「あのさ、じゃあ、そろそろ話を聞かせてくれよ」


「えー、まだ駄目。だって、まだしらふだし。もうちょっと待ってね」


 そういうと美依は、冷蔵庫から缶ビールを追加で三本持って来た。


「はい。太一も、どうぞ」美依は、相変わらずの伏し目がちな視線で俺のコップへ器用にビールを注いでいく。

 俺は、なんだか訳もわからないままビールを飲んでは、美依に注がれ、そして、つまみを口に入れたらまたビールを飲んで、すると美依が空いたコップにビールを注ぐを繰り返す…。


あー、なんだか眠たくなってきた。今日は、朝、早起きしたしな…なんて思っていたら、急に意識がすーっと薄くなっていき、そして、瞼がゆっくりと閉じていった。




『太一、日曜の朝なのに早起きなんだから』

『だって、もったいないじゃんん。折角の休みなんだから有意義に使わないと』

『ふふふ。まあ、いいけど。そういう考え方出来る太一、大好きだし!』


 美依は、はだけたパジャマを直そうともせず俺に抱きついてくる。


『ば、馬鹿っ、ほら、当たってるってば』

『ふふ、なにが?』

『わかってるくせにって、わざとやってるだろ?こら、駄目だってば、止まらなくなるって』

『え、何が止まらなくなるの!?美依に教えて』

『いや、その、、あっ、そういえば今日の朝なんにする?』

『太一、お腹空いたの?今日の朝ごはん何にするって?』


 ちょっと間を置き考えるふりをした美依は、俺の瞳を見つめてこう言った。


『そうね、パン?、ご飯?、それとも私にしちゃう!?』



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第十九話を読んでいただきありがとうございました!

次回、「一夜明けたあとで」をお楽しみに!





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