第5話 新歓コンパの打ち合わせ

「えー、明日の土曜日、今回入部してくれた五名の皆さんの歓迎会と、そしてこのアウトドアサークル『遊ぼ』でいつも頑張ってくれている皆さんとの懇親会を兼ねて、新歓コンパを行います!」


 本日午後三時、喫茶室へ全員集合!というグループラインが来たので、何かあるのかなと思ってみれば、議題はこれだった。

 すげぇ楽しそうなイベントじゃないか!


 そう言えば、咲田桜ちゃんにはこの前折角カラオケに誘って貰ったのに、美衣がむっちゃ怒るから、なんだか変な感じで終わっちゃって、あれから会話してないんだよな。千載一遇のチャンス!ここで、きっちり挽回しておかないと…。

 

 美依は来るのかな?髙橋先輩の隣に座ってまたイチャつくのだろうか…。


 なんとも言えない変な気持ちが渦巻く。さっきまで、桜ちゃんのことを考えてウキウキしていた心は一気に変な感情で溢れていく。


「場所だけど、今回は、大学事務局の計らいにて、旧校舎前の広場で、バーベキューをやります!」


「「「お〜!!!それでこそアウトドアサークル『遊ぼ』だよね!楽しみ〜〜」」」


 部員達も大喜びだ。

 確かに、普通に居酒屋でやるよりも断然、俺ららしい。しかも、炭火で焼いた肉や野菜は本当に美味しいしな…。


 美依をチラッと見る。あいつも凄く笑顔で嬉しそうだ。

 なんだか安心するな〜。あいつが笑っていると…。


「あと、注意事項だけ言っておくぞ。アルコールは二十歳を過ぎている奴だけだ。もしもその約束を守れないのであれば、このサークルを退部して貰ってもいい。わかるな。凄く大事なことだぞ」


 流石に髙橋部長は凄く威厳がある。誠実で頭もいい、そしてなによりリーダーとしての統率力を兼ね揃えている。美依が惚れてしまうのも正直無理はない。俺とは大違いだからな…。あーあ、、。


「分かりました!絶対に厳守します!」


 俺らを代弁するかのように、玉木浩一郎が立ち上がって宣言する。髙橋先輩は、うん。頼むぞという感じで頷いている。


「よし、堅い話はこれだけだ。あとは、肉に野菜に、そして、白石さん特製のシチューがあるからな。みんな楽しみにしておけよ!」


「お〜!!!!!それが一番楽しみだわ〜〜」


 野郎どもが大騒ぎしている。

 やはり、美衣の人気は凄まじいな。


「ん?待てよ?シチュー?」


 あー、そうか、昨日のストアにペアで来たのは、シチューの材料を買いに来ていたのか。経理の役目もしている髙橋先輩が財布を持っているから一緒に来たって事なのかな…。それだったら安心なのかな。やっぱまだ、付き合ってない!?あー、良かった…。って、俺、どうしたんだろう?


 その時だった、俺のシャツが後ろからチョイチョイと引かれ、俺は後ろを振り返る。そこには、顔を真っ赤にした咲田桜ちゃんがいた。


「どうした?桜ちゃん?」


「私、ほら、自宅から大学まで結構時間がかかるから、土曜日、もしも解散が遅くなったら太一君の部屋に行ってもいいかな?」


「っ。はぁ〜〜!?」


「た、太一君、落ち着いて!落ち着いて!!冗談、冗談だから…」


 顔を真っ赤にした俺は大声を出しつつ数歩下がっていた。こんな時に冗談って言われても…。


「太一、元気いいな。よし、今度の新歓コンパの薪と炭の調達はお前に任せた。よろしく」


 なんだか、へんな笑いをしながら俺を指名する髙橋先輩。

 はっ?よく見ると、髙橋先輩の後ろで美依がひそひそと指図している。


「太一、湿った炭とか買って来るんじゃないよ。しっかりしてよ」


 美依の言葉を聞いて、全員が俺の方を見て笑っている。

 く〜〜!!!!くそっ〜!!


「ば、ばかっ!ちゃんと新しいやつ選んで買って来るわ!」

「あっ、そう。でも、それって常識だけどね…」


 白石さん、カッコイイ〜!クール!!!という声が飛び交う中、俺は自尊心メタメタな状態になっていた。


「よし、じゃあ解散。ざっくりと担当決めておいたから後でグループラインに担当表アタッチするから見ておいてくれ。明日、午前十一時に集合だ!みんな宜しく」


「「「「よろしくお願いしま〜〜す」」」」


 はぁ、なんでこんなことに…、と落ち込んでいると、スマホから「ピローン」という音が聞こえた。あっ、ラインだ。


【太一、ごめんね。だって、太一、桜ちゃんと凄く仲よさそうにしているから、ちょっとムカついたの。でも、私が悪かった。みんなの前で…。ごめんなさい】


 えっ、あの距離で俺と桜ちゃんが話していたのを見ていたというの?美依、、それって、お前、絶対に俺を監視しているって事なんじゃないの?

 でも、不思議だ。一向に嫌な気持ちにならない。逆にずっと見ていて欲しいくらいだ。


【いいよ。もっと俺のこと見ていて欲しい。よろしく】


 今ごろ、どんな顔をしてこのラインを見ているだろうか?

「く〜〜!、太一のくせに〜〜!」なんっていって腹を立てているだろうか?それとも、悶絶しながら、座り込んでいるのだろうか?どっちだろう?




「美依、どうしたの?お腹でも痛いの?」


「おい、どうした?」と髙橋先輩が駆け寄る。


「いや、私達と歩いていたら、この子、急に…」


『見たいけど、太一の顔見たいけど、見れないんだもん!!!!』


 そう呟くと皆がいるのを忘れて泣きじゃくる美依だった。


————————————


第五話を読んでいただきありがとうございました!

次回、「子猫」をお楽しみに!



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