第3話 親切すぎる男

 俺が部屋に入ると、男のノートパソコンはトップが画面のまま。普通だったらFXの画面を出したままにしておくと思うのだが・・・。もしかして、だまされたかもしれないと俺は思ったが、深夜でナチュラルハイにないっているから、違法ドラッグを打たれるとか、殺される以外ならいいか・・・と思ってしまった。


「シャワー浴びてもいいですよ」

「いいえ・・・もう、疲れてるんで」やっぱりゲイの人か・・・。眼鏡をかけていて、ガタイがいい。Tシャツにショートパンツ。うっすら髭が生えている。男に興味がないわけではないけど、できれば断りたかった。


「どうぞ」

 男はベッドの方を指した。その時、あ、こいつ日本人じゃないかもと、俺は思った。

「すいません」

 俺はスーツにカバンを抱えたまま横になった。その人とは目を合わせないようにした。もし、無理やりやったら、強制性交で警察に駆け込んでやる。クレジット払いしてるなら、犯人を特定できるだろう。


 俺は取り敢えず寝た。


 何度も変な夢を見た。男が俺に近づいてきて、俺に跨ってくるところや、服の上から腰を振っているというものだった。それが妙にリアルだった。


 何時間くらい経ったろうか。目を開けてないのに少し外が明るくなって来た気がしていた。急に臀部に痛みを感じた。いきなり注射を打たれたみたいだ。俺は飛び起きた。

「何してんだよ!」

 俺は相手に飛び掛かろうとしたが、部屋には他にも何人か男がいて、俺はベッドに押し倒されてしまった。ゲイ数人でノンケを回す・・・。


 同じような被害に遭った男性がHIVに感染してしまったという話を思い出した。カバンにコンドームが入っている。和姦になってしまうかもしれないけど、それで勘弁してもらおうと思った。

「コンドーム使ってください」

 俺は懇願した。すると、さっきの男は笑っているだけで何も答えなかった。次第に記憶が遠くなっていった。バカだったなぁ・・・。神様どうかHIVに感染しませんように。それだけは何とかお願いします。


 ***


 俺は目が覚めた。口に猿轡を噛まされて喋れなかった。全身がだるい。年配の看護士がやって来た。自分の母親くらいの年だ。

「かわいそう」と言いたげだった。

 俺の髪をしばらく撫でていた。俺は患者着のような服を着ていたから、彼女はそれを脱がせると暖かいタオルで体を拭いてくれた。


 助けて、、、俺は叫ぼうとしたが、うまく喋れなかった。


 ***


 気が付いたら俺は病院にいた。うつらうつらしていたけど、話し声が聞こえてきた。

「年齢は50です。健康な日本人です。まだ生きてるんで3億で。心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、小腸、眼球、皮膚、色々取れますよ。」

「わかった。現金で渡す。銀行に連絡するからちょっとまってくれ」

「早くお願いしますよ。この人のことも警察が探してるんですから」

「ああ・・・テレビに出てたよ。あのホテル。あんな場所にあって無人なのに防犯カメラもセキュリティもないって。ずいぶん非難されてるけど場所が場所だからね・・・客層もそれなりなのに。東京から来た人は知らないからね」

 

 俺はまた眠りについた。もう目が覚めませんように。神様に祈った。


 *本作品はフィクションです。

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無人ホテル 連喜 @toushikibu

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