第26話

元カノが自殺未遂してから3週間後、

私達は少し距離をおく事にした。

大好きだし離れたくはなかったが

今は一緒にいるべきだとは思えなかった。

もし、自分が部屋にいない時に彼女が

ドアを叩いていたら‥

もし、自殺未遂を知らなかったら‥

状況は違っていたはずだ。

私は、様子のおかしい有ちゃんに変な勘ぐりをして攻め立てていたかもしれない。

優しい有ちゃんは、事の顛末を黙っていたかもしれない。

そう考えると、やはり事実を知っていた方が

良かったのだ。

そうでなければ、有ちゃんは更に追い込まれ、メンタルがやられてしまっていたかもしれない。

距離をおくのと、別れるのは違う。

私はそう思っている。

本当は、事件の事を何も知らない人となら

有ちゃんも楽しくいられるのかもしれない。

お互い相手の事を大切に思っているし

愛しく思っている。

だからこそ、今は暫く距離をおく必要がある。

これから先の事は分からないが

また元の状態に戻れる事を私は心から望んでいた。

お互いの近況はLINEで報告していたが

会わなくなって1ヶ月半。

私は物凄く逢いたい気持ちを我慢していた。

有ちゃんから逢いたいと連絡が来るまで

待つつもりだったから。

それから半月後、彼から電話が来た。

「今度の日曜日、逢おう」

家の近所まで迎えに来てくれた。

内心、何を言われるのか不安で

前の晩はほとんど寝られなかった。

久しぶりに見た顔は、昔のように優しく

微笑んでいた。

「俺ね、引越したんだ」

「やっぱり恵理ちゃんと一緒にいたいから」

「でもあの家だと‥‥」

「もしまだ気持ちが残ってるなら、

 やり直したいんだけど、ダメ?」

ダメな訳ないじゃない。

その言葉をどれ程待っていたか。

返事をする前に、涙が頬を伝っていた。






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だって、好きなんだもん 藤川めぐみ @PIEPOO

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