個性が、対人関係の障害になるときがある。
過去の経験が、人を臆病にする。
性格的なもので、それ自体、矯正されるものでも非難されるものでもないけれども、あきらかにその性格のせいで対人関係に困難を抱えていたりもする。
作者の視点は公正で、物語の登場人物たちを必要以上に弁護しようとしていないし、もちろん、登場人物と軋轢のある人々を悪者にもしていない。
安易な解決策などもちろん提示されていない。かといって諦観漂うラストではない。
微かな共感をたよりに、歩み寄ること。
理解したと思う日もあればさっぱり分からなくなる「他人」……そのあつまりである「社会」と折り合いをつけていくには、それしか方法はない。
ある意味、「しんどい」ラストながら、救いを感じるのは、作者のまなざしが優しいからだろうと思う。