第2話 龍神姫
実は僕と始は違うクラスになったことが一度もない。
といっても小学校の頃は人数が少なく1クラスしかなかった。
つまり、小学校6年間、中学校3年間、高校2年間っずっと一緒なのである。
席の位置は今まではバラバラだが、今年は隣である。
この学校は席替えがないから今年1年はお隣さんだ。
扉を開け、教室に入り席に座る。
学校のチャイムが鳴る。
「今日もギリギリだな」
「いつも通りだから慣れてるけどね」
「バスがもう少し早く来てくれるといいのにな」
「だねえ」
僕と始が話していると扉が開く。
そして先生が入ってきた。
「お前ら席に着け」
といいながら教壇の前に立つ。
先生の体系は小中学生と間違えてしまうくらいの小柄である。
名前は小岩井ツグミ。
「ホームルームを始める、早速だが転校生が来てる」
「「おおおおおおおお」」
転校生と聞いて、クラス中がざわつく。
「小岩井先生、男ですか!?女ですか!?」
「自分の目で確かめろ」
「入ってこい」
その言葉に応じて、転校生が入ってくる。
その容姿を見た瞬間クラスは大盛り上がりになった。
「「うおおおおおおおおお!!!」」
「「かわいいいいいい!!!」」
(あれ、あの子)
僕もその顔に見とれてしまう。
「龍神姫です、よろしくお願いしますわ」
圧倒的に美しく、それに加えてスレンダーでありながら出てるところは出ている
その容姿に僕は。
「可愛いな」
無意識にその言葉を発する。
「ねえ」
「ん?て、は、始さん?」
始がほっぺたを膨らませながらこちらを睨んでる。
「は、始さんどうなさいましたか・・・?」
「龍神さんのこと見すぎ!」
「すんませんしたあああ」
「お前ら静かにしろ」
僕たちの会話は騒いでるみんなの声にかき消されていた。
助かった・・・
「龍神は、士道の前の席に座れ」
「ええいいなぁ士道」
「士道・・・まさか」
龍神さんが僕の前に歩いてくる。
「士道、灰さんですか?」
「え?あ、はい、士道灰ですが」
「そ、そんな奇跡・・・奇跡ですわ」
なんで僕のことを知ってるんだ?
「あのぉ、どこかでお会いしましたか?」
「え?ああそうですわね、あの時意識がなかったから・・・」
「お前ら話すのはホームルームが終わってからにしろ」
「はい先生」
龍神さんは僕の前の席にそっと座る。
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「以上でホームルームを終わる、この後始業式だから遅れるなよ」
「灰さ」
「龍神さん!」
と話しかける前にクラスのみんなが話をさえぎる。
「ねぇねぇ龍神さんってなんでそんなに可愛いの!?」
「俺、崇嶺アオ!よろしく!」
アオまで・・・
こいつは崇嶺アオ、記憶をなくす前の中学の頃からの友達、らしい。
まぁいっか。
「始、始業式行こ」
「龍神さん、ちょっと来て」
と始が龍神さんの手を引いて廊下に走っていく。
「始?」
「えぇ、何?始ちゃんたちどっか行っちゃった」
「始ちゃんだけずるーい」
「学校一の美女と謎の美少女転校生が二人、何も起きないはずもなく」
「まぁまぁ、始の友達かもしれないし」
と、氷雨が皆をなだめる。
-----
屋上のドアの前に龍神さんを連れてきた。
理由はもちろん話があるからだ。
「あなたは、灰さんの病室にいた・・・」
「そう、灰の幼馴染の一河始よ」
「そうでしたね、それでどうかなさいましたか?」
私は今考えていることを話す。
「単刀直入に言うと、灰に事故のことを話さないでほしい」
「何故ですの?彼に御礼をいえてませんのに」
「灰は事故に遭うまでの記憶をなくしてるの」
「そ、そんな、それは本当ですの?」
「本当よ、だから事故の件を灰に話さないでほしい」
「・・・思い出さないため、ですか?」
「そう、思い出して悪化させたくないの」
龍神さんは少し考え。
「わかりましたわ、あの事故で私たちはあってないことにしますわ」
「ありがとう、じゃあ教室に」
そういって私は階段を降りようとしたそのとき後ろから。
「始さん」
龍神さんに呼び止められた。
「な、なに?」
「私とお友達になりません?」
「え」
私は驚き、その単語しかでなかった。
「一応聞くけどなんで?」
「お優しいかただと判断したからですわ」
優しい?結構冷たく言ったつもりだったんだけど・・・
「どこが優しいと思ったの?」
「本来なら、事故の被害者の一人である私と関わるなと言っていいはずなのにそれを言わないあたり優しいと思いましたの」
「そ、それは、私が言う権利ないし」
「そういうところも優しい点ですよ」
どうしよう・・・
でも彼女も被害者なのだから・・・
私は意を決し発言する。
「わかった、友達になりましょう」
「まぁ、本当ですの?ありがたいですわ」
「その代わり、さっき言った通り、灰に事故のことは話さない、いいね?」
「わかりましたわ、私約束は守りますの」
「あとこれからは私のことは姫とお呼びください」
「わかったわ、姫さん」
こうして、私たちは友達となった。
「あ、一つ聞いていい?」
「何でしょうか?」
「姫さんって姉妹はいるの?」
「?いませんよ?」
「そうなんだ、私の間違いか」
「???」
と、姫さんは困惑していた。
そして私たちは話しながら教室まで歩いて戻った。
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その頃の教室
「あの二人どこ行ったんだろ」
「さぁな、俺が聞きたいくらいだ」
「そういえば、士道君龍神さんとなんか話してたけど、知り合いなの?」
「え?あ、いや、記憶なくす前に会ったことあるかもだけどよく覚えてないんだよね」
「ちぇ、情報なしかよ」
「知り合いだったら情報聞いてお近好きになれたかもしれないのに」
「まぁまぁ、灰だって好きで記憶なくしたわけじゃないし」
そうだよ、僕だって好きで記憶を無くしてないんだ。
僕は悪くない。
うん、僕は悪くない。
「僕、探しに行くよ」
「おっ、それいいな」
「そうだよ、みんなで探しに行こうよ!龍神さんと始ちゃんを!」
団結力すごいな・・・
僕も記憶を無くす前はこうだったのか・・・な
今の僕は始たちがいないと教室の隅で一人本を読んでるような奴だ。
僕が一人の時、僕はここにいていいのか、ここにいないほうがいいんじゃないか、そう思う時がある。
ていうか、みんなにいったらいけないことがある。
それは・・・
僕は始とアオと氷雨以外のの名前を憶えていないのだ。
本当に人の名前を憶えるの苦手になってるんだよな。
そう物思いにふけっていると、始と龍神さんが帰ってきた。
「お、帰ってきた」
「ほんとだ!始ちゃん遅いよーもうすぐ始業式始まるじゃん」
「ごめーん、どうしても話さないといけないことがあってさー」
「何々?士道君をとらないでーって言ってたりしたの?」
ニヤニヤしながら始に問いかける。
始は顔を赤くしながら。
「ち、違うよ!」
ん?
何だ?今胸がモヤモヤしたような。
「そうですわ、私たちは友達になろうと話していただけですわ」
「えぇ始ちゃんだけずるーい」
「俺たちも龍神さんと仲良くしたい!!」
「えぇえぇ皆さんよろしくお願いしますわ」
「よろしくー!!」
クラスの大半が龍神さんのところに集まっている。
可愛さだけでこんなに人をあつめることができるのは素直にすごい。
それかみんなを引き寄せるオーラかカリスマ性があるか。
少なくとも僕よりかは優れているな。
「お前ら、いつまで話しているつもりだ?」
その声にみんなが振り向くと小岩井先生が引きつりながら笑い、みんなが時計をみると、始業式開始まで3分しかなかった。
「やべ、みんな走っていくぞ!」
「廊下は走るな!」
と、先生が怒って言う。
走っていく人と、僕らのように小走りでいくものの2つに分かれていた。
色彩銀河の夜 柊ラミト @Hiragimakoto2004
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