第10話 私は平凡子

「ひーちゃん、おはよう」

「あ、ぼんちゃん、おは――」


 陽菜は凡子を見るなり目を丸くした。


「髪型変えた? どうしたの? え、すごい似合ってるね! かわいい!」

「ふふ、ありがとう。ちょっと、ね」


 凡子はちらっ、と隣の席を見た。伊圭男は美しい姿勢で静かに本を読んでいた。


 陽菜は、訳が分からない、という風に凡子と伊圭男を交互に見た。


「え、なになに。なになに~気になるじゃ~ん」


 凡子はクスっ、と笑って言った。


「何でもないよ。あ、京子ちゃん」


 凡子は通りかかった京子に声を掛けた。


「どうしたの? 平さん」

「あのさ、文化祭についてなんだけど……やっぱり私がやってもいいかな、リーダー」


 京子の顔がパァ、と明るくなった。


「もちろんだよ!」

「あと、考えたんだけど、押し花の栞とか、どうかな……?」

「え! すごく素敵だと思う!」


 京子は凡子の手を取った。


「それじゃあ、よろしくね。文化祭、絶対に成功させようね!」

「うん!」


 凡子は満面の笑みで頷いた。


 そして、伊圭男は隣の席で微笑むのであった。

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綺麗な青薔薇には棘がある KeeA @KeeA

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