第62話 いちばん子どもっぽかった幸織が
「まあ、
それを言うなら「自負」じゃないかと思ったけれど、黙っている。それにべつに「自覚」でもおかしくはない。
「
「覚えてるよ、そのときのこと」
「ありがとう」
と言って首をすくめた。
「あのホテルができたあと、うちのおじいちゃんはずっと
還郷家の噂って、何だったかな? 幸織は続ける。
「でも、
ああ、そうか。結生子が村にときどき来るというのが、その還郷家で噂になっていたのだ。
でも、瑠姫にはその理由はわからない。だから、きく。
「なんで?」
幸織は答えた。
「あの博物館が、いまはその明珠
しばらく間を置いてから、
「大学があれ買い取ったって言ったでしょ? それがその明珠女だから」
という。幸織は続ける。
「わたしたちが生まれたころに、
その話は結生子にきいた。
「そこの遺跡の調査をやろうとしてるのがそこの大学で。まあ予算が出ないらしくてずっとやってないけど。そんなので、その大学、このへんの村とはつながり深いんだよね」
幸織はくすんと笑う。
「だからさ。そういう話だと、結生子ってじつは自分で思ってる以上に期待されてるんじゃないかな。帰郷家の立場で、だけど、このへんの村で伝わってることを、家できかされて育った人でしょ? それ、その大学のほうでも
そして、こんどは、くすん、以上に、きゃははっと声を立てて笑った。
こういうのは変わっていない。
いや、中学生のころは、そういう、くすん、だったり、きゃはは、だったり、そういう笑い声を心の赴くままに出していた。
いまは違うのだろう。そういう自然な反応を、相手とその場の状況に合わせて表に出している。
それで、その
三人のなかで、いちばん子どもっぽかった幸織が、だ。
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